本科

修了生インタビュー:「勇気を出して踏み出したら、事がどんどん進んでいった」吉田有希子さん

大学卒業後、川島テキスタイルスクールの専門コース本科(2023年度)で1年間学んだ吉田有希子さん。未経験から織りを学び始め、「産地のひとりになりたい」という希望を叶え、修了後は久留米絣の工房で職人として働きます。本科での1年が「3年ぐらいの体感だった」という吉田さんに、スクールでどんな思いで学んだか、自身の変化や、やりたい仕事につながった道のりなどについてインタビューしました。

◆ 糸をきちんと扱う感覚がつかめるように

——吉田さんは大学で絣をテーマにした卒業論文を書き、本を読むだけではわからないからつくってみたいとスクールの専門コースに入学しました。1年目の本科では、糸染めから織りの全行程を学びます。ここで絣に限定しない学び方を選んだのはどうしてですか?

私は織りをやったことがなかったので、とにかく基礎を学びたいという気持ちがありました。きっかけは久留米絣でしたが、絣だけではなく織り自体を知りたいと思っていたので、この学校でいろんな織物を学ぶ中で、自分に合うものを見つけられたらいいなという気持ちでした。

——本科で特に印象深い授業はありますか。

自分の成長を感じたのがホームスパンです。入学当初は糸に触れること自体が久しぶりで、4月のスピニングの時は糸が絡まったり切れたりしないかと怖くて、これから大丈夫かなと不安になりました。ですが、その後の実習でいろんな糸を使ううちに少しずつ恐怖心が薄れていき、10月のホームスパンの時は楽しく取り組めました。以前は力ずくで糸をどうにかしようとして逆に絡まっていましたが、最近は力を入れずにやさしく扱った方が早く解けるとわかって、糸をきちんと扱う感覚がつかめるようになった気がします。

◆ 同世代に興味を持ってもらえる絣を

——修了制作ではウールを使って、ハチワレ猫の模様を絣で表現した毛布をつくりました。作品の成り立ちを教えてください。

(いろんな織りを学んだ上で、)やっぱり絣をやりたい気持ちがありました。大学にいた頃、絣という織物があると友達に言っても誰も知らなくて。同世代に興味を持ってもらえるものをつくりたいという思いがずっとあって、絣はこうというような固定観念に縛られないでつくってみようと思ったんです。久留米絣はほとんど平織りですが、修了制作では綾織りを選びました。糸も絣というと絹だったり、久留米絣はすべて綿だったりしますが、ウールでも絣はできると先生に後押ししてもらって、やりたいことができる環境にいる今、チャレンジしたいと思いました。
毛布にしたのは、ホームスパンの授業で先生が持ってこられたショールが気持ちいいなと感じて、起毛したウールの風合いから猫を撫でる心地を思い出し、猫柄の毛布をつくろうと着想しました。うちの猫3匹はみんなハチワレで、絣を使ってどうハチワレ模様を表すか、先生と相談しながらデザインを決めました。絣というと小さい柄が多いイメージがありますが、大きい柄の絣をやってみたいと思ったのもあります。

——制作で大変だったところはありますか?

絣のずらしです。修了制作で初めて大きなずらし台を使ったのですが、機の上で扱うのは体力的にも大変でした。絣をデザインから考えるのも初めてで、括る位置を決めるのに、ガイドテープの計算を頭がこんがらがりながら何とかやって(笑)。初めての経験が多くて大変だった分、とても勉強になりました。

——作品が出来上がった時の気持ちは?

今の自分ができることはやれたけど、反省もあります。同世代に興味持ってもらえる絣をつくりたい気持ちはこれからもずっと続くと思うので、もっと力をつけたい。この作品きっかけに、よりよいものをつくっていきたいです。

◆産地のひとりになりたい

——修了後は福岡に戻り、久留米絣の工房で職人として働かれます。職人を目指すきっかけは何だったのでしょうか。

本科の授業で作業全体を繰り返し経験する中で、私はデザインよりも、手を動かしてつくる過程が一番楽しいと感じるようになりました。初めはうまくできなくても慣れていくにつれ、ちょっとずつコツをつかんだり、スムーズに作業できるように考えたりする時間が楽しくなって、職人の方向がいいなと思うようになりました。

——織りを通して自分と向き合い、進む方向が見つかった。そこからどのように就職に結びついたのですか?

福岡県が主催する「久留米絣後継者インターンシップ」に参加して、そのまま就職が決まりました。プログラムは未経験でも参加できたのですが、私は織りの基礎があってよかったと思った場面がけっこうありました。3日間で絣の括り屋さんや染色屋さんを見学したり、工房で緯糸の準備をしたりしたのですが、専門的な説明でも織りの基礎を知っていたことで理解しやすく、吸収できるものが多かったと思います。現地で久留米絣に携わる方々の話を聞く中で、それぞれ考え方は違っても一つの産地として協力してものづくりをしているのが面白くて、私も産地のひとりになりたいと思いました。このプログラムは初めての開催だったので、ラッキーでしたね。思い切って参加してよかったです。

ハチワレモウフ(2024)

◆今は何があっても大丈夫と思える

——修了を迎える今、1年を振り返ってどんなことを感じますか?

体感的には3年ぐらい、長いような短いような不思議な感覚です。1年前の入寮時はダンボール2箱分の荷物で来たはずが、退寮の今、部屋にダンボール6箱分の荷物があります。箱の中身は、この1年でつくった作品や使用した糸が多くて、それらを見ていると確かにこの学校で毎日織りに触れ、学んできたんだなあと。1年で大きな作品をつくれるようにもなって、ちょっとずつでも確実に進めている実感があります。

——最後に、吉田さんはこの学校で何を得たと思いますか?

やってみる精神です。大学生の頃はやりたいことがわからなくて悩んでいました。大学の後半になって織りに興味を持ったのですが、どうやってその道に行けばいいかわからず、ただ悩むだけでした。この学校に入学してからは、事がどんどん進んでいくのを感じました。それまで織りを仕事にしている方と会ったことがなかったのですが、授業で外部の方を含めていろんな先生の話を聞き、織りに関わるいろんな方法があると知って、道が開けた感じもあります。
そして私自身、課題制作を通して自分が変われたのが大きいです。制作中はピンチも多かったのですが、その都度先生たちが助けてくださって乗り越えて。そんな日々を過ごす中で自分ひとりではうまくできなくても、頑張っていれば誰かが助けてくれるから大丈夫と思えるようになって、以前よりも挑戦することに対して前向きな気持ちを持てるようになったんです。久留米絣のインターンシップも、以前の私だったら無理かなと申し込まなかったかもしれません。ですが今なら何とかなると思えました。勇気を出して踏み出した結果、今こうやって自分の進みたい方に進めている、そのこと自体がよかったです。今は、何があっても大丈夫と思えます。


吉田さんを含む、2023年度本科の在校生インタビュー記事です。
在校生インタビュー1 高校・大学卒業後に入学(2023/12/8)

在校生インタビュー3 ワークショップ・ウィークエンドクラスから進学

松田敦子さん・Sさん(2023年度・専門コース本科)

川島テキスタイルスクールの専門コースには、年代も背景もさまざまな人たちがそれぞれの目的を持って学びに来ています。2023年4月に入学した本科生(1年次)にインタビューし、入学の動機や、学ぶなかでの気づきなどについて語ってもらった3回シリーズ。最終回は「はじめての織り」10日間のワークショップを受講後に専門コースに進んだ松田敦子さんと、ウィークエンドクラスを1年受講後に進学したSさんです。

修了展に向けて、自分でデザインしたテーブルクロスを織る松田さん

◆1から自分でできるようになりたい

——まずは進学の動機を教えてください。

松田敦子:私はライフワークとして織りをやっていきたいと思っています。そのために1から準備して織って、と自宅で一人ですべてできるようになりたい。ワークショップの場合は用意していただいたものを織る形になるので、もっと本格的にスキルを身に付けたいと思い、子どもたちも大きくなり時間ができたので学びに来ました。

S:ウィークエンドクラスの時は、長年働いた仕事を退職して時間ができたので、ずっと興味があったけどできなかったことを始めたいと思って受講しました。1年目がすごく楽しくて、もっと学びたい気持ちになりました。ですがこのまま2年目に進む(ゆとりのあるペースで学ぶ)よりは、もっと専門的に学びたいと思って(フルタイムで基礎からしっかりと学ぶ)専門コースに進みました。実際、通学となると距離も遠いし、かなり生活が変わるので(家庭との両立など)自信はなかったんですけど、夫や妹が「できることがあったら助けてあげるから」「これまで働いてきた分、これからは自分の好きなことをやったらいい」と後押ししてくれて。じゃあ初めからきちんと学んで、自分が何をしたいかをしっかりとつかんでから家に帰ろうと決めました。

——入学して7カ月が経ち、これまでとは全く違う生活を送っていますが、新たな日々の実感はどうですか。

松田:私は主婦で時間の制約があまりない生活を送っていました。今は朝9時から夕方5時と時間が決まっている分メリハリがあります。メリハリができたからこそ自分はこういうのが好きなのかと新たに気づく面もあって、制約はわるくないと感じています。ですが大変は大変ですね。寮生活で週末休みに家に戻りますが、たまっている家事をこなすだけで休みが終わってしまうので。

S:大変ですけど、おかげで痩せました(笑)。早寝早起きでおやつも食べないし、健康になりました。(授業の密度が濃い分)時間に追われたり、課題を期限内に提出するのに精一杯になりがちですが、好きなことをやっているので苦しむようなストレスもないし、自然があって環境もいいところです。周りの方も優しいし、先生もしっかりと教えてくれるし、何とかやっています。

松田:クラスは恵まれていますね。皆優しいし、大丈夫?と声をかけ合いながらやっています。自分の娘と同年ぐらいの子たちもいますが、皆一生懸命だし、ここに来なかったら接する機会のない人たちなので楽しいです。

S:クラスメイトとして自然に接しているし、あまり年齢差を意識したことはないです。うちの子どもと同じような年ですが、また違いますね。やっぱり同じ目的に向かっているので、ある意味もっと近しい気持ちになっています。

グループ制作のタペストリーを織るSさん

◆ 「どうして?」が「だからか!」に、知る喜びがたくさんある

——スクールでのものづくりの日々を通して、何か気づきはありますか?

松田:正直なところ私はデザインに苦手意識があります。ですが織るのは楽しいし、仕組みを知るのが好き。組織織りでもどうしてこんな模様ができるのかを、踏み順の組み合わせなど機の仕組みからつなげて知るのが面白いです。だからこうなるのか!と理解できた瞬間はすごく嬉しい。制作で悩むことはあるし、上手にできる人を羨ましく思うこともありますが、人と比べる必要ないねんなっていうのは常に思います。課題をこなしていくのに必死で、他の人を気にする余裕がないのが実際のところ(笑)。でもそれっていいことやなとも思います。自分の持っているもの、やれることはこれだと思って自分の制作にまっすぐ向かうだけ。

S:自分はこんなにできひんのやなって。指も思うように動かへんし、そういう年齢なんやなってすごく思います。でも人と比べる必要はないし、時間に追われて締切が厳しい分、それこそ没頭できる。それに専門コースの授業だからこそ、いろんな専門家の話を聞けるのも貴重です。特に冨田潤先生の工房見学や、みんぱくの上羽陽子先生の講義と実習はすごく面白かったです。(さまざまな角度からの授業を通して)糸の見方とか、ものの観察の仕方とかが変わったと思います。糸の結び方だけでもたくさんあるし、それぞれ何のためにあるのか、背景にある生活の知恵を知って感動したり、昔の人は生活の中で織っていたんやなと思いはせたりしながら学んでいます。

松田:糸も単に毛糸として見ていたところからS撚り・Z撚りがあると知ったり、ループヤーンのループができる仕組みだったり、色糸の混ぜ方とか知識を身に付けたうえで、糸選びができるのは楽しいですね。やっぱり私は「どうして?」が「だからか!」になる瞬間が好き。そんな知る喜びが、この学校に通う間にたくさんあると思います。

◆制作に没頭、今は自分第一主義で

——今とこれからのモチベーションを教えてください。

松田:やっぱりライフワークとして、自分でものが作れるようになりたい。家に戻ったら主婦だったり母だったりするので、家庭の中、生活の中で織りを取り入れていきたいです。

S:自分第一主義かな。人生長くなりましたので。これまで(仕事と家庭で)自分の時間がなく、好きと思っても掘り下げる時間がなかったです。いろんなことをあきらめたり妥協したりしてきて今の私がある。そこから今、純粋に織りに向かっていて、あきらめる前の自分を思い出している感じがするんです。この学校にいると世間のざわつきからも距離を置けるし、(この環境に自分自身が)癒される感じもあります。それも没頭ですね。今いろんなものを取り戻している感じがします。好きだったり興味があったりすることが形になると嬉しいし、仕組みがわかると深まる感じもある。この先はまだわかりませんが、何かの取っかかりになるだろうと思います。

松田:家族のためではなく、自分の作品のためだけに没頭できる。

S:だから今は、自分第一主義ですね。

*2024年度専門コース本科・技術研修コースの入学願書の三次締切は2月29日です。コースに関する説明、学校見学は随時受け付けています。ホームページからお問い合わせください。

在校生インタビュー2 仕事を辞めて入学

福井麻希さん・Hさん(2023年度・専門コース本科)

川島テキスタイルスクールの専門コースには、年代も背景もさまざまな人たちがそれぞれの目的を持って学びに来ています。2023年4月に入学した本科生(1年次)にインタビューし、入学の動機や、学ぶなかでの気づきなどについて語ってもらった3回シリーズ。第2回は、新卒から8年勤めた組織を辞めて入学した福井麻希さんと、会社の事務職を辞めて学びに来たHさんです。

デザイン演習で制作したブレスレットの説明をする福井さん

◆消費するのでなく、ものをつくる側に

——まずは入学の動機を教えてください。

福井麻希:もともとファッションが好きで、ものづくりにも興味がありました。軸にあるのは「服が好き」。なかでも生地に興味を持ったのは、好きな服屋さんがきっかけです。そのお店で取り扱っている商品のなかに、日本の伝統的な織りをデザイナーさんが現代的な服に仕立てているブランドがあって、服の素材や触り心地がすごく良くて、生地でこんなに変わるんだと知りました。そこで私は服が作りたいのではなく、生地の方に興味あると気づいて、自分で生地が作れるところで学びたいと3〜4年前から資料請求し、他の服飾系の学校も見ていました。この学校を選んだのは少人数制で行き届いている感じがして、雰囲気もいいなと思ったからです。

H:子どもの頃から手芸が好きでしたが、大人になると忘れていました。就職してからは、頑張って働いて稼いだお金で好きなものを買うのが幸せだとずっと思ってきたところがあります。ですがコロナ禍で外出できなくなった時、物を買う喜びがなくなって、消費するだけの生活に疑問が生まれたんです。そこでもともと手芸が好きだったのを思い出して、趣味で手芸を始めてみたらすごく楽しくて。ただ消費するのではなく、ものをつくる側にまわりたいという気持ちが芽生えました。布が好きなのもあって、「染織」「学校」などでインターネット検索するなかでこの学校を見つけました。カリキュラムを見て、密度が濃そうだなと。仕事を辞めて新しく学ぶとなると、やっぱりきちんと技術を身につけたいし、できる限り密度濃く学びたい。それができそうな学校だと思い、入学を決めました。

——退職して入学するのは思い切りが必要でしたか? スクール見学に来られる方のなかには気持ちはあっても仕事を辞められないなど、すぐには踏み切れない人もいます。しかし未練があって数年後に入学する人もいます。決断に至った思いを聞かせてください。

福井:元々就職する時に、好きなことを仕事にするかどうかすごく迷ってて。稼いだお金で好きなものを買うような生活の方がいいのかなと思って就職したんですけど、実際に働くなかで私の性格ではそれが無理だって気づいて(笑)。私は決められたルーティーンでやる仕事よりは自分で考えてやる方が向いているんじゃないか、好きなことを仕事にしないと精神的に辛いなと思いました。後からあの時やっておけばよかったと思うのは嫌だし、(このまま同じ状態で)いればいるほど後悔が長くなるから、始めるなら早い方がいい、好きなことを今のうちにしてしまおうと思って、お金を貯めて辞めました。

H:私も仕事がルーティーンになってきて、これ一生続くのかなと考えた時に、自分のためにも方向転換した方がいいのかなという思いが強くなりました。組織の中でどれだけ頑張っても逆に空回りして(自分がすり減ってしまうような)状況も経験して。だけど創作だったら自分が頑張った分だけ、いいものが作れるかなと。

天秤機で組織のサンプルを織るHさん

◆自分の引き出しから考え、形にできるのが面白い

——入学して7カ月が経ちました。ものづくりの日々を通して、何か気づきはありますか?

福井:私は映画や美術を見たり、小説を読んだりするのが好きですが、これまでは受身で。感想やアウトプットが苦手と自分で思い込んで、ただ受け取るだけの感覚でいました。それがデザイン演習でテーマに沿って作品をつくるときに、今まで見たもの、読んだものがアイデアの引き出しになってあまり迷わずに済んだんです。課題は抽象的なテーマが多く、具体的なものが一切ないところから考えるのが楽しくて。アイデアを形にできるのが面白いです。これまで見てきた蓄積が身になり、反映されるのが、ものづくりをすると実感できました。それがこの学校に入ってからの発見でした。

H:最初、基礎織りの実習をやった時に、(頭では)わかってはいたけど工程がすごく多くて、ものづくりって大変なんだなと実感しました。その後も織り実習に取り組むなかで自分の向き不向きに気づくことも。「布を織る」は糸が細い分、絡まったりして大変だったんですけど、ちゃんと(8メートルの布を織り上げて)頑張れたのは自信になりました。次はもっとこうしてみたいとかもあって、自分の中で向上心が生まれるのが嬉しいです。

◆織るだけでなく糸を作るところから

——未経験から学び始めて、いまお二人にとって織りはどういうものでしょう。

福井:自分の頭の中にあるイメージを出力できる手段のようなもの。今までそんな表現手段を持っていなかったので、自分の楽しいとか、ときめくとか、ウキウキを増やせるのが織りだなって思っています。私の場合、作品をつくるのは主張や心情を表すというより、好きな世界観や雰囲気、こういうのがあったら楽しいみたいな空想のアウトプット。もともと「服・生地が好き」が軸にあるのが大きいかもしれないです。自分の好きなものと手段がかみ合ったから、いいなって思えるのかな。

H:アウトプットしたら楽しいんだなっていう気づきは私もあります。その手段として織りがある。私は一人で楽しむのが好きで、友達ともあまり共有しなくていいタイプだったんですけど、形になって表現できたら嬉しいと(知らなかった自分の一面に)気づきました。織りが自分に合っているかはまだわからないですが、この学校では織るだけじゃなく、糸を作るところから教えてもらえるので、いろんなことができるなって。ファンシーヤーンでは違う色をミックスして染色にはない不思議な糸ができたりして、こういうこともできるんだ、面白いなと。織物にはいろんな可能性があるなと思っています。

*2024年度専門コース本科・技術研修コースの入学願書の三次締切は2月29日です。コースに関する説明、学校見学は随時受け付けています。ホームページからお問い合わせください。

在校生インタビュー1 高校・大学卒業後に入学

奥村穂波さん・吉田有希子さん(2023年度・専門コース本科)

川島テキスタイルスクールの専門コースには、年代も背景もさまざまな人たちがそれぞれの目的を持って学びに来ています。2023年度の本科には、高校や大学を卒業してすぐに入学した人、勤めていた会社や組織を辞めて学びに来た人、スクールのワークショップやウィークエンドクラスを受けて専門コースに進んだ人たちが各々の人生のタイミングで来て、同じクラスで学んでいます。このほど本科生にインタビューし、入学の動機や、7カ月が経った変化や気づきなどについて語ってもらいました。3回シリーズの初回は、高校卒業後に入学した奥村穂波さんと、大学卒業後に来た吉田有希子さんへのインタビューです。

◆ここでしか学べないことがあるのかな、ビビッときた

——まずは入学の動機を教えてください。

奥村穂波:高校の美術の選択教科に染織があって、体験授業で見たウールがきれいだなと思って選びました。軽い気持ちで始めたのですが、2年目に羊毛から糸を紡いでマフラーをつくったのが楽しくて。羊毛の色が混ざる感じがきれいで好きだなと思っていました。進路を決める時期はまだ自分のやりたいことがわからなくて、食関係とかいろんな専門学校を見ていました。そしたらお母さんが川島テキスタイルスクールのことを教えてくれて、ホームページを見てブログを読んで、なんかビビッときたんです。高校の染織が楽しかったのが大きいと思うんですけど、自然に囲まれた環境が高校と似ていて雰囲気が良さそうで、実際に手を動かしてものをつくって、ここでしか学べないことがあるのかな、やってみようと思って受けました。

吉田有希子:大学は文学部で日本美術史を専攻していました。学芸員資格を取りたくて選んだのですが、就職は考えていなくて。テレビで久留米絣の特集番組を見て絣に興味を持って、卒論のテーマに選びました。ですが私は織物をやったことがなかったので、絣を調べるのに本を読んでもわからないことだらけで。つくってみたいな、つくれるようになったらわかるかなと思っていたところ、『染織と生活』という古い雑誌に川島テキスタイルスクールの広告が載ってたんです。こんな学校があるんだってお母さんに言ったら、お母さんが川島織物*のことを知ってて、ちょっとずつ興味を持っていって夏にオープンスクールに参加しました。京都だから街のイメージでいたら、(スクールの立地は)山に囲まれててびっくり(笑)。ですがその環境が、一つのことを集中して学ぶのにいいなと思って。座学じゃなく、実技を通して学んでいくところもいいなと思い、すぐに願書を出しました。

*川島テキスタイルスクールは、川島織物(現・株式会社川島織物セルコン)が1973年に創業130周年の記念事業で設立した学校。今年(2023年)で開校50年となる。

◆失敗しても「何とかなる」と思えるように

——入学して7カ月が経ちましたが、自身の変化を感じますか?

奥村:高校の染織の授業では、自分のやりたいようにやってみなっていう自由な感じで、細かいところまでは教わらなかったです。それで今つくったものを見返すと、撚りがすごく強いところとかがあるなって気づいて。この学校で専門的に学んでいくうちに、そういう(ものの)見方がわかるようになって知識がついたなと感じます。織り全体に関してそうですね。入学するまではリネンとか糸の種類の違いを全然知らなかったし、最初に組織織りや二重織りを見たときに何がどうなっているのか想像もつかなかったけど、いざやってみると構造がなんとなくわかってきて、テンションとか糸の扱い方もわかるようになってきました。(同じマフラーでも)ホームスパンの授業でつくったものと高校の時につくったものは、触り心地や柔らかさも全然違って、すごく成長したなって思います。

糸を紡ぐ奥村さん

吉田:4月に学校に入って、初めは大丈夫かなっていう時期がしばらくあったんです。道具の扱いとか、糸が絡まったり切れたりしたらこわいなとか、期限までに課題がほんとに終わるのかなって。だけど今は「何とかなる」と思えるようになりました。いろんな実習をやるなかで、失敗しても先生が助けてくださって解決策を知っていくうちに、そう思えるようになって。それで夏休み明けから、いろんなことがスムーズにできるようになっているのに気づいて、楽しさが大きくなっている感じがします。

奥村:「何とかなる」は私も思います。組織織りの実習で、天秤機で(糸を通すのに)綜絖の数が真ん中で余ったり足りなかったりすることがあって。全部糸を抜いてやり直さないといけないかなと思ったけど、先生の直し方を見て、そんな裏技があるんだ!と知れたり。みんな同じ失敗体験をしているのかな、失敗から(工夫して)裏技を(編み出して)何とかしていったのかなと思いました。(期限までに)出来上がるか不安だった課題も意外と何とかなったし。

吉田:「布を織る」の実習あたりから、楽しくなっていった気はします。織りながらみんなの織る音を聞いて、みんなのリズムはどんな感じかなと考えながら織ってました。リズムに乗れたらきれいに織れている感じがして、それが楽しかったです。

奥村:この半年の間でやってきた内容が濃厚すぎて、こんなにいっぱいつくったんだ、(過ぎてみれば)あっという間で日記を書いておけばよかったです。糸を紡ぐ時や織る時は無心になる。「布を織る」の時はずっと同じ作業(平織り)で長いこと(8mの長さ)織ってたから、ほんとに無で。どれだけ進んだかわかるように、1時間ごとに織った長さを測っていました。そしたら初日から織るスピードが3倍ぐらいに早くなっていって、目にみえて進んでいくのがわかるから心の安定にもなったし、そうしていつのまにか無心でやっていました。

◆もっと知りたい、わかるようになりたい

——これから修了展に向けて制作が始まります。いまどんな気持ちでしょうか。
奥村:個人制作では自分でコンセプトから考えないといけない。これまでの実習では課題があったんですけど、1から全部自分でつくり上げるとなると不安はあります。だけど自分の好きな雰囲気や好きなものから派生して、このモチーフでいきたいというのが決まった時はワクワクしました。だから楽しみもあります。

吉田:私は絣に興味を持ってこの学校に来て、修了制作でも絣の作品をつくります。じつは「絣基礎」の実習で失敗したんですけど、それはそれで面白いものができたんです。そこでもっと絣を知りたいと思いました。絣はけっこう制約があると思うんですけど、まだ私はそんなにわからなくて。先生とデザイン案をやりとりするなかで絣を使った制約のなかの表現の可能性を知り、私もいつか(デザインと絣の)仕組みをパッとわかるようになりたいです。絣は奥深いし、私はまだまだわかんないことだらけなので、もっと知りたい、わかるようになりたいと思っています。

経糸の絣を括る吉田さん

*2024年度専門コース本科・技術研修コースの入学願書の二次締切は12月15日です。コースに関する説明、学校見学は随時受け付けています。ホームページからお問い合わせください。

冨田潤先生工房見学

秋の課外研修として、冨田潤先生の工房を訪れました。参加したのは専門コースの本科(1年)と技術研修科の学生、そして留学生です。留学生のなかには、冨田先生の著書“Japanese Ikat Weaving” (1982年、Routledge Kegan & Paul)を持参した学生や、出身大学の図書館でその本を読んでいた学生もいて、冨田先生がいかに海外で知られているかがわかります。

訪れたのは京都の北西にある越畑。里山にある拠点をThe Villageと名付け、「染織でつながりながら暮らしを創造していく集合体として」活動を実践しておられる場です。当日は冨田先生の案内のもとギャラリーで作品を見て、アトリエを見学。アトリエではジャガードをドビー機に改造した機の仕組みの説明を受けて、染織家のホリノウチマヨさんからも制作中の作品のお話がありました。午後は住居のある古民家でDVDを鑑賞。冨田先生との交流やDVDの内容に、留学生の一人は制作のインスピレーションを受けた様子で、懸命にメモを取る姿もありました。

自然豊かな環境で、暮らしと仕事が一体となるありように、織りを通して心豊かに生きることを感じたひとときでもありました。

「自社製品に対する誇り」播州研修より 本科・Hさん

「日本のへそ」といわれる兵庫県西脇市を中心とした北播磨地域。そこは220年以上続く播州織の産地です。糸を染めて織る先染織物の国内有数の産地として、商品企画から染め、織り、加工までを一貫して行っています。専門コースでは産地研修として、西脇市郷土資料館を訪れて地域の風土や播州織の歴史を学び、植山織物株式会社と大城戸織布の工場を見学しました。


 去る 2023 年 9 ⽉ 15 ⽇、スクールからバスにゆられて約⼆時間半、播州織の主な産地である⻄脇市に到着しました。

 まずは⻄脇市郷⼟資料館にて、播州織の歴史について、学芸員の⽅に展⽰を⾒つつ講義いただきました。なかでも、⻄脇市を中⼼とする北播磨地域は江⼾時代、複数の藩の⾶地となっており、決まった領主がいなかったため統制がゆるく、地域に住む⼈々の⾃主性が保たれていたこと、またそれにより、明治になり幕藩体制が崩壊した後も、⾃⼰販路を持っていたため⼤きな影響を受けなかったことなどが、播州織という独⾃の⽂化産業が育まれた背景のひとつであるとのお話を聴き、とても興味深く感じました。
 また、展⽰を拝⾒した後には、播州織の古い⾒本帳が保管された⼀室にご案内いただきました。私が主に⾒せていただいた⾒本帳は昭和 33、34 年頃のもので、記された輸出先国の情報を⾒ると、ベネズエラなどのアフリカ諸国やオーストラリア、アメリカ、⾹港など世界各地へ輸出されていたことがうかがえる貴重な資料でした。輸出先の多様さに驚くと同時に、もしかして古い外国映画等で、知らず知らずのうちに播州織が使われた服を⽬にしていたのかも…と思うと感慨深かったです。

 次に植⼭織物株式会社にて、植⼭社⻑にレクチャーいただくとともに⼯場内を⾒学させていただきました。
 ⼯場では、シャトルによって緯⽷を⾶ばす有杼織機から、両側から緯⽷を受け渡すレピア式織機、空気で緯⽷を⾶ばすエアジェット織機まで⾒せていただきました。織るスピードは空気によるものが圧倒的に早いとのことでしたが、シャトルでゆっくり織る⽅が、布が柔らかく⾵合いが良くなるとご説明いただき、効率化が決して品質に結びつくわけではないものづくりの難しさを改めて感じました。
 さらに、綾織と平織の織り⽅や仕上げ時の加⼯の有無の差、また他国製との⽐較等による繊細な⾵合いの違いについて、布地を実際に触らせていただきながらうかがったお話からも、植⼭社⻑の品質への強いこだわりが伝わってきました。

 最後に訪問した⼤城⼾織布では、⼤城⼾社⻑が⾃⾝で改造されたジャガード織機の数々を、⾒せていただくのみならず、実際にスイッチを押して動かす等の経験もさせていただきました。
 また、先述の植⼭織物株式会社が、いわゆる播州織の特徴である分業制にてシャツ⽤の平織⽣地を主⼒としつつ、⼩ロット⽣産に移⾏しブランド化されている⼀⽅で、⼤城⼾織布ではさらに⼩さいロットで、駆け出しのファッションデザイナー等個⼈の細かい希望に応えて⽣産し直販されているため、⾒せていただいた⾒本地はどれも個性的で⾯⽩く、他にはない魅⼒を放っていました。
 ⼤城⼾社⻑や社員の⽅のお話には、現代では軽視されがちなものづくりの現場は決して楽ではないものの、⾯⽩いことをやっているという気概と熱量がこもっており、思わず引き込まれてしまいました。

 今回の⻄脇テキスタイル研修では、⽣産の体制や規模等が対照的な⼆社を訪問させていただき、⼤変勉強になりました。また、このように同じ播州織でも多様な⽣産の現場が今も発展し続けていることに、北播磨地域に根づく⾃主性という⾵⼟も垣間⾒たような気がしました。
 そして、どちらの会社も、時代の変化に対応しながら⾼い品質を保つという⼤変困難なことを継続されたうえで、⾃社製品に誇りをもって発信されていることが共通しており、とても感銘を受けました。私もものづくりの難しさにめげずに、⾃信のもてる作品を作りたいと気持ちが改まる思いです。

制作の先に:「一本の糸を撚り合わせるように」 綴織タペストリー「つなぐ」がスクールの寮に登場

専門コースの学生が制作した綴織タペストリー「つなぐ」が、このほどスクールの寮の1階正面に飾られました。「気持ち・経験・発想 一本の糸を撚り合わせるように、ものが生まれる」がコンセプト。昨年度の本科生(1年次)のグループ制作のうちの一作で、空間にフィットした色味やデザインに仕上がっています。

校舎と寮が建物内部の歩廊でつながっているスクールの環境は、学びと生活空間が一体となっています。タペストリーが飾られたのは、食堂に行ったり寮で生活したりするのに、学生たちが「いつも通る場所」。「川島テキスタイルスクールらしいものは何か」「この場所に置く意味は何か」を考えて、モチーフに選んだのは「糸」。本科の織りを中心とした実習で、シルクの極細の糸や手紡ぎのウール糸などいろいろな糸を扱うなかで、糸の構造に面白味を感じてデザインにしました。繊維を紡いで一本の糸ができるイメージと、この学校に人が集い、織り手が生まれる場のイメージ。グループメンバーの話し合いを通して、そんな異なる二つのイメージが「つながった」と言います。この感覚は、一年を通してスクールで織りに没頭している学生ならではと言えるでしょう。寮のこの場所に飾ることを前提に、壁に合う色を選び、微細な色の変化やバランスにもこだわってつくり上げた作品です。スクールに来られる際は、ぜひご覧ください。