日別アーカイブ: 2020/12/01

スクールをつづる:国際編5 修了生インタビュー「タイの藍工房からKTS、 土地と暮らしに合わせた、ものづくり」Zazima Asavesnaさん

川島テキスタイルスクール(KTS)を紹介するシリーズの国際編。前回に引き続き第5回も、織りとの多彩な関わりを持つ世界中にいる修了生に、KTSに学びに来た経緯や、スクールで影響を受けたこと、学んだスキルの生かし方、自身が考える織りとは?についてインタビューした内容をお届けします。

「以前使用していた、家族の藍染工房。サコンナコーンにある。そこで、私は初めて藍染めを学びました。インド藍(Indigofera tinctoria タイワンコマツナギ)はこの地域で育てられたもので、ここで植えられ、収穫され、ペースト状にされました。土製の小さな壺に藍が入っており、通常、一つの壺につき、一日に1、2回、小さな糸の綛を染めることができます。」

Zazima Asavesnaさん(タイ・ドイツ)
テキスタイルアーティスト・天然染色家・衣料のスモールビジネスのデザイナー/製作者
タイ在住
2013年春、ビギナーズ、絣基礎・絣応用I受講

−−KTSに学びに来た経緯を教えてください。

私は小動物の獣医師として働いていましたが、結婚を機に夫の故郷のサコンナコーン(タイ東北部)に転居。そこは夫の家族が20年以上、天然の藍を建てて藍染めを行っている場所でした。私はそこで藍や他の草木の天然染色を学ぶ機会があり、その経験が後に、織りへの興味につながりました。とても親切な地元の女性職人の方々が、自身の知識を喜んで私に分かち合ってくれたのが、初めての機織り経験でした。理論は全くなく、ただ見よう見真似で取り組みました。

その経験から多くの質問が浮かび、織りの可能性を知りたいと思うようになって、織りを学べる場所を探し始めました。この地球上のどこかに、そんな学校が本当に実在するのかも知らずに。インターネットでKTSを偶然見つけ、そこは私が探し求めていた場所だとすぐにわかりました。スクールは、私がこれまで訪れた中でお気に入りの街の一つに所在していました。加えて自然に近く、市街地からも離れておらず、日本の文化や現代アート、生活様式が見られる場所。さらに織りの原理や、日本の伝統的な織りを学べること、そして異なる背景や織りの伝統がある人たちと出会える留学生の小さなコミュニティに入るのがとても楽しみでした。

−−KTSで学んだことで、どのような影響を受けましたか?

様々な年齢のテキスタイルを愛する人たちに囲まれて過ごしたことで、良い刺激を受けました。私たちはエネルギーを交換し、過去や経歴に関係なく通じ合い、織りの世界に迎え入れられているように感じました。留学生コースのクラスメイトだけでなく、長期の専門コースに通う優れた日本の学生の皆さんとも友達になり、その方々が隣の教室や上階で取り組んでいる素晴らしい制作プロジェクトをひそかに観察していました。特に2階アトリエでのタペストリー制作が素晴らしいと感じました。下絵をもとにして織られたタペストリーを実際に目にしたのは、私にとって初めてのことでした。

独学のアーティストである私に、KTSは織ること、人生において新たな知識を求めて学び始めることの自信をつけてくれました。(2013年)春コース修了後、私は本格的に織りたいと思い、織りのプロジェクトを行って生計を立てられるように、時間を費やして将来計画を立てる決心しました。

個展 “Door” (2018)
「2018年にチェンマイのRanlao Bookshopで開催された初めての個展。コンセプトは、ソーシャルメディアの時代における感覚の自己探求について。 伝統的な機と、枠機で作られた、6枚の手織りのテキスタイルを展示しました。すべて私の一番好きな天然染料である、藍で染めたものです。 写真の作品では、米糊を使用した型染めの技法を使っています。」

−−その学んだスキルを、その後の仕事や暮らしなどにどう生かしていますか?

私は、綿や麻など地域にある自然素材や、そこで収穫された天然染料をよく使っています。初めは、防染の技術を使ったシンプルな平織りの服を作っていました。平織りはシンプルな織り方である分、織りの技量不足がたやすく表れるため、私にとってはとてもストレスになりました。

私は洋機(ジャッキ式または天秤機、ろくろ式)を持っておらず、持っている知識で大体は適応していきました。KTSで「織ることは誰でもできるが、美しく織ることは誰もができることではない」と素晴らしい先生が教えてくれた考えを念頭に置き、私は自分の機(イサーン〈タイ東北部〉伝統の織機)で、経糸の張りを均等にしたり、織り端をきれいに揃えたり、経糸の乱れをきれいに直したりして、洋機と同じ結果が出ることを目指しました。それは、いつでもできる時にスキル向上に励もうという気づきにもなりました。

私は、自ら織ってテキスタイルに注いだ努力とスキルは、その背景にある想像力や考えと同様に大切なことであると信じています。ここ数年、私は綴れ織りを習いたくて仕方がなかったのですが、その機会がありませんでした。2年前、油絵用の木枠を使って枠機を自分で作り、独学で学び始めました。1年経って、人物像(細部は刺繍を追加)の小さなタペストリーを織るのに楽しみを見い出し、以来ずっと続けています。綴れ織りは、KTSで得たスキルではありませんが、すべてはKTSから始まっているのです。

−−Zazimaさんにとって織りとは?

私自身を知っていく旅のようなものだと思います。機に座って動作を繰り返すことで、身体を使った旅の代わりに内面の旅をしている感覚です。物理的には、身体リズムのバランスを見つけるのを試み、様々な機会において、私の考えや感情、感覚を探求しています。私は時折、間違った方向に進みがちになるものと、格闘している気分になることがあります。どのような結果になろうとも、受け入れなければいけない。

イサーンの機
「この機は地元の大工さんが作った、古い伝統的なものです。 もともとはある高齢の女性のものでしたが、その方が亡くなり別の方の手に渡り、予備の機として使用されていました。使われなくなって私の手元へ。筬、綜絖、綜絖枠、踏み木は、紐と竹の棒で機に取り付けられています。 経糸を直接機に結びつけ、手動で解いて引っ張ることによりテンションをかけます。」

instagram: @zazieandherloom @wildstagram

2014年に英語版ブログに掲載した Zazimaさんの “Student Voice” の記事です。KTS修了展で展示した作品も見ることができます。