織実習「綴織」 本科 宮原麻衣

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学校の玄関に飾られた8枚のタペストリーを見て、この約一ヶ月間の綴織に浸かった日々を思い出し、
感慨深いものがありました。

綴織は経糸の下に織り下絵を置き、その下絵に沿って緯糸を爪や櫛で掻き寄せながら織っていきます。
初めの頃は私自身の不器用さも相まって何度も先生に助けを求めなければ上手く織り進められず、
もどかしい気持ちを感じる日々が多かったです。しかし続けていく中で、緯糸を一越一越入れていくことによって、まるで絵を描いているように下絵がだんだんと布の上へと浮かび上がってくる様子に、
綴織の魅力を感じ、面白さを感じ始めるようになりました。

基本的な技法を一通り学んだ後、最後の課題として「花」をテーマに自らデザインを進め、
各自タペストリーを完成させることとなりました。

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デザイン画

デザインを考える際、夏休み前までの約2週間という期日があったのもあり、
やってみたいと思うデザインと始めて間もない今の自分の技量とを考えながら作成していくのは難しく、
原画完成にも多くの時間を要しました。

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完成作品

原画が完成し織り進めていく過程でもやはり悩み、手が止まってしまうことが多かったです。
しかしその中でも、これまで学んできたことを活かし「ここはこの織り方の方が上手く表現できるかも、、、」等と未熟ながらも自分で考え進められたことは、大変に思う部分もありながらも、今まで以上に出来上がっていく過程を楽しむことができたと思います。
そして、最後に完成したタペストリーを見た時には、達成感とともに少しでも成長できている自分にも気づくことができ、とても嬉しく感じました。

これからも一つ一つ作品を確実に完成させながら成長していけたらと思います。

織実習「布を織る」 本科 鈴木しなの

ゆらり ゆらり 玄関から舞い込んできた風に長い長い布が揺れます。
あまりに美しく、そしてこの布とともに辿ってきたこれまでの時間があまりに濃厚で、
胸がいっぱいになり、目から涙が溢れてきました。
この涙は嬉し涙であり、感動の涙であり、そしてまた、悔し涙でもあるなと思いました。

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基礎織の授業で初めて織を経験し、スピニングの授業で糸紡ぎを学び、当たり前の感覚が覆されるような日々。
そんな中始まった「布を織る」という授業は私にとってさらに得るものの多い貴重な時間となりました。
この授業では、自分の好きな絵画を選び、そこから計5色の色を取り出して縞模様をデザインし、
8メートルの布を織りあげます。そして、織り上げた布の一部を風呂敷に仕立てます。

糸の種類はウールからコットンとシルクへ、機の種類はジャッキ式からろくろ式へ、
隙間がわからないくらい細かい筬や繊細な細い細い糸……基礎織とは違うことばかりで、
次に何が起きるか予測できない毎日に必死でした。

私はジョルジュ・スーラの点描画『グランジェット島の日曜日』という絵画を選びました。
この作品にも描かれているように、日曜日の公園に行くとたくさんの人々が思い思いの時間を過ごしています。
友達と、恋人と、家族と、そして一人ぽっちでも、他愛もない事をお話ししたり、笑ったり、物思いに耽ったり、
そんないつもはそれほど特別に感じないことがなんだか特別になる。
こういうことこそ幸せなんだな、こんなに身近に幸せはあるんだな、と教えてくれる日曜日の公園が私は大好きです。そんな日曜日がずっと続くことを願って今回布を織れたらいいな、そして風呂敷に仕立てると聞いていたので、
その温かな時間で何を包むことができたら素敵だなと考えました。

Georges Seurat nunooru

デザインから始まり、糸の染色、糸繰、整経、粗筬通し、前つけ、経巻き、筬通し、綜絖通し……
1200本の糸を扱いながら行う作業一つ一つが気が遠くなるくらいに繊細で、時間がかかりました。
少しでも前の行程にミスがあると進めないので集中力も試されます。
毎日のようにアトリエ開放時間ギリギリまで居残りをして、神経も体力も要する日々を乗り越えられたのは、
どんな時も落ち着いて対応してくださる先生、そして一緒にもの作りに取り組む仲間がいたからだと思います。
声を掛け合ったり、相談しあったり、特に経糸を巻き取る作業は特にチームワークが求められます。
また、織りが始まってからは周りから聞こえる一人一人のシュッ、トントン。シュッ、トントン。
というシャトルが経糸の下を走り、框で打ち込む力強い音が励みになりました。

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ものづくりは一人のようで一人じゃない。刺激しあって、支え合って、お互いが深まり広がってく。
織りをしていると生きることと似ているなと思うことが多々あります。
今回の制作を通してそう強く感じたことがもう一つあります。
それは一つ一つの積み重ねが全て作品につながっているということです。
授業の最後の講評会の際、二階から吊るした布を見たとき、色合いや縞のデザインは自分としては気に入っていたものの、耳(織端)の乱れや、それらを気にしすぎたり、焦ったりした自分の心の乱れが布に現れていると感じました。先生からもそのような講評をいただき、見る人にも伝わってしまっているのだと気付きました。

自分だけではこれも「自分の味かな」なんて言ってごまかしてしまっていたかもしれないことを、
人に見てもらうことでしっかり受け止めることができたり、
新たな課題や発見があったりして自分の視点から遠ざけて見ることはとても大切なことだ学びました。
少しでも「ま、いっか」とごまかしたらそれ相応のものが仕上がる。
生きることも一つ一つの感情や経験が自分の人生に必ずつながっていく。
織りにしても、普段の生活にしても、一つ一つをゆっくりでもいいから丁寧に大切に積み重ねていけたらいいなと思いました。

私が一番悔しかったのは今回の制作にあたって伝えたかったことが、
自分の技術の未熟さと心の乱れで思い切り伝えることができなかったということです。
自分が表現したいこと、伝えたいことをちゃんと伝えるために基礎を固める、
土台を固めるということは欠かせないことなんだと痛感しました。
人間初めからうまくはいきませんから、今回のことをバネに今後の授業にも一生懸命取り組んでいきたいと思います。

こうして今、たくさん失敗して美しいものからたくさん刺激を受けることができている。
そんな川島テキスタイルスクールでの学びが私にとって本当にかけがえのないものだなと改めて感じました。
また、今回の授業を経て、当たり前に身につけたり、使ったりしてきた布への見方が大きく変わりました。
機から織り上げた布を外した時に感じた布の重みとあの時の感動は一生忘れられません。
布を織るという経験をし、その過程を知っているということは、
これからの人生をより一層豊かにすると確信しています。
知っていると知らないでいるとでは大違いだなと最近よく思うのです。

美山見学レポート 本科 岡田弥生

「人間だから失敗があります。でも、それが愛らしいし、面白い。」
藍染作家の新道弘之さんが、一枚の着物の前でおっしゃった言葉が、とても印象的に私の心に残りました。
4月に入学してからスクールでは、毎日が失敗の連続です。そんな私にとって、新道さんのこの言葉は、
自分を励ましてくれるような、そして、決して完璧ではない人間が作るものの暖かさや豊かさについて考えさせられる一言でした。

心配していた雨も、バスを降りる頃には太陽が顔を出すほどになり、
スクールを出発してから2時間ほどで私たちは京都府南丹市美山町に到着しました。
山々に囲まれた美しい村に、茅葺屋根がならぶ風景は、いつも私が生活している風景とはまるで違い、
何度も深呼吸をしたくなるような世界が広がっていました。

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ブルーアルケミーというDVDの中で紹介されていた新道さんの工房と美術館を訪ねるべく、
ゆっくりと村の中を歩いて行きました。
工房までの道のりは、昔ながらの郵便ポストや村ののどかな景色が続き、
緩やかな坂道を登ると、木でできたささやかな看板が見えてきました。
「ちいさな藍美術館」の中へお邪魔すると、早速、藍花の咲く甕が一つ目に入り、
DVDの中で見た藍の工房へ来たのだという実感が湧いてきました。

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美術館では、入ってすぐに展示されてあった素朴な丹波布が目に留まりました。
新道さんのお話によると、かつての農家の女性が家で織っていた着物だそうです。
民藝運動の提唱者でもある柳宗悦が北野天満宮の市でこういった着物を発見し、
のちに民藝として知られるようになったとのことでした。
富裕層が着るような豪華絢爛な着物ではなく、こうした素朴で、無駄がなく、
普通の人々の生活に沿ったものに光が当たり始めたのは、歴史の流れの中でも、興味深い事です。

工房では、新道さんが実際に藍染を見せてくださいました。
布を何度か藍甕に浸けた後、パタパタと空気中で酸化させると、緑がかっていた布が鮮やかな藍色に変わってゆき、
その姿はまさに不思議な魔法のようでした。
和室では、新道さんが世界各国の様々な布地を見せてくださいました。
中でも新道さんがこれまでに染められた布地で、新道さんのお母様がご自身の棺掛けを作られたというお話が最も印象的でした。

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今日では、街を歩けば数え切れないほどの機械で作られた製品が並び、
いわゆる「手仕事」で作られたものを見つけるのは、とても難しくなりました。
そのような時代だからこそ、人が手で作ったものの温かさや面白さ、
愛らしさについて考えながら、これからの制作に挑んでいきたいと思います。
美山で学んだ事は、きっと、今後何度も思い出され、
その度に美しい景色と新道さんの言葉が私の心に浮かんでくることでしょう。

シャワールームが完成しました!

これまで寮には共同浴室を2つ備えていましたが、そのうちの1つをリノベーションして
個別ブース型のシャワールームとなりました。
おしゃれで清潔、居心地のよいシャワールームは、学生に好評です。
もう一方の浴室も脱衣場は既に改装が済んでおります。
寮に滞在される際は、ぜひご利用くださいね!(女性限定です)

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川島テキスタイルスクール展

川島テキスタイルスクール展  5月18日(木)-23日(火)

LIXIL:GINZA 1階 レセプションスペースにて、
着物・タペストリー・ラグ・服地など学生作品数点を展示いたします。

なかには青く美しく澄んだ海に漂う人魚姫をテーマにしたきものや、
草原一面に咲いた花が風に揺れる様を表したラグなど、
季節の訪れを感じさせるテキスタイルもあります。
この機会に多くの方にご覧いただきたいと思っております。
LIXIL銀座2017パネル
会期:2017年5月18日(木)-23日(火) ※会期中無休
会場:LIXIL:GINZA 1階 レセプションスペース
住所:東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル
開館時間:10:00-18:00
入館料:無料

鶴屋吉信にて作品展示 専攻科 萩原千春

京都の老舗和菓子店の鶴屋吉信京都本店の一階店舗から二階茶屋•お休み処へと続く階段の踊り場に制作したタペストリーを展示して頂いています。
二階では職人さんが目の前で生菓子を作ってくれ、お抹茶と一緒に食べることが出来ます。
そんな素敵な空間に飾る為のタペストリーを作らせて頂くことになりとても嬉しく思いました。

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今回の作品のタイトルは「和敬清寂」で茶道にとても深い関わりのあることばです。
「和」…和合・調和・和楽
「敬」…お互いに敬い合う
「清」…清らかと言う意味ですが、目に見えるだけの清らかさだけでなく、
心の中も清らかであるということ。
「寂」…静寂・閑寂
というように一文字一文字に意味があります。

来店されたお客様に、職人さんが一つ一つ丁寧に心を込めて作ったお菓子を
落ち着いて召し上がって頂けるような空間にしたいという思いからこのテーマで制作をしました。

近くに寄られた際には、是非足を運んでみて下さい。
http://www.turuya.co.jp/tenpo/honten_top.html

スウェーデン交換留学レポート2 創作科 渡井あかり

交換留学先のHV Skolaがあるのはストックホルムの中でもユールゴーデンという少し特別な場所で、
河に囲まれた島のようになっていました。
多くの美術館と公園、そして遊園地があり、年中通して賑やかな場所です。
移動手段はトラムと呼ばれる路面電車かバス、電車やフェリーがあります。
どれでも共通して使うことの出来るチャージ式のICカードがあり、
学割で1ヶ月、3ヶ月、1年のチケットを買うことが出来ました。
また、地図で見るよりもストックホルムは小さいようで、徒歩で学校から中心部へ行くことも可能でした。
私はよくフェリーとトラム、バスを利用しました。
特にフェリーは見える景色が好きだったので冬場になってもよく利用しました。

ストックホルム

約3ヶ月にわたる留学中、私はHVが持つアパートに住んでいました。
学校の敷地内にあるアパートは1階が学校、2階がアパートという不思議な造りで一般の方も住んでいました。
洗濯機は共同、部屋は最大3人が滞在出来るシェアルームで、生活に必要なものはひと通り揃っていました。
学校の隣には少し物価が高くはなりますが小さなお店があり、食品や日用品を買うことが出来ました。

アパート

HVにはキッチン付きの食堂があり、昼時になると皆食堂で昼食を摂ります。
主にパスタやスープが多かったように思いますが、時折冷凍の餃子や
インスタントのラーメンを食べている人がいて面白かったです。
スウェーデンでも日本食は話題になっているらしく、
あちらこちらに寿司バーやラーメン屋さん、スーパーで普通に醤油や酢が購入出来ました。
日本食材店もありカレールーも日本メーカーのものを購入することが出来ます。

寿司バー

お互いに違う食文化を持つためか、わたしも皆もそれぞれのお弁当に興味津々でした。
皮をむいた林檎を塩水につけて持って行ったところ、「そのソースはなに!?」と驚かれたりしました。
また、スウェーデンにはFika(フィーカ)と呼ばれるコーヒー休憩があり、
毎日決まった時間にきちんと休憩をとります。
私のクラスは10時と決まっていたので、その時間になると
シナモンケーキやキャンディを持ち寄ってお喋りを楽しんでいました。

そして日本との違いに驚いたことのひとつに、
クラスメイトが快く日本人である私を受け入れてくれたことがあります。
あらかじめ勉強していったとはいえ、私の英語は拙くまたスウェーデン語を話すことも出来ませんでした。
スウェーデンの人は英語が上手いと聞いていましたが、
やはり全員が話せるわけでもなく、片言で話す機会も多くありました。
それでも昼休みに美術館へ誘ってくれたり、放課後にアイスを食べに行ってくれたりと
本当にあたたかく迎え入れてくれました。
はじめての海外であったにも関わらず、3ヶ月の間1度もホームシックにならずに
過ごせたのはクラスメイトと先生方、事務の方々のおかげだったと思います。

11月の最後に私が帰ることを知って、クラスメイトが少し早いクリスマスパーティを
開いてくれたときには本当に感動で言葉が詰まってしまいました。
私が以前ぽろりと零した「スウェーデンの伝統を知りたい」という言葉を覚えていてくれて、
クリスマスに食べるサフランパンやペッパカーカというクッキーを一緒に作ってくれました。
手作りのお菓子を持ち寄って、クリスマスに飲む甘いホットワインを飲みながら過ごした1日は
忘れられない大切な思い出です。

サフランパン