月別アーカイブ: 2018年7月

紗と絽 専攻科 小郷晴子

小田芽羅先生による「竹糸で織る紗のストールと絽のランチョンマット」4日間のワークショップに参加しました。
口頭だけでは、どの様に織られているのか、理解する事が難しい仕組みでした。
ワークショップでは、機掛けから織りまで丁寧に教えて頂き、基本的な紗と絽の織りを理解する事が出来ました。
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出来上がった紗のストール

紗と絽を織る際にポイントとなるのが、綜絖と筬の間に仕掛ける、経糸を捩(もじ)る仕組みの半綜絖です。
半綜絖用のふるえは、経糸総本数の半本数、糸を輪っか状にはた結びし作りました。結ぶ際に、輪の大きさを揃えなければ、開口の揃い方にも影響するのですが、はた結びが苦手なので難しく、器用さが必要だと思いました。
今回、ふるえ用に使用したのは、綿100%のカタン糸で丈夫な糸だそうです。

紗のストールに使用した竹糸は、シルクの様なコットンの様な・・・、不思議な肌触りです。
竹の繊維を撚った単糸を6〜8本撚り合わせてある竹糸を使用したので、カタン糸に負けない強度があり、切れる心配が無く、整経も織りも進めやすい糸でした。

半綜絖は、開口があまり良くない為、開口のより良い天秤機を使用しました。けれども、半綜絖の開口は良くは無いので、注意してシャトルを通さなければならず、織り上がってから見直してみると、経糸の浮いてしまった箇所が有り残念に思います。捩り部分には隙間が出来、進められるスピードが速いので、気持ち良く織ることができます。
隙間が多く、紗や絽にしか無い、独特な風合いと、軽やかな仕上がりになりました。
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左:紗 右:絽

今回のワークショップは、5人の織り経験のある方々と一緒に教えて頂きました。
織りの基本は同じだけれど、少しずつ違った方法を、お互いに見聞きしました。
ワークショップに参加する度に、より良い方法を見出す事が出来、学べる事が多いです。

織実習「綴織」 本科 浅井広美

綴織(つづれおり)は、つよく張った経糸に、緯糸を(筬で打ち込む代りに)爪で搔きよせ、下絵を写すように模様を織り上げる織り技法です。今回の綴織の授業では、2枚の見本織りをした後、花をテーマに45x45cmのタペストリーを織る課題が出されました。

まず、花の下絵を描くにあたり、植物園まで足を運び、多くの花の中から一番心動かされたバラの原種を題材にすることにしました。
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その後、原画を描き、それをどのように織っていくか決める上で、綴織作家の作品集などを参考に、今まで習った技法をどのように使えば絵具で塗った質感が出せるか、どうすれば奥行きのある絵に見せることができるのか考えていきました。
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織りに入る前の最後の作業は、試し織りをすることです。杢糸(2本の違う色の糸を絡ませて違う色を作る)が織物になった時にどんな色になるか、候補の色を並べて見比べ、最終的に使用する糸を決めていきます。
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織り始めてみると、思ったように形にするのが難しいところや、背景と花の色が似ていて同化してしまうなどの問題に突き当たり、何度もやり直しながら試行錯誤を繰り返しました。
特に花びらは、徐々に色を変えていく部分や、立体的に見せるために描いた影がうまく表現できず、悩みながら多くの時間を費やしました。
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それでも、下絵がだんだんと織物になってき、手が慣れてくる頃には、形作るのが大変だった葉の部分も、楽しい作業に変わっていきました。
最後に、完成後の講評会では、花よりも葉の方がイキイキして見えると先生がおっしゃっていたのを聞いて、織っている時々の心境は作品に表れてしまうものだと、この課題を通して実感しました。

今回の課題は、織りが順調に進むところ、織っても、織っても終わりがないように思えるところの繰り返しで、一枚完成させるまでの工程は、まるで起伏が激しい道のりを旅しているようでした。完成した作品を見るたびに、構図や描き方(織り方)、色の選択など、改善点ばかりに目がいってしまいますが、同時に、花びらや葉っぱの1枚1枚を見れば、その時自分がどんな気分で織っていたかが蘇り、一つ一つの工程が旅の記録のように、この1枚に刻まれているようです。
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