川島テキスタイルスクール展

川島テキスタイルスクール展  5月18日(木)-23日(火)

LIXIL:GINZA 1階 レセプションスペースにて、
着物・タペストリー・ラグ・服地など学生作品数点を展示いたします。

なかには青く美しく澄んだ海に漂う人魚姫をテーマにしたきものや、
草原一面に咲いた花が風に揺れる様を表したラグなど、
季節の訪れを感じさせるテキスタイルもあります。
この機会に多くの方にご覧いただきたいと思っております。
LIXIL銀座2017パネル
会期:2017年5月18日(木)-23日(火) ※会期中無休
会場:LIXIL:GINZA 1階 レセプションスペース
住所:東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル
開館時間:10:00-18:00
入館料:無料

鶴屋吉信にて作品展示 専攻科 萩原千春

京都の老舗和菓子店の鶴屋吉信京都本店の一階店舗から二階茶屋•お休み処へと続く階段の踊り場に制作したタペストリーを展示して頂いています。
二階では職人さんが目の前で生菓子を作ってくれ、お抹茶と一緒に食べることが出来ます。
そんな素敵な空間に飾る為のタペストリーを作らせて頂くことになりとても嬉しく思いました。

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今回の作品のタイトルは「和敬清寂」で茶道にとても深い関わりのあることばです。
「和」…和合・調和・和楽
「敬」…お互いに敬い合う
「清」…清らかと言う意味ですが、目に見えるだけの清らかさだけでなく、
心の中も清らかであるということ。
「寂」…静寂・閑寂
というように一文字一文字に意味があります。

来店されたお客様に、職人さんが一つ一つ丁寧に心を込めて作ったお菓子を
落ち着いて召し上がって頂けるような空間にしたいという思いからこのテーマで制作をしました。

近くに寄られた際には、是非足を運んでみて下さい。
http://www.turuya.co.jp/tenpo/honten_top.html

スウェーデン交換留学レポート2 創作科 渡井あかり

交換留学先のHV Skolaがあるのはストックホルムの中でもユールゴーデンという少し特別な場所で、
河に囲まれた島のようになっていました。
多くの美術館と公園、そして遊園地があり、年中通して賑やかな場所です。
移動手段はトラムと呼ばれる路面電車かバス、電車やフェリーがあります。
どれでも共通して使うことの出来るチャージ式のICカードがあり、
学割で1ヶ月、3ヶ月、1年のチケットを買うことが出来ました。
また、地図で見るよりもストックホルムは小さいようで、徒歩で学校から中心部へ行くことも可能でした。
私はよくフェリーとトラム、バスを利用しました。
特にフェリーは見える景色が好きだったので冬場になってもよく利用しました。

ストックホルム

約3ヶ月にわたる留学中、私はHVが持つアパートに住んでいました。
学校の敷地内にあるアパートは1階が学校、2階がアパートという不思議な造りで一般の方も住んでいました。
洗濯機は共同、部屋は最大3人が滞在出来るシェアルームで、生活に必要なものはひと通り揃っていました。
学校の隣には少し物価が高くはなりますが小さなお店があり、食品や日用品を買うことが出来ました。

アパート

HVにはキッチン付きの食堂があり、昼時になると皆食堂で昼食を摂ります。
主にパスタやスープが多かったように思いますが、時折冷凍の餃子や
インスタントのラーメンを食べている人がいて面白かったです。
スウェーデンでも日本食は話題になっているらしく、
あちらこちらに寿司バーやラーメン屋さん、スーパーで普通に醤油や酢が購入出来ました。
日本食材店もありカレールーも日本メーカーのものを購入することが出来ます。

寿司バー

お互いに違う食文化を持つためか、わたしも皆もそれぞれのお弁当に興味津々でした。
皮をむいた林檎を塩水につけて持って行ったところ、「そのソースはなに!?」と驚かれたりしました。
また、スウェーデンにはFika(フィーカ)と呼ばれるコーヒー休憩があり、
毎日決まった時間にきちんと休憩をとります。
私のクラスは10時と決まっていたので、その時間になると
シナモンケーキやキャンディを持ち寄ってお喋りを楽しんでいました。

そして日本との違いに驚いたことのひとつに、
クラスメイトが快く日本人である私を受け入れてくれたことがあります。
あらかじめ勉強していったとはいえ、私の英語は拙くまたスウェーデン語を話すことも出来ませんでした。
スウェーデンの人は英語が上手いと聞いていましたが、
やはり全員が話せるわけでもなく、片言で話す機会も多くありました。
それでも昼休みに美術館へ誘ってくれたり、放課後にアイスを食べに行ってくれたりと
本当にあたたかく迎え入れてくれました。
はじめての海外であったにも関わらず、3ヶ月の間1度もホームシックにならずに
過ごせたのはクラスメイトと先生方、事務の方々のおかげだったと思います。

11月の最後に私が帰ることを知って、クラスメイトが少し早いクリスマスパーティを
開いてくれたときには本当に感動で言葉が詰まってしまいました。
私が以前ぽろりと零した「スウェーデンの伝統を知りたい」という言葉を覚えていてくれて、
クリスマスに食べるサフランパンやペッパカーカというクッキーを一緒に作ってくれました。
手作りのお菓子を持ち寄って、クリスマスに飲む甘いホットワインを飲みながら過ごした1日は
忘れられない大切な思い出です。

サフランパン

スウェーデン交換留学レポート 創作科 渡井あかり

創作科(3年目)の渡井さんは、提携校であるHV Skolaに交換留学に行きました。

私は2016年9月より約3ヶ月の間、スウェーデンにあるHandarbetets Vänner Skola(HV Skola)
というテキスタイルの学校へ交換留学に行きました。
HVはスウェーデンの首都ストックホルムにあり、織物のほかに刺繍や染色、
化学繊維の熱加工など幅広くテキスタイルについて学ぶことが出来ます。
学校のある建物の最上階には王室へ献上するような織物を制作するアトリエがあり、
そこで働く職人さんたちが時折学校へ下りてきては生徒の相談に乗ったりしていました。
学校は3年制で1学年の生徒数は多くありませんが、土日のワークショップや夜間コース、
月1コースなどが頻繁に開かれており、常に賑やかな印象の学校でした。

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私は短期留学生として3年生のクラスに参加しました。
最終学年ということもあり、私を含めて10人と学校の中で最も人数の少ないクラスでしたが、
おかげですぐにクラスメイトの顔と名前を覚えることが出来ました。

9月は刺繍(パッチワーク)のプロジェクトを進めました。
スウェーデンの伝統的な技法を含めた3種類の刺繍を学び、
サンプルを制作し、最終的に1m×1mの刺繍作品を完成させるというものです。

スウェーデンの公用語はスウェーデン語で、当然ながら授業もスウェーデン語で進みます。
事前に勉強はしましたがやはり理解までは至らず、拙いながらも英語でなんとかやりとりをしました。
制作のテーマやコンセプト、使いたい技法の面白いと思った部分、制作の過程における質問など、
思ったままの事柄を相手に伝えることの難しさを痛感しました。
それでも先生方が辛抱強く私の言葉を理解しようとしてくれたこともあり、無事に制作を進めることができました。
川島で2年間織物を学んでいたわたしは刺繍という技法をとても新鮮に感じていました。
布同士の折り重なりや、縫い合わせることによって生まれる生地の凹凸。
テキスタイルの持つ美しさを改めて感じることが出来ました。

HVで制作した最初の作品「さかなの街」は、スウェーデンに来る際飛行機から見た街並みをイメージしています。
規則正しく並んだ同じ色で統一された家々の屋根が魚の鱗のように光り、
街ひとつが河と緑の間を泳ぐ大きな魚のように見えたことから「魚」をテーマにしました。
スウェーデンに来る前に川島でテーマにしていた「日本の伝統柄と技法」から、
板締めの模様を参考にしてパターンを組んでいます。

9月課題

この授業でことさらに面白く感じたのは、クラスメイト同士で積極的にアドバイスの交換が行われることでした。
先生に質問するのはもちろんのこと、「このデザインどう思う?」「その表現面白い!」など、
毎日のように生徒間で意見が交わされ、自分ひとりでは気付かない表現の面白さを発見しデザインを変更したりしました。
それまで人の作品にあまり口を出すべきではないのでは、と思っていましたが、
アドバイスをし合うことによって作品がより良い方向へ変わっていく様を身をもって体験することが出来ました。

だんだんと冷え込むようになる10月には、ストックホルムにあるノーベル美術館と
コラボレーションした企画「Nobel Creations」に参加しました。
毎年スウェーデンにある美術系の学校が数校選ばれ、
生徒がその年のノーベル賞をテーマに制作をするというものです。
HVもはじめて参加する企画とのことで、わたしがいていいものかと大変緊張しましたが、
クラスメイトとの距離もぐっと縮まる充実したひと月になりました。

この課題はグループワークとなり、技法・素材が自由ということもあって、
まずは様々なワークショップに参加することから始めました。
染色から布の熱加工、造形の授業、グループワークをどう進めるべきかという講義まで、
1週間でみっちりと勉強しました。
その傍ら、順番に発表されていくノーベル賞について調べ1人につき3案持ってくるという
課題もあったので最も忙しかった時期だと思います。
私はクラスメイトのSarah と共にノーベル化学賞、分子機械について制作しました。
ほかのグループとは少し勝手が違い、お互いに今までの制作を知らないので
まずは自分の制作や家族構成など、お互いのことをよく知るところからはじめました。
分子機械について思ったこと、面白い点をノートにまとめスケッチを交えて話し合い、
刺繍を交えた造形を用いて制作することにしました。

分子機械の動きと形から「connection」と「movement」というキーワードを決め、
そこからイメージした色と造形で作品を仕上げました。
作品は「Tom Tits Experiment」という美術館に展示され、
12月のはじめには実際にノーベル賞受賞者を招いたパーティーが開かれました。

10月課題

このプロジェクトの合間に、先生に頼み込んで週末と夜の刺繍コースに参加させてもらいました。
「これがもっと勉強したい」ということを伝えると快く承諾してくださり、
サンプルを持ち出してくれたりと本当に感謝の連続となった月でした。

週末刺繍

11月にはスウェーデンに早めの雪が降りました。
街はクリスマスへ向けて装いを変え、あちらこちらでマーケットやイベントが開かれ楽しげな雰囲気が漂います。
そんな中、HVで最後のプロジェクトとなるダマスク織の授業がはじまりました。
ダマスク織は日本でいうところのジャカード織や空引機と仕組みが似ており、
手元にあるハンドルと経糸を繋げて模様通りに経糸を上げていく織物です。
PCソフトを使って模様を図面におこします。
10月のプロジェクトが少し押したためにあまり時間がない中での制作になりましたが、
スウェーデンの短くも美しい秋をモチーフにマフラーを織ることが出来ました。
緯糸を思う色に染めたくて、土日にこっそりアパートで染色したのも良い思い出になりました。

11月課題

3ヶ月の間に、私は多くのことを学びました。
スウェーデンではテキスタイルというものが人々の生活に深く根付いており、
台ふきひとつ取っても組織織りが組み込まれていたりして大変興味深いと思いました。
目に映るもの、ものを作るということに対するクラスメイトや先生方の姿勢、考え方、
すべてが私にとって刺激的で新鮮なものでした。
何故手仕事を学ぶのか、何故ものを作るのかという自分の根底にあるものを見つめ直すことが出来ました。
なによりも、尊敬出来るアーティストたちに出会えたことを心から嬉しく思います。

織物がわかる5日間を受講して

9月開講のワークショップ「織物がわかる5日間」に参加しての声を東京都・馬橋さんからいただきました。

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まだ夏の暑さが残る9月12日から16日にかけて、この講座を他の5人のメンバーと受けて来ました
「織ること」についての色々な想いを持った6人が奈良県、神奈川県、東京都などから参加していました。

着物、特に紬の着物が好きな私は「織り」にとても興味があり、旅行先などで手織り体験(織機に用意された経糸に指導を受けながら緯糸を織り込んでいくもの)を何回かするうちに、経糸はどういう風にして織機に掛けられるのか、織機はどういう風に動いて糸が織物になっていくのか、どうしても知りたいと思うようになりました。
インターネットでこの講座を見つけて、これだ!!とばかりに京都行きを決めました。

ワクワクドキドキで参加した講座では、「綜絖(そうこう)」や「筬通し(おさとおし)」「框(かまち)」などという耳慣れない日本語がいろいろ出てきて不安もありました。また、180本もの綿糸を綜絖や筬に通すのはなかなか大変な作業でした。

実際に機の前に座って織り出すまでに大変な手間と時間がかかることがよくわかりました。
織り出してみると、両端をきれいに織っていくのがどんなに難しいことか。
それでも踏木を踏んで織り進めていくと、不思議な気持ちと嬉しい気持ちが半分ずつ湧いてきました。
先生の親切で丁寧なご指導のおかげで、サンプル織りが終わりいよいよ自分の織りたい柄でのテーブルマット織りへと進みましたが、理解できていたはずの綜絖と踏木のタイアップがかなり怪しい状態に。
これも先生のおかげで何とか乗り切って織り上げることが出来ました。
今回同じ時にこの講座を受けた6人が好きな色の糸を使い、好きな柄を選んで織り上げたテーブルマットは各々個性的で素敵なものに仕上がり、楽しい講評会となりました。
大変な事もたくさんあったけれど、全てが楽しい経験になりました。

1日約7時間、5日間の講座に参加したことで、ようやく「織り」の入口に立つことが出来ました。
それだけの経験で偉そうな事は言えませんが、織機というものがとても機能的であり合理的なものだということがわかりました。そして織るのも大変だけれども、そも前にとても多くの時間と手間が掛かっているという事も。
だからこそ今持っている着物や帯を今以上に大切に着ていこうという気持ちを強くしました。
それと同時にまた機会を見つけて講座へ参加したいと思いました。

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整経作業風景

組織がわかる5日間を受講して

6月開講のワークショップ「組織がわかる5日間」に参加しての声をA・Tさんからいただきました。

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「高機で織りをしてみたい!」興味とタイミングでワークショップに申し込みをしました。
期間中は、日々教室と寮の往復をしながら、講師の方、豊富な道具、全国から集まった参加者という
恵まれた環境でどっぷり糸と織りに向き合え、楽しく幸せな時間を過ごすことができました。
講座の時間外も道具を使わせてもらえたり、糸や道具の購入の相談や注文ができたりといった環境も魅力的でした。

組織の基礎では、組織図に頭が混乱し、手足もぎこちなく、踏み間違いもあり、行きつ戻りつでしたが、
織り進めていくうちに浮かびあがる模様にワクワクしました。先人の知恵と工夫はすごいと改めて実感!

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今回ワークショップに参加したことで、人や情報からも刺激を受け、
織りの前後の糸作りや染色、布を作品にすることにも興味が広がったように思います。
これから何をしていくか、何が残っていくか、まだ手探りですが、
ここでの経験や出会いが次にどう広がっていくか、自分にもワクワクしています。

次回の「組織がわかる5日間」は11月7日(月)からです。
ぜひご参加ください!

織実習「綴織」 本科 山本理恵

綴織の織実習では技法を学ぶサンプルを2枚織り、
3枚目にテーマ「花」で自由制作を制作しました。

綴織は絵を描くことに近いと思いました。
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原画

単純に、作業で下絵を画面に写すというよりは、
また新たに描いていくような感覚で糸の色を変えたりしながら、
緯糸を一越、一越、織り込み形を作っていきます。
しかしどんな方向にも滑らかに描ける絵とは違って、織物は経糸と緯糸の世界。
丸やカーブがとても難しくてなかなか自然な形になってくれません。
何度もやり直すのですが、一段だけでは答えがでずに、
間違いに気がつくのは沢山織った後だったりします。そうなるともう大変です。
でも、そうやって試行錯誤していって、気に入った形が出来た時の喜びはひとしおです。
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制作過程

画面の中で糸の太さを変えたり、飛び出すように糸を立体的に織り入れたり、
二つの違った色の糸を交互に織る事で、だんだんと色をぼかしていく事が出来たりします。
様々な技法を使い、細かく繊維にも。大胆に立体的にも。
表現が無限に広がっていくようでした。
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完成作品

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本科織実習「綴織」 担当講師:近藤裕八