日別アーカイブ: 2018/07/04

織実習「綴織」 本科 浅井広美

綴織(つづれおり)は、つよく張った経糸に、緯糸を(筬で打ち込む代りに)爪で搔きよせ、下絵を写すように模様を織り上げる織り技法です。今回の綴織の授業では、2枚の見本織りをした後、花をテーマに45x45cmのタペストリーを織る課題が出されました。

まず、花の下絵を描くにあたり、植物園まで足を運び、多くの花の中から一番心動かされたバラの原種を題材にすることにしました。
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その後、原画を描き、それをどのように織っていくか決める上で、綴織作家の作品集などを参考に、今まで習った技法をどのように使えば絵具で塗った質感が出せるか、どうすれば奥行きのある絵に見せることができるのか考えていきました。
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織りに入る前の最後の作業は、試し織りをすることです。杢糸(2本の違う色の糸を絡ませて違う色を作る)が織物になった時にどんな色になるか、候補の色を並べて見比べ、最終的に使用する糸を決めていきます。
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織り始めてみると、思ったように形にするのが難しいところや、背景と花の色が似ていて同化してしまうなどの問題に突き当たり、何度もやり直しながら試行錯誤を繰り返しました。
特に花びらは、徐々に色を変えていく部分や、立体的に見せるために描いた影がうまく表現できず、悩みながら多くの時間を費やしました。
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それでも、下絵がだんだんと織物になってき、手が慣れてくる頃には、形作るのが大変だった葉の部分も、楽しい作業に変わっていきました。
最後に、完成後の講評会では、花よりも葉の方がイキイキして見えると先生がおっしゃっていたのを聞いて、織っている時々の心境は作品に表れてしまうものだと、この課題を通して実感しました。

今回の課題は、織りが順調に進むところ、織っても、織っても終わりがないように思えるところの繰り返しで、一枚完成させるまでの工程は、まるで起伏が激しい道のりを旅しているようでした。完成した作品を見るたびに、構図や描き方(織り方)、色の選択など、改善点ばかりに目がいってしまいますが、同時に、花びらや葉っぱの1枚1枚を見れば、その時自分がどんな気分で織っていたかが蘇り、一つ一つの工程が旅の記録のように、この1枚に刻まれているようです。
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