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2026年スウェーデン留学記1 創作科 福田葉月

専門コース3年目の創作科では、希望者は選考を受けた上で、提携校であるスウェーデンのテキスタイルの伝統校 Handarbetets Vänner Skola(HV Skola)へ最長3ヶ月の交換留学をすることができます。

9月から留学中の福田葉月さんから初回の近況報告が届きました。福田さんは11月まで、ダマスク織りや刺繍などの授業に参加します。


等間隔のカモメ。とても北欧っぽい。

9月も終わりを迎え、到着時はまだまだ夏の気配が残っていたストックホルムもぐんと肌寒くなってきました。水辺は特に冷たい風が吹いて来ます。

HVへの登校初日、集合場所は学校正面の中庭でした。生徒たちが輪になり、担当の先生から順番に名前を呼ばれます。そこでクラスメイト5名と初めて対面しました。少人数のクラスだったため、すぐに全員の顔と名前を覚えることができました。

授業は昨年と同様ダマスク織から。ダマスク織の授業のみ、スクールのワークショップのような形で一般の3名が加わり、合計9名で授業を受けています。皆笑顔がとても可愛らしい、優しい人たちばかりです!

私は日常で使える物を作りたいと思い、ウールの糸を使って膝掛けを作ることにしました。2人で1台の機を使う為、経糸の色を決める必要があり、初めは無難な生成りやベージュを検討しましたが、ペアのクラスメイトが、それではつまらないからこっちの色は?と提案してくれた暖色の糸に決めました。自分では思いつかなかった選択肢をくれたお陰で、最終的にこの色から思いついたイメージを基にデザインを決めました。

糸がスムーズに出るようにボタンの穴を活用。手仕事の小さな知恵が素敵。

その糸で初めてスウェーデン式の整経をしました。話に聞いていた通り、回すタイプの道具でとても新鮮でした。機の準備の方法や部品等もスクールで使用してきたものとは所々違っていて、楽しんでいる間に終わってしまい残念なくらい。それも、わかりやすく説明してくれる先生やクラスメイトのお陰です。

織り始めてからも、後ろの綜絖に吊るした重りが筬打ちの度にシャラシャラとぶつかり合う音や、クラスメイトが口ずさむ歌(皆結構歌っている)に包まれているうちに、自然と肩の力も抜けていき、あっという間に時間が過ぎて行きました。

計画に沿ってハンドルを引き下げる時も音が鳴る。

織りに関することだけでなく、様々なことに触れさせてもらっています。中でも、2学年合同で行われている水彩画材を用いたペインティングの授業は毎回沢山の発見があります。

HVの周りを歩いて見つけた色をスケッチブックの上に再現してみたり、他学年の学生とペアになってお互いを描き合った時には、屋外や屋内、光や背景の違いで色の見え方が変化することを実感しました。他の学生の色彩感覚や着眼点からも学ぶことが多く、とても有意義な時間です。初回授業後の帰り道は、朝と同じ道なのに、行きには気が付いていなかった色が見つかり、この新鮮な感覚を忘れないようにしたいと思いました。

HVがあるユールゴーデン島に続く橋から。曇天だった1日の終わりに見られた色。

水の都と呼ばれるだけあって、街を取り囲む水上には驚くほど沢山の船が揺れています。以前留学した先輩のレポートにもありましたが、通勤や通学に船を利用する人も多くいます。先日は、テキスタイル史の授業で、公共フェリーに乗って学校の対岸にある近代美術館へ行ってきました。あまりにもスムーズに動き出したので、出発したことに気が付かないほどでした。

鑑賞したのは、アンナ・キャスパーソンというスウェーデンの刺繍作家の展示で、レースや貝殻、大ぶりのガラスなどがふんだんにあしらわれた、一つ一つの作品に膨大な時間を費やしただろうと思われる大作ばかり。しかも、それらの作品はどれも自宅で実際に使われていたそうで、自分の世界をとことん詰め込んだ作品に囲まれた暮らしは、彼女にとってどれほど満ち足りた物だったことだろうと想像しました。そして、きっと大豪邸だったに違いない、とも。

印象的な交通事情は陸上にも。大きな通りだと両側にそれぞれ歩道と自転車用道路があり、自動車用道路にトラムの線路まであって、どれもゆったりしています。絵本の様な石造りの街並みの中には、信号のない横断歩道も多いのですが、立ち止まると自動車は(今のところ)100%止まってくれるので、気持ちのゆとりもすごい。電動キックボードや自転車の数も多いけれど、道がしっかり分けられているので安心だし、自転車の人々は皆ちゃんと手信号を出してスマートに曲がっていきます。どれもこれも、現地の人にとっては当たり前なのですが、決まりを守る意識が高くて関心します。

バスとトラムは同じ道、馬は自動車の道を走る。

とても書ききれませんが、他にも驚いたことや焦ったこと、感激したことなど、とても感情が忙しい1ヶ月でした。英語が堪能ではないので、伝えたいことにぴったりの表現が出てこないこともしばしば。それでも根気よく聞いてくれる先生やクラスメイトには本当に感謝の気持ちしかありません。

自分の製作アプローチについてこれまでと比較して考えることも多いです。例えば、ダマスク織のデザインの時、先生から一つ目のアイデアを修正して完璧にしようと思うのではなく、いくつものアイデアを出していく過程で良いものを生み出せるよと助言をもらって、それまでの自分がつまずきがちな部分に気が付きました。正解のないことですが、この機会に色々な方法を模索してみようと思います。

ダマスク織が終わると、次はアートソーイングの作品製作が始まります。今はデザインと試作の段階。クラスメイトが色々と助言してくれるのも嬉しくありがたいです。
学生同士でお互いに意見を交換し合うことが当たり前で、相手の意見を尊重しつつも、どんな風に感じるかや知っている知識を自然に伝え合う光景がよく見られます。

残りの日々も、自分らしさを活かしつつ、柔軟な姿勢で取り組みたいです。

展覧会のお知らせ:スウェーデン・テキスタイル展

4月4日より西宮市大谷記念美術館(兵庫)でスウェーデン・テキスタイル展が開催されます。当スクールとHandarbetets Vänner Skolaとの交換留学プログラムのことをご紹介いただいており、当スクールスタッフ、萩原沙季が昨年秋留学中に制作した作品を出展しています。

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スウェーデン・テキスタイル展
暮らしと自然に息づく北欧デザイン

日程:2026年4月4日(土)〜6月28日(日)
休館日:水曜日
※ただし4月29日(水・祝)、5月6日(水・振休)は開館、4月30日(木)、5月7日(木)は振替休館
時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:西宮市大谷記念美術館(兵庫)

巡廻予定:
2026年7月11日(土)〜9月6日(日)名古屋市美術館
2026年9月19日(土)〜11月15日(日)世田谷美術館 ※当スクールの校舎・寮を設計した内井昭蔵氏設計

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これまでの交換留学生によるマンスリーレポートはブログ「交換留学」より読むことができますので、ぜひご覧ください。

スウェーデン留学記3 創作科 萩原沙季

専門コース3年目の創作科では、希望者は選考を受けた上で、提携校であるスウェーデンのテキスタイルの伝統校 Handarbetets Vänner Skolaへ最長3カ月の交換留学をすることができます。

9月からの3カ月間、留学していた萩原沙季さんの3回目の報告です。萩原さんは11月末まで、ダマスク織りや刺繍などの授業に参加しました。

初雪が積もった日

ついに最後のレポートになってしまいました。留学最終月となる11月は、しばらくすると急に冷え込み、後半に入ると初雪が降りました。雪にうっすらと包まれたストックホルムの街は、冬の澄んだ空気と、あまり高くは昇らない太陽のやわらかな光のなかで、静かに佇んでいました。

先月末に取り組んだアートソーイングについて、Backstageカフェで展示がありました。個性豊かな作品たちがKatarina先生により色やインテリアとの相性など絶妙なバランスで配置され、とても楽しい展示になりました。

カフェでの展示

また、9月に織ったダマスク織の作品についても、学校の刺繍教室のウィンドウを使って、3〜4作ずつ週替わりで簡単な展示がありました。このように、作品がカフェや路面ウィンドウなどで学外の方の目にも触れる機会があるとは想定しておらず、感無量でした。

学校のウィンドウでの展示

11月からは自由制作の予定だったのですが、タイミングが良かったのか、グループ制作のデザインを行う3日間の授業にも思いがけず参加することができました。HVの最終学年(HTU2)には、学内を飾るテキスタイルをElisabeth先生とクラス全員で織るプロジェクトがあり、今年の課題はキッチン(食堂)の窓際にかけるカーテンでした。そのデザイン案をクラス全員で作り上げていくプロセスは、とても刺激的でエキサイティングな体験だったので、少し詳しくレポートしたいと思います。

デザイン1・2日目は、担当のLinnea先生の指導のもと、カーテンの目的等について意見を出し合った後、3つのグループに分かれて各自デザイン案を作成しました。次に、その案を記名はせずに隣のグループに渡した後、もう一方のグループから渡されたデザイン案から好きなものを選び、折ったり切り貼りしたり、色を変えたり、新たに模様を足したり…など、自由にアレンジを加えていきます。このようなアレンジの作業を数回行います。

2日間かけてできた膨大なデザイン案の一部

最終日は、デザイン案全てから、各自推し案を一つだけ(自分が関わったものでもそうでなくても)自由に選び、分担して作ったキッチンの模型を使ってプレゼンを行います。そして最後に、翌週Minna校長先生とElisabeth先生を相手に最終プレゼンを行う3案を絞りこむため、一人3票で投票を行います。今回は投票を2回行っても票が分れ、最後には一人1票で決選投票を行うことになるという、手に汗握るドラマチックな展開になりました。

このようなデザインの過程で面白かったのは、各自の案が、アレンジを加えられることで発展していく様子を目の当たりにできたことです。とりわけ自分の簡単なスケッチが、クラスメイトたちのセンスにより、原案から想像できない完成度のデザインに変身していたのには驚嘆しました。グループで制作することの醍醐味を味わえた貴重な体験だったと思っています。

自由制作のようす

自由制作では、織物理論の授業で経糸によるモンクスベルトを初めて知ったので、スウェーデンで目にした秋の紅葉をテーマに挑戦してみることにしました。とても良い出来とはいえませんが、一人で作業するなかで失敗や試行錯誤をすることで、HVの整経の仕方や、織組織の仕組みなどをしっかり身につけることができたと感じています。

また、様々な組織を学べる理論の授業もとても楽しかったのですが、理解できたというには程遠いため、日本で少しずつ復習して実際に織ってみるという目標もできました。

なお、11月には、Lisa先生によるテキスタイルヒストリーの授業の、ストックホルム市庁舎とウプサラ大聖堂の見学にも参加することができました。

特にウプサラ大聖堂の見学では、大聖堂のなかに近現代の手織による作品が装飾として少なからず使われていることに驚きました。大聖堂建築の古典的な様式に、モダンなテキスタイルが見事に調和していて、大変興味深かったです。

ウプサラ大聖堂のテキスタイル

約3カ月の交換留学は文字通りあっという間で、帰国してしまった今振り返ると、まるで夢だったように感じます。それくらい私にとって、何よりも変え難い、幸せで宝物のような時間でした。そして、それは出発前からサポートして下さったKTSの先生方や事務の方々、そしてあたたかく迎えて下さったHVの先生方やクラスメイトたち、ミニハウスを貸して下さった大家さんのおかげに他なりません。心から感謝しています。

HVは、手織や刺繍等の手工芸技術を学べる世界でも有数の学校であり、先生方も学生も優秀であるだけではなく、熱心で、ひたむきです。その一員として少しの間でも過ごせたことは本当に光栄なことであり、同時にあまりにもたくさんのことを学ぶことができました。

それを一言で説明することは難しいのですが、あえていうなら「表現することを恐れない、そして妥協しない」ことだと思います。

デザインのアイデアが出てこず悩んでいたとき、Elisabeth先生が何気なくかけてくれた「最初から完璧を目指さなくていいんですよ」という言葉にはハッとさせられました。私は自信がないあまり、いつのまにかもっと上手くやらなければダメだと勝手に思い込んでいたのだと思います。これからは気楽に肩の力を抜いて、アウトプットを習慣にしたいと思っています。

そして「妥協しない」姿勢は、クラスメイトたちから学びました。どの課題でも、みんな仕事や家庭で多忙であるにも関わらず、決して諦めることなく、やりたいことはすべて、裏の見えないところまで美しく丁寧にかつ期限内に仕上げていました。これは精神的にも体力的にも極めて難しいことで、時間が迫ってきても落ち着いて作業していた彼女たちには尊敬の念しかありません。

当初はクラスメイトたちと自分をつい比べてしまい、落ち込むことも少なくありませんでした。でも、頂上が見えなければ山は登れません。これからはHVで学んだことを糧にして、少しずつ登っていきたいと思っています。

スクールでの留学報告会
授業や作品展示の様子を紹介したいと思い準備しました。交換留学の楽しさが少しでも伝わっていたら幸いです。

*現在、川島テキスタイルスクールでは2026年度の各コースの願書受付中です。専門コース本科・技術研修コース(日本語)の三次締切は3月6日、マンスリーコースの締切は2月13日です。

スウェーデン留学記2 創作科 萩原沙季

専門コース3年目の創作科では、希望者は選考を受けた上で、提携校であるスウェーデンのテキスタイルの伝統校 Handarbetets Vänner Skola(HV Skola)へ最長3ヶ月の交換留学をすることができます。

9月から留学中の萩原沙季さんから2回目の近況報告が届きました。萩原さんは11月末まで、ダマスク織りや刺繍などの授業に参加します。


学校からトラムですぐのプリンス・エウシェン美術館の庭

10 月も瞬く間に過ぎてしまいました。今年のストックホルムの秋は例年より暖かいようで、よいお天 気が続き、紅葉がとても美しかったです。一方で日がどんどん短くなり、最終週の日曜日にはサマータ イムも遂に終わってしまい、16 時頃には外が薄暗くなっています。

授業では、10 月の初めにはダマスク織の作品が完成し、最後に発表会がありました。いわゆる講評会とは主旨が異なるもののようで、まず作品だけではなく、アイディアを練る段階のスケッチや参考写真 なども壁やボードに貼り付けて準備をしました。発表の持ち時間は 30 分間で、デザインの着想をどの ように得たかという所から、作業を進める上でぶつかった問題点とそれをどのように克服したか、そし て織り終えた後の反省点や感想まで、正直に説明します。その後の質疑応答では、いいなと感じた点を ほめたり、反省点についてフォローするなど、みんなポジティブな反応をしているのが印象的でした。

自分の発表は緊張しましたが、クラスメイトたちの作品は完成度が高いだけではなく、とても個性豊かで見ているだけでも楽しかったです。さらに、それぞれがアイディアスケッチからデザインに発展さ せていく過程を共有できたことも、大変勉強になりました。

同じダマスクという技法を使っていても、素材や色の選択などによって生まれる表現が全く異なるこ とを改めて実感し、自分でもまた織ってみたいなと思いました。

アートソーイングのインスピレーションを得たGröna Lundの乗り物

ダマスク織の発表会が終わるとすぐにアートソーイングの授業(制作)が本格的に始まりました。技法も素材も自由であるがゆえに自分で決めなければいけないことが多く、デザイン上の制約があるダマスク織とはまた違った難しさがあります。

授業ではデザインする時間はとられていなかったため、事前に担当のカタリーナ先生とミーティングをするなど、ダマスクと並行しつつ各自デザインを進めておく必要があり、なかなか大変でした。試行錯誤の結果、私は布にタックを寄せてからステッチをかける技法をベースに、ウールとシルクの生地を使って、遊園地の乗り物が回転する様子と、園内の至る所でみられた電球による装飾を表現することに決めました。

アートソーイングの作業のようす

アートソーイングの授業で取り組んだ作品は、11月にGröna Lundの横にあるカフェBackstage で展示されます。1m四方相当の大画面をひたすら「縫う」ことで構築することは、予想以上に技術と時間が必要でした。作業に当てられた期間は約2週間しかなく、クラス全員が疲弊しつつも、それぞれのこだわりが詰まった面白い作品ができてきています!

展示するカフェにて、Fikaを兼ねたクラスミーティング

なお、10月1〜5日は、ストックホルムのクラフトウィークでした。HVのギャラリーでは、卒業生でKTSにも留学されたことがあるEmma Holmgrenさん、Katja Beckman Ojalaさんの作品と、クラスメイトたちが昨年度制作したラグの展示がありました。また、自習時間を活用してクラスメイトたちと市内の各地で行われていた展示会を訪れ、様々な作家の作品を観てまわることができ、とても興味深かったです。

エリザベート・ハッセルベリ・オルソン『風景の記憶』

10月後半には、週末にスウェーデン国会議事堂の英語によるガイドツアーに参加し、本会議場正面にかかるタペストリーを目にすることができました。エリザベート・ハッセルベリ・オルソンの原画を元にHVの工房で織られたものですが、スウェーデン各地で生産された素材が使われているとクラスメイトたちから教えてもらいました。ガイドツアーでも、議員たちは所属政党ごとではなく、選出された地域ごとに座ると説明があり、きっと様々な意味でスウェーデンを象徴する作品であること、そしてそれが手で織られたものである意義について考えると、感慨深いものがありました。

余談ですが、このガイドツアーに参加しようと国会議事堂前の列に並んだ際、前にいた中学生くらいの子たちが「これは次のスウェーデン語のツアーの列で、英語のツアーはもう中に入ってるよ」とすぐに教えてくれました。スウェーデンの人たちは外国人に対しても親切だなと感じたエピソードの一つです。

2か月をHVで学んで感じるのは、私がいるのが最終学年だからかもしれませんが、授業内容がとても実践的であることです。学んだ技術を基に自分で新たな表現を生み出すこと、さらにはクリエイターとして経済的にも利益を得ていくことを最終的な目標として、先生方も学生も意識していると感じます。

例えば、今回作品を学外で展示するにあたり、会場側との同意書を読み比べて議論する時間がありました。また、作業にかかった時間は細かく記録しておくこと、そうすれば注文がきた際に納期を答えられるから、と先生から教えられました。

なお、HVの学生が制作した作品を展示する際は、希望者は売値をつけることが可能です。それは作品が自己満足にとどまらず、社会的にも価値があるものとして表明することになると思います。学生である段階からそのことを意識することで、制作に対する姿勢も確実に変わってくるようです。私も今後はそのことを意識しつつ、制作と向き合っていきたいです。

スウェーデン留学記1 創作科 萩原沙季

専門コース3年目の創作科では、希望者は選考を受けた上で、提携校であるスウェーデンのテキスタイルの伝統校 Handarbetets Vänner Skola(HV Skola)へ最長3ヶ月の交換留学をすることができます。

9月から留学中の萩原沙季さんから初回の近況報告が届きました。萩原さんは11月まで、ダマスク織りや刺繍などの授業に参加します。


週末に登ったストックホルム市庁舎のタワーから、学校がある方角の眺め

スウェーデンに無事到着し、9月から学校が始まってあっとういう間に4週間が経ちました。最初は英会話さえ不安なこともあり、とても緊張していたのですが、クラスメイトたちも先生方もみんな親切でやさしく、穏やかな方たちばかりなので、今ではすっかり安心して楽しく毎日を過ごしています。
クラスメイトのルーツがスウェーデンだけではなく、他国からの留学生がいることもあって、授業でも先生方がスウェーデン語の後に必ず英語で説明してくださったり、誰かがすぐに気がついて訳してくれたりします。もちろん質問をするとすぐに答えてくれますし、幸運なことに日本人のクラスメイトもいるので、情報交換もできて本当に助かっています。また、資料がウェブ上のシステムで共有されているため、授業でよくわからなかったことがあっても後で確認できます。

制作のモチーフになっているGröna Lund

授業ではまずダマスク織、続いてアートソーイング(刺繍などの技術を使って1m四方の作品を作る)に取り組むのですが、今年はどちらもGröna Lundという学校のすぐそばにある遊園地からアイディアを練ることになっています。はじめに見学に行った後、撮った写真やスケッチなどを元に各自でデザインを進める授業もありました。
ダマスク織の授業では、その仕組みを講義で学びつつ、経巻きや綜絖通しをしてからダマスクの装置を設置するなどの準備作業を経て、4週目からやっと織り始めました。

機の中に座ってパターンの綜絖に経糸を通しているところ。
ダマスク織の仕組み上、綜絖通しを二回します!

ダマスク織は2人で1つの機を使うことになっており、ペアになったクラスメイトと相談の結果、経糸は太めのウールの糸、緯糸はシルクで織ることになりました。最初に織るのは私だったため、ちょうど織り終わったところです。不慣れなこともあってたくさん失敗しましたが、先生やクラスメイトがフォローしてくれて、なんとか終えることができました。

ダマスク装置で織っているところ。
綜絖枠が2種類あります(踏木に繋がっている4枚と、後ろにあるパターン用の21枚)

住まいは、同じHVの学生が親切にもストックホルム郊外の自宅の庭にあるミニハウスを貸してくれています。たいへん居心地がよいうえ、キッチンやシャワー、トイレが完備されていて、贅沢すぎるほどです。時間があう日は一緒に登校して、お互いの授業を報告しあっています。
学校へは地下鉄のブルーラインでストックホルムの王立公園駅まで行き、そこからトラム(路上電車)に乗り継いで通っています。トラムは学校のすぐ前に駅があり便利なのですが、初週に何かのトラブルでその日の電車が全てキャンセルになるというハプニングがありました。こういった情報はアプリで得られるものの、まだ見方がよくわかっていませんでした。幸い時間に余裕があり、天気もよかったため、結果として美しい風景を眺めつつのよい散歩になりました。(ちなみに、こういう場合は臨時のバスが出るので、それに乗ればよかったようです。)

いつもトラムに乗り換えている駅。王立劇場(左側の建物)の目の前にあります

Fikaという文化については知っていたものの、初日に配られた予定表にもしっかり組み込まれていることには少し衝撃を受けました。コーヒーやお茶を片手に談笑する時間をとても大事にしていて、このような余裕をもつために、自分の進捗を考えて残れる日は残ったり、土日に登校するなど、見えないところで各自調整しているようです。でも決して無理をするわけではなく、忙しい人がFikaを早めに切り上げていても誰も気にしません。いい意味でみんなマイペースというか、お互いに状況が違うのは当たり前なので、それを尊重しあっている結果という感じがします。

この日のFikaはクラスメイトのお誕生日会も兼ねて、各出身国の歌でお祝いしました

また、4週目の最後に、ストックホルムから電車で北へ2〜3時間ほどのGävleという街で行われたVÄV MÄSSANに行くことができました。スウェーデン国内外から織物やニットに携わる作家や企業、HVをはじめとする学校がブースを出す、お祭りのようなイベントです。当日はクラスメイトにHV以外の学校で学ぶ学生や作家さんを紹介していただいたり、作品を拝見したり、素材や道具を吟味したり…と出会うすべてのものが貴重で目が回りそうでした。もっと下調べをしておくんだったと少し悔やんでいます。

織機のロールスロイスといわれるÖxabäckのブース

Fikaやランチの時間には、染織をはじめとする手工芸が社会でどのようにみなされているか、そのようななかでどうやって織りを続けていくか、ということが少なからず話題になります。いつも朗らかなHVの学生たちですが、それぞれ手仕事に対する情熱を秘めていて、将来に対しても明確な希望があるようです。
無論、制作に対しても真剣で、クラスメイトたちは短時間で質の高いデザインを何案も出し、その上で美しく織り上げており、毎日感銘を受けています。つい自分と比べてしまい落ち込むこともしばしばですが、私のポートフォリオを見てもらえる機会があり、みんな質問をたくさんしてくれたり、インスピレーションを受けたよ!と言ってくれたりして、とても嬉しかったです。
尊敬するクラスメイトたちと共に学べることはこの上ない喜びであり、HVでの日々を悔いなく大事に過ごしたいと思います。

2024年度留学生コース終了!

世界中から織りを学びたい学生が集う川島テキスタイルスクール。英語で日本の織りを専門的に学べる学校は稀で、例年春と秋に開講する留学生コースはとても人気があります。ビギナーズ・絣基礎・絣応用を組み合わせた内容で、2024年度も学びの意欲あふれる留学生が集まりました。春学期はイタリア、フランス、フィンランド、イギリス、アメリカ、オーストラリアからの9名、秋学期はベルギー、スウェーデン、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカからの7名を受入。秋の絣応用では、絣基礎で学んだスキルを取り入れてオリジナル作品を制作。学生のなかにはテキスタイル・デザイナーの仕事をしている人もいて、今回の自主制作を通して自身の作風が広がった、作品は日本で絣を学んだからこそ生まれたデザイン、と話しました。そんな留学生の作品は、来年3月の修了展に展示される予定です。

スクールの特色のひとつに、修了生が再び学びに戻ってこられるという点があります。今秋も、前年に絣基礎を修了して今回は応用を受講した学生や、2019年に絣基礎と応用を修了し、絣の学びを積み上げるべく応用を再受講して新たな作品を制作した学生もいました。「ここは街の喧騒から離れて静かだし、設備も整っていて、落ち着いて制作に打ち込める環境が気に入っています。また戻ってきます」と。他の学生も「細かい作業を確実にするための道具と設備が整っていて、充実した制作ができました」「ここで学べて光栄でした」といった感想をくれました。

また今年度も、スウェーデンにある提携校HV Skolaから来た留学生が交換留学を検討している専門コースの学生向けに学校紹介してくれたり、日本の学生と留学生が互いに情報交換したりして、織りを通じた出会いと刺激が生まれました。

*現在、川島テキスタイルスクールでは2025年度の各コースの願書受付中です。春の留学生コース(英語)は12/12締切、専門コース本科・技術研修コース(日本語)の二次締切は12/13、マンスリーコース(日本語)は2/7締切です。

(ブログ連載)スクールをつづる:国際編

得たのは「挑戦する気持ち」 スウェーデン交換留学の報告会

 川島テキスタイルスクール(KTS)では、交換留学の提携校としてスウェーデンのテキスタイルの伝統校HV Skola(以下、HV)と20年以上にわたるつながりがあります。このほど、HVの卒業生でKTSの秋の留学生コースを受講していたRebecka LundborgさんによるHVの学校紹介と、専門コース創作科(3年)の沼澤瑠菜さんによる留学報告会が行われました。

 Rebeckaさんは2023年6月にHVを卒業したばかり。HVでは織りや刺繍、染めを3年間学びました。学校紹介ではHVについて、女性の経済的自立やスウェーデンの手工芸を発達させるために創立したという成り立ちや、2024年に創立150年を迎える歴史のなかで、現在のHVについて手工芸とテキスタイルアートを中心とした、大学とは異なる特殊な学校であると説明。また在学中に取り組んだプロジェクトの紹介では、ストックホルムのMUJIで絣のワークショップを開催するなど企業やお店とのコラボレーションの事例をふまえて、HVの現在のありようを伝えました。

 沼澤さんは2023年8月から3カ月間交換留学し、ダマスク織りや刺繍などの授業に参加。報告では滞在中の学びについて実際の作品を見せながら制作過程をふまえて話し、学生生活についても住まいや食、街並みの写真を交えて紹介。専門コースの中には今後、交換留学を希望している学生もいます。留学希望者もそうでない人も、それぞれの興味の角度から真剣に話を聞いていました。

 最後に沼澤さんは交換留学で一番得たものについて聞かれると、「挑戦する気持ち」と即答。「今までやったことがなかった刺繍(の作品制作)に取り組んだり、ダマスク織で大きな作品を制作したり、家でスウェーデン料理を作ったり、友達の家に遊びに行ったりと活発に行動できました」と明るい表情で語りました。

 HVとKTSの学生、それぞれの目線からの紹介に、テキスタイルを通した交換留学のつながりの豊かさを知った時間となりました。

*沼澤さんのHV留学記1〜4はこちらから読めます。