日別アーカイブ: 2013/07/05

織実習「綴織(つづれおり)」 本科 水野友美

○自由作品

初回の授業で綴(つづれ)の基礎織りサンプルを先生に見せられた時は、
喜びと不安が同時に生じました。
これをこのスケジュール(2週間程)で織ります、と淡々と説明する先生。
こっちは綴織という言葉を聞いたのも初めてだ。
これを私が織れるのか、でも織れたらすごい。
いや、その前に心が折れるかもしれない、と悶々としながら
糸の色を決めていたのを覚えています。


そんな感情がやる気に変わったのは実際に織り始めてからでした。
綴織は経糸にたこ糸を使用し、経糸が見えないように緯糸で織り埋めていきます。
爪と櫛を使って織っていく方法は織物初心者の自分にとっては随分衝撃的でした。
初めの頃、櫛で緯糸を詰める時の力の入れ方が分からず、
櫛が手からすっぽ抜けて口にぶつかり流血したのもいい思い出です。

サンプルを2枚織って綴の基本技法を学んだら、今度は自由作品を織ります。
ちょうどサンプルの織り終わりに近づく頃、川島織物の織物文化館の見学に行きました。
そこで絵を織ることのできる織物・綴織の神髄を見たことで、
自分の自由作品も絵を忠実に再現することを目標にしようと決めました。

○原画
○織下絵

自由作品では普段主役になることは少ないカスミソウを主役にしたことで、
織り始める前から繊細な花と線との格闘となりました(自業自得なのですが…)。
絵筆のタッチや花弁の細かな部分も忠実に表現するために、
下絵は細かすぎるくらい細部までトレースしました。
また、その細い茎や絵筆のタッチをボカシで表現する為に、
先生と相談して下絵は原画を横向きにして織る事にしました。
それが功を奏したのか、実際織ると何度もその下絵に挫折しそうになりましたが、
目標としていた絵筆の表現や、花弁の繊細さなどを無事再現できたと思います。

今回の作品を振り返ってみると、一番の胆は試織であるということです。
頭の中の織りのイメージを様々な糸を組み合わせて
具現化させていく作業は最も心が躍りました。
無限に近い杢糸の組み合わせから、試織したなかで決定を重ねていく。
また、現実的な作業時間との兼ね合いもここで見えてくる。
これはこれから先、何をするにしてもとても大切なことであると実感しています。