スクールをつづる

制作の先に:「愛らしい佇まいに惹かれてタペストリーに」鶴屋吉信に学生の作品を展示

京都・西陣にある京菓匠「鶴屋吉信」本店@tsuruya.yoshinobu_wagashiに、今年も学生が制作したタペストリーが納められました。

専門コースでは、2年目の専攻科になると希望者は「店舗空間のためのテキスタイル制作」に取り組みます。新たに展示されたのは福田さん(2025年度専攻科、現創作科)の作品「つむぎうた」です。展示の後は、作者から鶴屋吉信の方にコンセプトや素材についてお伝えさせていただきました。

鶴屋吉信の焼き菓子 “紡ぎ詩” をテーマに制作しました。西陣織にちなんだというこのお菓子の素朴ながら愛らしい佇まいに惹かれ、和菓子を形作るような気持ちで形を織りだしました。自身が京都で織物を学んでいることや、西陣近くに店舗を構える鶴屋吉信だからこそ繭をモチーフにした和菓子があるということから始まり、箱詰めされた和菓子と蚕が繭を作るための小さな仕切り「まぶし」のイメージを掛け合わせてデザインし、素材には紙糸や生糸を使い、二重織や捺染の技法を用いて、タペストリーに仕立てました。

展示場所は、店内2階の茶寮への階段の踊り場。織物と土壁の質感の対比も相まって、しっくりと馴染んでいます。「鶴屋吉信」本店に行かれる際には、ぜひご覧ください。

スクールの窓から:「タペストリーで会話が成立する、お守りのような存在」 表現論・中平美紗子さん講義

 専門コース「表現論」の授業で、テキスタイル・アーティストの中平美紗子さんを講師に迎え、オーストラリアのメルボルンに制作滞在した経験を中心に話していただきました。「半分は計画どおり、半分は予想外の展開」だったという滞在について、終始生き生きとした様子で語られた時間でした。

◆タペストリーは世界共通
 作家、講師、レジデンス制作を軸に活動し、作家としては主に綴織タペストリーを制作、「個展をメインに作品を発表することを大事にしています」という中平さん。講義ではまず、出身地の高知県の土佐和紙を用いた初期の作品から、コロナ下で縞模様をモチーフとした制作に変化し、黄色ストライプの不定形のタペストリー制作に至る、これまでの変遷を説明されました。

 続いて2023年秋から1年間、ポーラ美術振興財団の海外研修員として渡豪した体験談へ。内容は制作活動をはじめ、現地で印象的だったアートの紹介、渡豪してから選出されたタペストリー工房でのアーティスト・イン・レジデンス経験、大規模な制作プロジェクトへの参加、それらの経験を通した自身の変化までが、ひとつながりに語られました。

「行ってみて最初は言葉も通じず、ホームシックにもなって大変でした。そんな中でも、タペストリーは見せたら会話が成立する。世界共通のコミュニケーション・ツールであり、私にとってはお守りのような存在だと思いました」

 そう締めくくった中平さんの言葉からは、タペストリーに対する深い思いが伝わってきました。

◆絵画との相違点も類似点も
 お話の後は、これまで制作した小作品やテストピースなどを見せてもらいました。実際に使った下図や資料とともに、「イメージを実現するために何が一番適しているのか、とにかく手を動かしながら」試行錯誤したプロセスや、「頭の中のイメージと下図と実物のギャップを少なくする」工夫などが具体的に話されました。

 学生たちは制作のヒントを探るように話を聞き、質問タイムに入ると、それぞれが中平さんの話の中で印象に残った部分を拾いながら発言。一人の学生は、タペストリーを絵画的か彫刻的かという観点から「どちらかといえば彫刻的」に追究してこられたところが印象に残った、と。対して中平さんは、「タペストリーじゃないとできないことって何だろう?とすごく関心があります。彫刻を一通り勉強し、次は絵画から生かせることがありそうだと思って、今は絵画の系譜を勉強し直しています。相違点も類似点も一通り把握した上で、今取り組んでいるテーマがあります」と情熱をにじませながら応答しました。

 探究心あふれる中平さんの姿勢に、3月の修了展に向けて動き出した学生たちも静かに響いた様子。「制作の悩みでも何でもいいですよ」と水を向けられると、「あれもこれもやりたいとなって一つに決められず、今自分が表現したものがわからない」と素直に打ち明ける学生も。中平さんは「今の様々な締切、環境や織機の条件に一番適して、ストレスにならないものを選び取る。やる/やらないと極端じゃなく、ちょっと可能性として置いておく。今後、長く表現活動を行っていくことを前提に、今は表現を模索する時期にして何でもやってみたらいい。条件と相談しながら、学校の施設を存分に使えるこの時期にできることに向かってみては、と思います」と寄り添うように話し、「すべてつながっていくので」とまっすぐに語りました。

 じつはオーストラリアで中平さんを受け入れたメンターの方は、約40年前、川島テキスタイルスクールの留学生だったそうです。「スクールに滞在した時のことを今でも鮮明に覚えていらして、リタイアした今もタペストリーを織ったり指導したりされています」と、スクールとのつながりも共有してくれました。

 中平さんを通じてタペストリーの“共通言語”としての頼もしさを感じ、つながりの奥行きを思えた授業でした。

〈中平美紗子さんプロフィール〉
なかひら・みさこ/高知県出身。京都を拠点に活動するタペストリーアーティスト。オーストラリアをはじめ、イギリス、フランス、アメリカなど国内外で作品を発表している。2023年度ポーラ美術振興財団海外研修員としてオーストラリア・メルボルンに1年間滞在、作品制作を行った。2017年、京都造形芸術大学大学院(現:京都芸術大学大学院)芸術研究科芸術専攻修士課程総合造形領域修了

instagram:@nakahira_misako

*中平さんは2021年「表現論」でもゲスト講師として来られました。授業リポート記事はこちら

制作の先に:「みんながほっと一息つくところ」 綴織タペストリー「こもれび」が寮に登場

専門コースの学生が制作した綴織タペストリー「こもれび」が、スクールの寮の2階に飾られました。昨年(2024年度)の本科生たちが修了制作のグループ課題として、場所に合わせてデザインし、手で織り上げた作品。静けさ漂う空間に調和した仕上がりです。

「陽のぬくもりや瞬き みんながほっと一息つくところ」がコンセプトの生活空間のためのタペストリー。このほど飾られたのは、吹き抜けの2階部分。窓越しの木々が緑の陰影となって写り込んでいる壁面にあります。作品は修了展でも展示されましたが、広い会場での展示とはまた違う、あるべき場所にやってきた、と建物空間に迎えられているかのようにフィットしています。

制作メンバーで寮に住む学生は「これまで夜間に廊下を通ると暗く感じていたのですが、タペストリーが飾られてからは夜でもこもれびが差しているようで雰囲気がやわらかくなったと感じます」とコメント。制作時は寮に、2年目の現在は通学しているメンバーは「下校時に寮に立ち寄ってタペストリーを見て帰ります。よく頑張ったなと思うんです」と今も制作の励みにしている様子。

光の瞬きも、奥行きのある緑色も互いに引き立て合うような、やわらかな空気感が漂う「こもれび」。「この学校で制作を頑張っているみんなの癒やしになればいいな」という学生たちの願いのもと、朝も昼も夜も、織りとともにある生活空間をやわらかく照らします。

修了生インタビュー:「織りは私の人生のアクセントというか衝撃」

 長年勤めた仕事を退職し、ウィークエンドクラスを1年受講後、織りを本格的に身につけたいと専門コースに入学したSさん。現代社会で生き、時間に追われて働いてきたところから、織りを学んでこれまでとはまったく違う価値観の世界を知ったといいます。修了を迎え、「本来の自分を取り戻せて、すごくほっこりしています」と穏やかに語るご本人の、専門コース2年間の歩みをインタビューでたどります。

◆私の力よりもちょっと上のところ、未知の世界へ

——いよいよ修了を迎えますが、専門コースの2年間で特に印象に残ったことはありますか。
 みんなの修了作品です。それぞれ頭の中にあるイメージが違って、自分のやり方で一生懸命形にしている。1枚の布ですが1枚の布だけじゃない、作品の後ろにある人間を感じるところに感動しました。

——このスクールには人生の転機に入学される人や、いろんな背景の人たちが集っていて、作るものにもその人が反映されるのではないかと思います。
 この学校で織りを学ぶ中で、布ってまさに生活そのものだなと感じることが多々あって。表現の要素が、単なる表現ではなく日々に基づいている表現というのかな、それに美しさが加わって。私は『枕草子』が好きで古典作品の中に描かれる美しい衣装から、織物に興味を持ちました。あの随筆には作者が日々の生活の中で見つけた美しいものたちが書き綴られていて、私たちが自分の好きなものを一枚の布で表現しようとすることに通じるように感じます。

——表現の要素についてもう少し聞かせてください。それはアートや自己表現とは違うということ?
 ちょっと違うと思います。学校ではデッサンの授業やデザインを学ぶ演習がある一方で会社(川島織物セルコン)の職人さんがされているような技術を学ぶ織実習もある。糸を紡いで織るという生活に根ざした昔からの土台があって、技術的な部分、芸術的というか新しい表現みたいな部分、と複数の要素があると思います。

——特にそう感じたのは何ですか?
 絣です。絣というと矢絣しか知らなかったんですけど、絣糸の使い方で表現が広がるとわかりました。糸を括って染めるのは、糸によって染め方も違うし、色の境目を括る感覚とか織の風合の感覚とかは技術と勘の部分です。デザインには芸術的な要素が入っていると思うんですけど、自分がやりたいイメージをそのまま絣で落としこもうとすると難しく、織物の経緯の規則性の中で考えながら整えていく。下絵や製図を描いて、理論的にこうできるはずと計画しても自分の技術が追いつかなかったり、糸の性質、織り機との相性、打ち込みの仕方でも変わったりして、自分の限界を超えて取り組んだ感じがします。

——自分の限界を超えて、というのは。
 失敗を繰り返して学び続け、1年目はできなかったことが2年目でできるようになったことも多いです。先生方がたくさん引き出しを持っておられて、こうしたらできると教えていただいて。ただ自分の技術がついていけるかのせめぎ合いで、私の力よりもちょっと上のところ、未知の世界をいっていました。周囲のあくなき美、いいものを追求する姿勢に刺激を受けて私もそこまで必死でたどり着こうとした。今の私の精一杯は出し切ったと思えます。その分しんどかったけど、できたわ!を積み重ねて織りにハマっていきましたね。織りというより絣にハマったのかな。

春が来た (2025)

◆うまくできた時はずしっと肚に落ちた

——個人制作では、絣を使った作品づくりに専念されていました。
 じつは絣は苦手でしたが、自分の中でよくわかっていなかったからわかりたいという気持ちがありました。1年目の修了作品はクラゲの足をモチーフにした経緯絣のタペストリーを制作しました。化学染料で薄い色を何色も染めたのですが、自分で色を出すのが楽しくて。それに絣糸を組み替えながら織って1つの布になるのが面白いと思ったんです。
 2年目の制作では春の野の花をモチーフにした作品を作るのに、綴か絣かどらがいいかを先生に相談し、絣の方がニュアンスが出るのではとアドバイスを受けて経緯絣のパネルにしました。天然染色で色にこだわるのが2年目のテーマだったので、先輩から引き継いだスクールのクサギや市原の葛も使って染めました。その次の作品では波の動きを経のずらし絣で表現したタペストリーにするのにも全て天然染色で染めましたが、絣は染色と相性がいいんじゃないかな。その頃には絣がこうしたらこうなると仕組みがわかってきて面白くなったのもあります。

——学びを深めてきた中、ご自身にとって織りとは何でしょうか?
 頭の中にあるものを形にして表現する面白さや、喜び、驚き(を与えてくれるもの)。制約の中でどうしたら表現できるかを考えるのが好きで、何もないところからイメージを思い描き、工夫しながら作ったものが綺麗な布として現れる。その布が自分の身近にあると楽しいし落ち着くし、自分に自信が持てる。そうやってハマり続けています。

WAVES (2025)

——前年のインタビューでは自分第一主義でいくと話していました。今はどうですか? 
 それはもはや普通になりました。夫がご飯を作れるようになって、帰ったらご飯ができている生活です。この2年間は自分のことしか考えてなく、自分第一主義を貫いた達成感もありますね。特に2年目の専攻科はすごく濃かったです。

——専攻科の何が濃かったですか。
 制作の大変さが少しはわかった気がします。時間との戦いの中、自分がこだわる美しさをどうやったら今の技量で出せるかを考え詰め、落とし込むまでがしんどくて。デザインも最初まとまらず、できるか?と常に自分と向き合って、やめた方がええな、やっぱりここは入れたい、入れたら○本括るの増えるな、でも絶対ここは譲れへん、みたいなせめぎ合いでしたね。制作中もうまくいくか不安でしたが、できた時はずしっと肚に落ちた。不安が回収でき、これでよかったんやと確かなものを得た感覚がありました。

◆織りを通して自分と向き合い、せめぎ合って人間の幅が広がった

——制作を通して、ご自身の変化もあったのでしょうか。
 何に対しても寄り添う気持ちが少しは出てきたように思います。働いていた頃は「早く・大きく・はっきりと」みたいなスタンスでした。現代社会の中に生きていましたから。ですが、ここで学んだ織りは全く違う世界でした。

——どう違いましたか? 
 織りは1ミリ何本の世界じゃないですか。今までざっくり5ミリぐらいで生きてたのに(笑)。糸の扱いも、癖や向きがあるのに無理に自分の思うようにやろうとしてもうまくいかないけど、向きや流れを見てこの人(糸)はどうしたいんやろと考えながらやると、糸が綺麗に揃ったり結べたりすると少しずつわかってきて。これまでとは全く違うものの見方を得て、ややこしいことでも今は一息置いてどうしたらいいのかと考えたり、1ミリのずれを合わそうとする丁寧さを少しは得たかな。でもそれは前の仕事の世界でも実はとても大切なことだったなと思います。

——この現代社会で丁寧に生きるって、本当に大変なことだと思います。
 そうなんですよ、これまで時間に追われて生きてきたので。結局、周りに急かされたり渦に巻かれたりする中で流されて生きてたんやなと今ならわかります。織りを通して自分と向き合い、せめぎ合いながら、少しは人間の幅が広がった感じはします。

——修了を迎えた今、晴れやかな表情されています。
 大満足です。やっぱりこの現代社会の中で生きていた時に、いろんなことがもつれたまま進んで、それがここでほぐれた感じがあります。それは手仕事、手を動かすところから来ているんじゃないかな。

——手を実際に動かしながら、自分もほぐしていけたんですね。
 ほぐしながら自分の好きなものがわかりました。やっぱり綺麗なものが好きやなって。何に綺麗だと思うか、綺麗だと思うものをどう表現するか、どうしたらうまくいくかをじっくり考えて形にしていくプロセスから、本来の自分を取り戻せて、今すごくほっこりしています。

——これから織りをどう続けていきたいですか。
 やっぱり綺麗な布を作りたいです。暖簾とかマットとか私なりの綺麗なものを暮らしの中に取り入れていきたいです。織りは私の人生のアクセント、というか衝撃となりました。もう夢を追うような歳じゃない。だけど去年より今年の方がいろんなことができるようになっているし、小さな可能性から人生を楽しむことはできる、また新しい喜びをつかんでいける、と今は思えます。

修了生インタビュー: 「織りが自分の人生に近い存在に」

「テキスタイルが好き」という気持ちをあたため続け、仕事を辞めて2022年に専門コースに入学したS・Hさん。未経験から織りを学び、スクールの3年間で自分の作風を大切にしながら作品制作に励み、ずっと好きだったテキスタイルブランドに就職しました。「人生の方向性が変わって良かったと思います」と、修了時に清々しい表情で語ったS・Hさんのインタビューです。

On my way (2025)

◆綴織で絵本、私らしいものができると思った

——まずはさかのぼって、入学の経緯を教えてください。
子どもの頃アメリカに住んでいて、帰国後は高校の2年間をインターナショナルスクールに行っていました。当時はテキスタイルやファイバーアートに興味があって、卒業後の進路を先生に相談した時に川島テキスタイルスクールのパンフレットを見せてくれました。オーストラリア出身の美術の先生だったのですが、川島に進学した卒業生がいて知っていたそうです。当時は結局、国際関係の大学に進んで就職したのですが、輸出入の仕事をしていた時期、コロナの影響で仕事がすごく減ってしまって。テキスタイルへの思いはずっとあったので、このタイミングで専門的に学ぼうと川島に引き寄せられたんです。そこから人生の方向性が変わって、それは良かったと思います。

——最初から専門コースに3年行こうと決めていたのですか?
せっかく織りを学ぶからには作品をつくりたくて、2年は行こうと思っていました。この学校のようにいろんな種類の機を使ったり、設備の整った染色室で染めたりできる環境はなかなかないので、ここで作品をつくってきちんとしたポートフォリオを作るという目標ができて3年目に進みました。私は色を生かした表現が好きなので、いろんな色の糸をたくさん使って、綺麗だなと思うものに色々触れられたのは贅沢だったと思います。

Bright (2023)


——3年間で印象的なことはありましたか。
私は全く織り経験がない初心者で、手先が器用でもないので、1年目はずっと挑戦の連続でした。皆で一緒にやる実習が多くて、周りの器用な方とつい比べてしまったりして気持ちに余裕がなかったです。でも1年目のいろんな織り実習を通して、自分の向き不向きが何となくわかったというか。絵のような光景のようなデザインを考えるのが私は向いていると思ったので、綴織の技法が合ってるのかなと。綴織で私らしいものができると思い、1年目の個人制作では綴織の絵本をつくりました。修了展で作品を見た方々から、気に入ったとかポジティブな感想をいただけて、自分に少し自信が持てるようになりました。大変でしたが何とか乗り越えたと思えるので、1年目が印象的です。

◆京都の街を歩きながら発見したものをモチーフに

——2年目、3年目はどうでしたか?
制作スケジュールを立てて自分のペースで進められる分、私はやりやすくなりました。授業で捺染絣とダマスク織りを新しく学び、先生のアドバイスで2つを組み合せた技法で作品をつくってみたら面白くて。それで3年目も前年の作品と連作で、2つの技法を融合させて作品をつくりました。モチーフは京都の街を歩きながら発見した格子窓や銭湯の湯気、会話、行灯など。これまで京都のように古い町家がある街に住んだことがなかったので、街歩きも楽しかったし、考えついたアイデアをつくることで試していけるのもやりがいがありました。修了制作でも今まで学んだ技法を取り入れて、自分の作風を出した作品がつくれたのではないかと思っています。

左:A Conversation / 右:Bath Time (2024)

——在学中は留学生とも交流されていました。
留学生の作品は年によって作風も違って、今年(2024年度秋コース)の方はインテリアっぽい作品が多く、前年の方々は芸術的でメッセージ性のある作品をつくられている方が多い印象でした。それぞれ全く違う作風に触れ、こんな表現があるんだと触発されましたね。みんなで一緒に出かけたこともあって楽しかったです。学校では先生方がFikaを開いてくれて、焼き芋やおやつを食べながらみんなで話したり、スウェーデンの交換留学から戻ってきた先輩の話も聞けたりして、いい思い出です。

◆織りをもっと近くに感じてほしい

——スクールでの3年を経て、好きなテキスタイルブランドに就職が決まりました。どんなお仕事に就くのでしょうか。
インテリアの営業や商品の仕入れ、海外からの輸入や、ポップアップショップの企画や運営など、インテリア関係に幅広く関わるみたいです。まずはアシスタントとして経験を積んでいく予定です。

——修了生は職人の道に進む人もいれば、テキスタイル関係でも就く仕事の幅が結構広いのですが、進路は自分で納得していますか。
そうですね。自分が向いているのはつくる側の人よりも、アイデアを考えたり企画を立てる方だなと思って仕事を探しました。就職先のブランドもテキスタイルに興味を持ち始めた高校の時に知って、素敵だなとずっと思っていたので。

——インタビューの初めに、人生の方向性が変わったと話されましたが、この3年間、作品をつくることで新しい自分を形成していった印象も受けました。ご自身にとって織りとは何でしょう?
今まではただ、こういう布が好きだなと考えていたものが、実際につくれるようになって関係が近くなったというか、より自分の人生に近い存在になりました。テキスタイルは日常との近さがいいなと思うんです。インテリアでもクッションやカーテン、タオルもテキスタイルですし。他の表現方法もありますが、近いけど特別な存在を表現するにはやっぱりテキスタイルの温かみがいいなと。そこには織りをもっと近くに感じてほしいという思いがあります。

——織りを身近に感じてほしいという思いで、作品をつくってきた?
いいなとか面白いなと思ったものを取り入れて、作品として見てもらう。そうやって自分の思いを伝えるための方法ではあるんですけど、距離としては身近なものであってほしい。もちろん伝統工芸としても大切にされてほしいですが、そこに行くまでの敷居が高いな、それだけだと世界が狭まっちゃうかなと思うので。けれど日常にあるものだと割と大量生産が多くて、あまりありがたみを感じないというか。織物はつくるのがすごく大変で、時間もかかるし途方もないんですけど、入学する前の私のような織りを知らない人にも、どうやってできているんだろうとか興味のきっかけになるような織物ができたら楽しいなと思って、取り組んできました。

——自分の思いと、見た人がどう思うかの両面を大事にしている。
私は人のことを気にしすぎるって昔から言われます。人からどう見えるかと自分の視点って全く違うので、そこは怖くもあり面白くもある。(性格的に)よくないとされる部分でも、いろいろ気にしてるから観察する部分もあるし。そこを意識して作った方が自分なりにどういう作品になってほしいかという方向性が見い出せるので、作品づくりには生かせているのかもしれない。だからそういうところもテキスタイルに助けられています。

——これからも働きながら、ご自分でもつくり続けたいですか。
可能ならつくり続けたいです。そのためには時間のやりくりと環境が必要ですね。アイデアはあります。

制作の先に:「『楽しい』を合言葉に」 綴織タペストリー「オコメ・ワンダーランド」が食堂に登場

専門コースの学生が制作した綴織タペストリー「オコメ・ワンダーランド」が、スクールの食堂に飾られました。昨年(2024年度)の本科の学生たちが、場所に合わせてデザイン・制作した作品で、食堂を使う人たちからは「空間が明るくなった」と好評です。

「さらさら そよそよ 色々な音に耳をすませて 一粒のオコメからはじまる旅にでかけよう」というコンセプトのもと、食のめぐりを織りで描いたタペストリー。

「制作中はずっと『楽しい』を合言葉に、自分たちも楽しんで織っていました。大変でしたが、一つの大きな作品をみんなでつくった経験は楽しかったです」と制作メンバーの一人は朗らかに話します。「タペストリーが食堂に飾られてからは、タペストリーのある明るい方に面して食事するようになりました。ワークショップで来られた方々もタペストリーを見ながら食事する人が増えた気がします。そうやって見てくれる人を見るのも楽しいですね」。普段使っている場所だからこそ、タペストリーの効果を実感している様子。

食堂スタッフは「大きさに迫力がありますね」「淡く明るい色合いで、食堂に来られる皆さんに柔らかい気持ちで過ごしていただけるのではないかと思います」とコメント。

楽しさあふれる作品が、織りに打ち込む学生たちのリフレッシュ時間を彩ります。

「第8回学生選抜展」受賞のお知らせ

日本新工芸家連盟主催特別企画「第8回学生選抜展」で、技術研修コースの王今さんの綴織タペストリー「Memory」が田中直染料店賞を受賞しました。

「Memory」

選抜展では他にも、創作科の日岡聡美さんの綴織タペストリー「on my way」も展示されます。

第8回「学生選抜展」は第47回「日本新工芸展」の巡回展に伴って全国三都市で開かれ、受賞作品「Memory」は三都市全て、出品作品「on my way」はそのうち東京と京都で展示予定です。ぜひご覧ください。

東京本展:5月12日(月)~18日(日)東京都美術館
東海展:6月21日(土)~29日(日)松坂屋美術館(名古屋)
近畿展:7月1日(火)~6日(日)京都市京セラ美術館

日本新工芸家連盟