月別アーカイブ: 2013年2月

染司よしおか工房見学 創作科 針谷ふみ恵


吉岡幸雄さんの工房へ見学に行きました。

この日は東大寺二月堂の「お水取り」で観音様に捧げるための椿の和紙を
紅花の「紅」で染める工程を見せて頂きました。

紅花には赤い色素と黄色の色素があり、まずは黄色の色素を洗い流していきます。
地下100mから汲み上げた地下水(お酒作りにも使われるとてもきれいな水だそうです)
に一晩浸け置いた紅花を真水で洗い、水を絞り出します。
洗い、絞りを何度も繰り返して水が黄色くなくなるまで続けます。

今年で2年目の河岸さん。お母様は川島テキスタイルスクールの修了生だそうです!

黄色の色素を洗い流したら、ワラの灰汁で紅花を揉んでいきます。
(紅花の赤はアルカリ性の溶液に溶け出す性質を持っているそうです。)
30分1セットを何回も繰り返すうちにどんどん赤い色素が出てきます。

実際にさせて頂きました

紅花を揉み終わったら金網で濾します。
濾した赤い液体から更に濃い色素を取り出すためにゾク(麻布)を液に入れ
20分ほどかきまぜ、布の中までしっかりと染液をしみこませます。


その布を真水で洗い、絞り、少量の灰汁に浸けると
ピンクだった布から赤い色素が抜けて紫がかった色に!
それを何度も繰り返して濃い赤の染液をつくります。


赤を更に鮮やかに発色させるために烏梅(梅の実を薫製にしたものを水に浸けたもの。
クエン酸を多く含みます。)を加えます。
烏梅を加えることで化学反応をおこして、沈殿物ができます。
それを何日か置いておき、布で濾すと、そこにのこっているのが「紅」です。

沈殿物が見えますか?

たくさんの工程を経てできあがった「紅」ですが、
1日分(2キロ)の紅花で染められる量はたったの和紙2枚分というのだから驚きました。

そんな紅を用いて、ひと刷毛ひと刷毛丁寧に染めては乾かし、
乾かしては染めてを繰り返した和紙の色は、鮮やかで本当に美しい赤色でした。

染師・福田伝士さん


吉岡さんは1200年前の職人たちとそっくり同じ方法での染色に
こだわっていらっしゃいました。
過去の文献などをもとに、失敗もしながら、
その失敗をきちんと糧にして過去の伝統色を甦らせたことを思うと、
手間や時間をかけることの大切さを改めて実感させられました。
私自身、現在制作中のきものを植物染料で染めているので、
丁寧にこだわってこれからの作業を進めていきたいです。