2023年度修了展ご来場のお礼・春期休暇のお知らせ

2023年度修了展(2月28日-3月3日)が無事に終わりました。会期中の様子や作品についてはinstagramfacebookの過去の投稿でご覧いただけます。多くの方々にご来場いただき、ありがとうございました。

誠に勝手ながら下記の期間におきまして春期休暇とさせていただきます。

春期休暇:2024年3月19日(火)-3月26日(火)
商品出荷業務停止期間: 2024年3月28日(木)-3月31日(日)
なお、2024年3月27日(水)は入金確認分のみ出荷させていただきます。
※在庫状況およびご入金状況により、最終出荷日までに商品が発送できない場合があります。

なお、期間中のご注文およびお問い合わせはメールでお願い致します。
期間中にいただきましたご注文、及びお問い合わせにつきましては、休暇日明け以降に順次対応させていただきます。

ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

2023年度川島テキスタイルスクール修了展

会期:2024年2月28日(水)- 3月3日(日)
会場:京都市美術館別館 2階
時間:10:00-17:00 入場無料


2023年度川島テキスタイルスクールの学生による修了作品を展示します。タペストリーやインテリアファブリック、着物、そして3年ぶりに留学生コースが復活し、留学生の絣作品が加わる今回の修了展。展示作品は「織り」のみで、一人ひとりの手によるもの。特に今年度は多様な文化背景や価値観、経験などを持つ人たちが学びに来ており、それぞれの個性が「織りのバラエティ豊かさ」を生み出しています。

それは「織りでつながる」人々が集うスクールだからこそできること。様々なバックグラウンドを持つ、幅広い年代の人たちが国内外から集い、基礎から専門技術まで広く深く学べるスクールの特徴を、そのまま反映しているといえます。世の中に工芸の学校はあっても、川島テキスタイルスクールのように手織りを専門に50年続いている学校は世界でも希。そんなスクールで培った技術や表現力をもとに、一人ひとりの持ち味が生かされた作品の数々をぜひ見に来てください。


本展における最新情報はこちらでお知らせいたします。

2024年度ワークショップ受付開始日のお知らせ

スウェーデンのローゼンゴンのミニマット」参考作品

明日2024年2月1日(木)9:00より、ホームページ内ワークショップページにて受付を開始します!開始前のお申し込みは受付できませんのでご了承ください。

お申し込みの際はワークショップ受講規約への同意が必要となりますので、必ずご確認ください。
また、ワークショップに関するよくあるご質問ページも出来ましたので、ご確認の上ご参加ください。

皆様のお申し込みをお待ちしています。

在校生インタビュー3 ワークショップ・ウィークエンドクラスから進学

松田敦子さん・Sさん(2023年度・専門コース本科)

川島テキスタイルスクールの専門コースには、年代も背景もさまざまな人たちがそれぞれの目的を持って学びに来ています。2023年4月に入学した本科生(1年次)にインタビューし、入学の動機や、学ぶなかでの気づきなどについて語ってもらった3回シリーズ。最終回は「はじめての織り」10日間のワークショップを受講後に専門コースに進んだ松田敦子さんと、ウィークエンドクラスを1年受講後に進学したSさんです。

修了展に向けて、自分でデザインしたテーブルクロスを織る松田さん

◆1から自分でできるようになりたい

——まずは進学の動機を教えてください。

松田敦子:私はライフワークとして織りをやっていきたいと思っています。そのために1から準備して織って、と自宅で一人ですべてできるようになりたい。ワークショップの場合は用意していただいたものを織る形になるので、もっと本格的にスキルを身に付けたいと思い、子どもたちも大きくなり時間ができたので学びに来ました。

S:ウィークエンドクラスの時は、長年働いた仕事を退職して時間ができたので、ずっと興味があったけどできなかったことを始めたいと思って受講しました。1年目がすごく楽しくて、もっと学びたい気持ちになりました。ですがこのまま2年目に進む(ゆとりのあるペースで学ぶ)よりは、もっと専門的に学びたいと思って(フルタイムで基礎からしっかりと学ぶ)専門コースに進みました。実際、通学となると距離も遠いし、かなり生活が変わるので(家庭との両立など)自信はなかったんですけど、夫や妹が「できることがあったら助けてあげるから」「これまで働いてきた分、これからは自分の好きなことをやったらいい」と後押ししてくれて。じゃあ初めからきちんと学んで、自分が何をしたいかをしっかりとつかんでから家に帰ろうと決めました。

——入学して7カ月が経ち、これまでとは全く違う生活を送っていますが、新たな日々の実感はどうですか。

松田:私は主婦で時間の制約があまりない生活を送っていました。今は朝9時から夕方5時と時間が決まっている分メリハリがあります。メリハリができたからこそ自分はこういうのが好きなのかと新たに気づく面もあって、制約はわるくないと感じています。ですが大変は大変ですね。寮生活で週末休みに家に戻りますが、たまっている家事をこなすだけで休みが終わってしまうので。

S:大変ですけど、おかげで痩せました(笑)。早寝早起きでおやつも食べないし、健康になりました。(授業の密度が濃い分)時間に追われたり、課題を期限内に提出するのに精一杯になりがちですが、好きなことをやっているので苦しむようなストレスもないし、自然があって環境もいいところです。周りの方も優しいし、先生もしっかりと教えてくれるし、何とかやっています。

松田:クラスは恵まれていますね。皆優しいし、大丈夫?と声をかけ合いながらやっています。自分の娘と同年ぐらいの子たちもいますが、皆一生懸命だし、ここに来なかったら接する機会のない人たちなので楽しいです。

S:クラスメイトとして自然に接しているし、あまり年齢差を意識したことはないです。うちの子どもと同じような年ですが、また違いますね。やっぱり同じ目的に向かっているので、ある意味もっと近しい気持ちになっています。

グループ制作のタペストリーを織るSさん

◆ 「どうして?」が「だからか!」に、知る喜びがたくさんある

——スクールでのものづくりの日々を通して、何か気づきはありますか?

松田:正直なところ私はデザインに苦手意識があります。ですが織るのは楽しいし、仕組みを知るのが好き。組織織りでもどうしてこんな模様ができるのかを、踏み順の組み合わせなど機の仕組みからつなげて知るのが面白いです。だからこうなるのか!と理解できた瞬間はすごく嬉しい。制作で悩むことはあるし、上手にできる人を羨ましく思うこともありますが、人と比べる必要ないねんなっていうのは常に思います。課題をこなしていくのに必死で、他の人を気にする余裕がないのが実際のところ(笑)。でもそれっていいことやなとも思います。自分の持っているもの、やれることはこれだと思って自分の制作にまっすぐ向かうだけ。

S:自分はこんなにできひんのやなって。指も思うように動かへんし、そういう年齢なんやなってすごく思います。でも人と比べる必要はないし、時間に追われて締切が厳しい分、それこそ没頭できる。それに専門コースの授業だからこそ、いろんな専門家の話を聞けるのも貴重です。特に冨田潤先生の工房見学や、みんぱくの上羽陽子先生の講義と実習はすごく面白かったです。(さまざまな角度からの授業を通して)糸の見方とか、ものの観察の仕方とかが変わったと思います。糸の結び方だけでもたくさんあるし、それぞれ何のためにあるのか、背景にある生活の知恵を知って感動したり、昔の人は生活の中で織っていたんやなと思いはせたりしながら学んでいます。

松田:糸も単に毛糸として見ていたところからS撚り・Z撚りがあると知ったり、ループヤーンのループができる仕組みだったり、色糸の混ぜ方とか知識を身に付けたうえで、糸選びができるのは楽しいですね。やっぱり私は「どうして?」が「だからか!」になる瞬間が好き。そんな知る喜びが、この学校に通う間にたくさんあると思います。

◆制作に没頭、今は自分第一主義で

——今とこれからのモチベーションを教えてください。

松田:やっぱりライフワークとして、自分でものが作れるようになりたい。家に戻ったら主婦だったり母だったりするので、家庭の中、生活の中で織りを取り入れていきたいです。

S:自分第一主義かな。人生長くなりましたので。これまで(仕事と家庭で)自分の時間がなく、好きと思っても掘り下げる時間がなかったです。いろんなことをあきらめたり妥協したりしてきて今の私がある。そこから今、純粋に織りに向かっていて、あきらめる前の自分を思い出している感じがするんです。この学校にいると世間のざわつきからも距離を置けるし、(この環境に自分自身が)癒される感じもあります。それも没頭ですね。今いろんなものを取り戻している感じがします。好きだったり興味があったりすることが形になると嬉しいし、仕組みがわかると深まる感じもある。この先はまだわかりませんが、何かの取っかかりになるだろうと思います。

松田:家族のためではなく、自分の作品のためだけに没頭できる。

S:だから今は、自分第一主義ですね。

*2024年度専門コース本科・技術研修コースの入学願書の三次締切は2月29日です。コースに関する説明、学校見学は随時受け付けています。ホームページからお問い合わせください。

在校生インタビュー2 仕事を辞めて入学

福井麻希さん・Hさん(2023年度・専門コース本科)

川島テキスタイルスクールの専門コースには、年代も背景もさまざまな人たちがそれぞれの目的を持って学びに来ています。2023年4月に入学した本科生(1年次)にインタビューし、入学の動機や、学ぶなかでの気づきなどについて語ってもらった3回シリーズ。第2回は、新卒から8年勤めた組織を辞めて入学した福井麻希さんと、会社の事務職を辞めて学びに来たHさんです。

デザイン演習で制作したブレスレットの説明をする福井さん

◆消費するのでなく、ものをつくる側に

——まずは入学の動機を教えてください。

福井麻希:もともとファッションが好きで、ものづくりにも興味がありました。軸にあるのは「服が好き」。なかでも生地に興味を持ったのは、好きな服屋さんがきっかけです。そのお店で取り扱っている商品のなかに、日本の伝統的な織りをデザイナーさんが現代的な服に仕立てているブランドがあって、服の素材や触り心地がすごく良くて、生地でこんなに変わるんだと知りました。そこで私は服が作りたいのではなく、生地の方に興味あると気づいて、自分で生地が作れるところで学びたいと3〜4年前から資料請求し、他の服飾系の学校も見ていました。この学校を選んだのは少人数制で行き届いている感じがして、雰囲気もいいなと思ったからです。

H:子どもの頃から手芸が好きでしたが、大人になると忘れていました。就職してからは、頑張って働いて稼いだお金で好きなものを買うのが幸せだとずっと思ってきたところがあります。ですがコロナ禍で外出できなくなった時、物を買う喜びがなくなって、消費するだけの生活に疑問が生まれたんです。そこでもともと手芸が好きだったのを思い出して、趣味で手芸を始めてみたらすごく楽しくて。ただ消費するのではなく、ものをつくる側にまわりたいという気持ちが芽生えました。布が好きなのもあって、「染織」「学校」などでインターネット検索するなかでこの学校を見つけました。カリキュラムを見て、密度が濃そうだなと。仕事を辞めて新しく学ぶとなると、やっぱりきちんと技術を身につけたいし、できる限り密度濃く学びたい。それができそうな学校だと思い、入学を決めました。

——退職して入学するのは思い切りが必要でしたか? スクール見学に来られる方のなかには気持ちはあっても仕事を辞められないなど、すぐには踏み切れない人もいます。しかし未練があって数年後に入学する人もいます。決断に至った思いを聞かせてください。

福井:元々就職する時に、好きなことを仕事にするかどうかすごく迷ってて。稼いだお金で好きなものを買うような生活の方がいいのかなと思って就職したんですけど、実際に働くなかで私の性格ではそれが無理だって気づいて(笑)。私は決められたルーティーンでやる仕事よりは自分で考えてやる方が向いているんじゃないか、好きなことを仕事にしないと精神的に辛いなと思いました。後からあの時やっておけばよかったと思うのは嫌だし、(このまま同じ状態で)いればいるほど後悔が長くなるから、始めるなら早い方がいい、好きなことを今のうちにしてしまおうと思って、お金を貯めて辞めました。

H:私も仕事がルーティーンになってきて、これ一生続くのかなと考えた時に、自分のためにも方向転換した方がいいのかなという思いが強くなりました。組織の中でどれだけ頑張っても逆に空回りして(自分がすり減ってしまうような)状況も経験して。だけど創作だったら自分が頑張った分だけ、いいものが作れるかなと。

天秤機で組織のサンプルを織るHさん

◆自分の引き出しから考え、形にできるのが面白い

——入学して7カ月が経ちました。ものづくりの日々を通して、何か気づきはありますか?

福井:私は映画や美術を見たり、小説を読んだりするのが好きですが、これまでは受身で。感想やアウトプットが苦手と自分で思い込んで、ただ受け取るだけの感覚でいました。それがデザイン演習でテーマに沿って作品をつくるときに、今まで見たもの、読んだものがアイデアの引き出しになってあまり迷わずに済んだんです。課題は抽象的なテーマが多く、具体的なものが一切ないところから考えるのが楽しくて。アイデアを形にできるのが面白いです。これまで見てきた蓄積が身になり、反映されるのが、ものづくりをすると実感できました。それがこの学校に入ってからの発見でした。

H:最初、基礎織りの実習をやった時に、(頭では)わかってはいたけど工程がすごく多くて、ものづくりって大変なんだなと実感しました。その後も織り実習に取り組むなかで自分の向き不向きに気づくことも。「布を織る」は糸が細い分、絡まったりして大変だったんですけど、ちゃんと(8メートルの布を織り上げて)頑張れたのは自信になりました。次はもっとこうしてみたいとかもあって、自分の中で向上心が生まれるのが嬉しいです。

◆織るだけでなく糸を作るところから

——未経験から学び始めて、いまお二人にとって織りはどういうものでしょう。

福井:自分の頭の中にあるイメージを出力できる手段のようなもの。今までそんな表現手段を持っていなかったので、自分の楽しいとか、ときめくとか、ウキウキを増やせるのが織りだなって思っています。私の場合、作品をつくるのは主張や心情を表すというより、好きな世界観や雰囲気、こういうのがあったら楽しいみたいな空想のアウトプット。もともと「服・生地が好き」が軸にあるのが大きいかもしれないです。自分の好きなものと手段がかみ合ったから、いいなって思えるのかな。

H:アウトプットしたら楽しいんだなっていう気づきは私もあります。その手段として織りがある。私は一人で楽しむのが好きで、友達ともあまり共有しなくていいタイプだったんですけど、形になって表現できたら嬉しいと(知らなかった自分の一面に)気づきました。織りが自分に合っているかはまだわからないですが、この学校では織るだけじゃなく、糸を作るところから教えてもらえるので、いろんなことができるなって。ファンシーヤーンでは違う色をミックスして染色にはない不思議な糸ができたりして、こういうこともできるんだ、面白いなと。織物にはいろんな可能性があるなと思っています。

*2024年度専門コース本科・技術研修コースの入学願書の三次締切は2月29日です。コースに関する説明、学校見学は随時受け付けています。ホームページからお問い合わせください。

展覧会のお知らせ:「小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ」

かつて川島織物に在職していた小林正和氏をはじめ、当スクールともゆかりのある方々が出品されている展覧会です。

開館60周年記念「小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ」
2024年1月6日(土)~3月10日(日)
京都国立近代美術館

序 糸との出会い―川島織物時代
 小林正和、村田博三、向井良吉

1 糸の発見、ファイバーアートの誕生―ローザンヌとウッヂでの試み
 小林正和、小名木陽一、佐久間美智子、久保田繁雄、小林尚美

2 糸と空間、ファイバーアートの拡張―京都とテキスタイル・マジシャン
 小林正和、草間喆雄、熊井恭子、三橋遵、扇千花、新道弘之、冨田潤、田中千世子、小林尚美

3 糸の繋がり、ファイバーアートの展開―「ギャラリーギャラリー」とデザインワーク
 小林正和

4 糸、そしてファイバーアートの向こうへ
 小林正和、三橋遵、戸矢崎満雄、野田凉美、島田清徳