織実習「布を織る」 本科 関杏里

入学して最初に行った基礎織の糸とは違い、いきなり細くなった糸と1200本という経糸本数に織れるのだろうかという気持ちでいっぱいでした。長さは8m!

好きな絵画を選択し、白+4色の経糸を自分で染め、考えた縞通りに整経(せいけい)し、共同作業で経(たて)巻きをし、機にかけ、緯糸の色を縞が生きる色で染めてという、織る前の準備期間が織る日数に比べて長かったです。
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グスタフ・クリムト「ひまわりの咲く農家の庭」より

その中の整経という作業で一定のリズムと力加減で必要な長さにはかり縞の順番に色糸を配していく作業がとても難しく、始める前に先生にしっかりやってくださいと言われた意味や作業の丁寧さを要求された理由を織っている最中にしみじみと体感しました。丁寧に、同じ力加減でしないと糸がたるんで機にかける作業がとても時間がかかる上に、織っている最中や織り上がりに影響が出てきます。

4月の中ごろから6月の頭までほぼ毎日放課後も使って暇を見つけては、
織りあげるのは正直に言ってしんどいこともたくさんで、次々にわいてくる問題になぜ?どうしたらいいの?
と頭を悩ませ、ああだこうだとやってみてもわからないことは先生に質問し織り進めました。
初めは、1日に30cm織れるか織れないか、調子のいい時は50cm織れたという繰り返しが、
ある日突然70cm織れた瞬間に同じような体験をしたクラスメートと喜びました。

耳がうまくいかない、糸の張り具合が合わない、織りむらに糸の目が飛んだり、経糸が切れたり、
緯密度が計画通りに行ってない、織り幅があってない。何度もやり直しては進めてを繰り返しました。
すべてがうまくいくというのはなかなか大変で、自分自身の気持ちやコンディションも重要でした。
まさに機と一体になるというのでしょうか。それを味わえたのは限られた瞬間でしたが、糸から布になる様が楽しかったです。そして、織れるぎりぎりまで織って機から外すために経糸を切って布を持ち上げた瞬間の感動はきっと忘れないと思います。
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作業風景

元々私は、色を選び、縞をデザインする最初の段階で躓きました。
本来は絵の全体の印象でとらえなければいけないところを、パーツでとらえてしまい、
縞で細かい柄や混色などで表現の幅がだせず、縞で何ができるのかがわかっていませんでした。
また、経糸の張りを強くして織っていたので機から外した瞬間の糸の縮みや湯通しで糸の緊張をとった後にもさらに縮み、手触りが固いままでした。仕上げの部分でも課題がたくさん出てきました。

最後の講評で、グループのみんなの絵と縞を見ての発表や先生からのコメントを次に生かしたいと思います。
そして出来上がったことの喜びと、また織りたいという思いでいっぱいです。
織り上げた布は、一部を風呂敷に仕立て縞を生きるように物を包んで、残りの布を2階から垂らして展示しました。
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本科織実習「布を織る」 担当講師:山本梢恵

スピニング講座を終えて

5月開講のワークショップ「スピニング」に参加しての声を福山さん(大津市)からいただきました。

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2001年に長期研修科を修了しました。当時は主婦になってから思い切っての通学でしたので、
それはそれは全てが刺激的でした。学校に通うこと、たくさんの糸や色に触れること、デザインに
悩むこと、仲間と語らうこと。楽しくて仕方ない毎日でした。あっという間に半年が過ぎていき、
しかし修了してからは試行錯誤の毎日でした。糸を染めて布を織っていく・・・そのことは出来ても
出来上がったものが溜まっていくばかりでは趣味として終わってしまう。この作品を通じて
人と繋がる術を持たなくては・・・悩んで悔しんで長いトンネル生活の時間を過ぎ現在に至ります。
今はフェルトで小さな作品展をしたりご注文をいただいて製作したりしています。
フェルトはジョリー・ジョンソンのフェルト講座を受講していました。

そして、駆け足で過ぎた8年。
ある時ふと思いました。羊毛を毎日触っているのに羊のことをちゃんと知らないのかも・・・。
と不安になりました。そしてフェルト以外の羊毛の技術を(紡ぐこと)勉強しなおそうと思い受講するに
至りました。

フェルトでは染色されたトップを使うことが多いですが、スピニングでは刈られた羊毛を洗うことから
始まりました。それでこそ生きた布ができるということもよく分かりました。
洗ってほぐしてカードをかけて、紡いで撚り止めして・・・そしてやっと機にかけられる。
やはりテキスタイルの仕事は工程が多い。
そして羊の仕事は奥が深くて、私がおばあちゃんになってもやり切ったということはきっとないだろうな・・・
と実感しました。フェルトと紡ぎでは工程に逆の仕事があり、羊に対する意識も少し違うような気がしました。
どちらも昔から伝わる伝統的な技術です。どちらもいい仕事です。そしてどちらも羊を愛しています。
学べる機会に恵まれたことは本当にありがたいことです。

何事も「ファスト」が流行になる昨今ですが、テキスタイルのことに触れると、ゆっくりと手間を
かけることの大切さ、日本人ならではの感性、そんなものこそ大事にして暮らしていきたいと感じます。

そして最後になりますが、市原の山々とともに、15年前から変わらずにいてくださった先生方に
再会できたことは本当に嬉しいことでした。ありがとうございました。

次回のスピニングは9月17日(土)からです。
ぜひご参加ください!

2015年度川島テキスタイルスクール修了展のご案内

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川島テキスタイルスクール修了展
2016年3月2日(水)~6日(日) 京都市美術館 別館にて開催します。
本科(1年次)専攻科(2年次)創作科(3年次)技術研修科、留学生の作品他を展示致します。
ぜひお越し下さい。

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川島テキスタイルスクール修了展
2016年3月2日(水)-6日(日) 9:00-17:00
京都市美術館 別館(ロームシアター京都敷地内)
入場無料

スウェーデン交換留学近況報告3 創作科 水野友美

スウェーデンから創作科(3年目)の水野さんから近況報告が届きました。
水野さんは8月下旬から、提携校であるHV Skolaで刺繍や織りを学んでいます。

こちらストックホルムは12月1日に初雪が降り、本格的な北欧の寒さを体験しています。
夜が長くなった一方、街は11月半ば頃からクリスマスの装飾で華やかです。
NKデパートのクリスマスショーウィンドウは冬の風物詩の一つで、
いつも人だかりが出来ていて外国のクリスマスらしい雰囲気がたっぷりです。

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12月4日で私の留学の授業が終わりました。
個人プロジェクトが終わった後はダマスク織の授業に入りました。
実践と理論の授業が上手く組み込まれていたのでとても勉強しやすかったです。
ダマスク織は既存の天秤機に様々な綜絖や器具を取り付けるなど、
織るまでの準備が本当に大変です。
そのため2人1組で経糸をシェアし、機建てを行いました。
ブランケットを作る人が多かったのですが、
私は前回の個人プロジェクトでブランケットのような物を作ったので、
今回は折り紙パターンのポーチを作りました。

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クラスメイトに日頃お世話になっている感謝を込めて、私の部屋で日本食パーティを開きました。
テーブルセッティングや材料の調達など中々大変でしたが、皆喜んでくれて良かったです!
日頃のお礼として開いた会ですが、クラスメイトから手作りのジャムや北欧のお菓子の本を
プレゼントしてもらい、私がまた嬉しい思いをしてしまいました。
ちょうど樹木希林さん主演の日本の映画「あん」が上映されていて皆で見に行ったり、
その映画でどら焼きを皆が食べてみたい!となり、丁度私の家族が来るタイミングだったので
どら焼きや日本のお菓子、北欧のお菓子でフィーカをしたりしました。
皆と私の家族でフィーカが出来、とても良い思い出になりました。

その他、クラスメイトのお家でヌードデッサン会をしたり、リンディーホップダンスを習ったり、
学年の違うお友達のお家でジンジャークッキー(スウェーデンではペッパーカーカと言います。
クリスマスに作るクッキーで今がシーズン)を作ったり、
クラスメイトとサウナに行ったりしました。
サウナは湖に面しており、サウナで暑くなったら湖へ入ります。
私も挑戦しましたが、死ぬかと思いました…。
などなど、クラスメイトのおかげでとても充実したものとなりました。

8月末から今月初めまで4ヶ月近くHVskolaで沢山の人に助けて貰いながら、
充実した留学生活を送ることが出来ました。
私の授業参加最終日となった金曜日、
クラスメイト達がリュックサックをプレゼントしてくれました。
このリュックサックは私が欲しがっていたものでした。
それを何となく世間話の一つとして話していたのを覚えてくれていたこと、
そして何よりスウェーデン語がほぼ分からず、英語も拙い私だったのに、
こんなにも素晴らしい関係を築いてくれたことに感激し、涙が止まりませんでした。
勉強も遊びも伸び伸びと出来たのは出会った方達のおかげです。
この絆と経験は一生の宝になると思います。
不安だった初めの頃を忘れてしまうくらい、素敵な出会いと日々に恵まれた留学生活でした。

スウェーデン交換留学近況報告2 創作科 水野友美

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スウェーデンから創作科(3年目)の水野さんから近況報告が届きました。
水野さんは8月下旬から、提携校であるHV Skolaで刺繍や織りを学んでいます。

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こちらは先週サマータイムが終わり、日本との時差が1時間増えて8時間になりました。
来たばかりの8月には夜の9時まで明るかったのに、今や夕方4時に日没です。
冬は3時日没になるようで、スウェーデン人は少しでも日があれば、
今のうちに日光を浴びようとしています。ちょっと面白いですが、
私も冬の長い夜を経験すればそうなるのだろうな…と思っています。
秋は早足で過ぎ、一部地域ではオーロラが観測されたようです。

織りのプロジェクトは自分の組んだスケジュール通り、順調に進めています。
木曜日に全てのパーツを織り上げ、本日金曜日に湯通ししその後縫製に入ります。
この織りのプロジェクトで初めて北欧式整経機を体験したのですが、
初めは和式と綾の取り方がごっちゃになり見事失敗しました。
サンプル用に整経したその経糸は川島方式で機がけをし、
本番からはHV Skola式で先生や友達に聞きながら習得しました。
日本にあってここには無いもの、またその逆も然りで、使い方を聞く度、
なるほど!と感心する道具や方法とたくさん出会えました。
来月初めにこのプロジェクトのプレゼンテーションPecha Kuchaがあります。
PowerPointを使用したプレゼンテーションになるので、
翻訳に時間がかかる私はちょっと焦っていますが、しっかり準備したいと思います。
この織りプロジェクトの合間に組織織の理論の授業があり、
Linnea先生やクラスメイトの通訳で何とか理解出来ています。
このプロジェクトが終わったら次はダマスク織のプロジェクトに入ります。

今月はクラスメイトからのお誘いも多く、とても充実した生活になりました。
お家でディナーをご馳走になったり、HVskolaとはまた別の小さな織りの教室
(クラスメイトが先生として教えています)でお手伝いをしたり、
美術館にみんなで行ったりと距離感が一気に縮まって嬉しいです。

みんなにお世話になっているお礼として、日本食パーティーを来月企画しました。
寿司しか知らないと言っていたので、日本の食べ物って美味しい!
と言ってもらえるように腕を振るいたいと思います!

スウェーデン交換留学近況報告 創作科 水野友美

スウェーデンから創作科(3年目)の水野さんから近況報告が届きました。
水野さんは8月下旬から、提携校であるHV Skolaで刺繍や織りを学んでいます。

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9月は刺繍のプロジェクトに参加し、無事プレゼンを終えることが出来ました。
スウェーデンに来てから街に出かけると必ず素敵な窓に出会います。
建物や窓の中の灯りや人の生活、それを少し羨ましく、
同時に寂しい気持ちも生まれた自分の気持ちをパッチワークで表現しました。
初めての体験となるフレームを使った刺繍やパッチワークの技法は、
先生のアドバイスのもとスムーズに作業出来ました。
板締めの布を持って行って良かったです。

クラスメイトの作品はどれもダイナミックで、私のものは繊細と言われましたが、
もっと弾けようとするか、これが自分らしさなのか…と色々考え中です。

次のプロジェクトは織物で、put ーon, down, up 着る、置く、かける。
そんなテキスタイルを製作します。
それらを全て満たす存在だった日本の布、ぼろへのオマージュでもあります。

クラスメイトとも段々と打ち解け、来年川島に行きたい!という人が増えて嬉しいです。
モダンダンスの講演や、近くのミュージアムにも誘って貰い刺激になりました。
刺繍のプロジェクトが終わった放課後は教室でワインパーティを開き、
良き人達に恵まれ楽しく過ごしています。

◎おすすめ情報◎
安くこちらの色々なテキスタイルを探すなら、
second hand(リサイクルショップ)のお店Myrornaがおすすめです。
組織織や刺繍のティーマットなど安く買えました。
何店舗かあるようなので、今度は大きい店舗へも行ってみたいと思います。

組織がわかる5日間を受講して

8月開講のワークショップ「組織がわかる5日間」に参加しての声を西田さん(倉敷市)からいただきました。

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私の住む倉敷は瀬戸内に面して干拓地が広がり、かつては稲作には不向きな土壌であったことから、
綿やイ草を植える農家が多くありました。

懐かしさ半分興味半分で8年前から自宅の畑で綿の栽培をしていますが、糸紡ぎから機織りまで一通りの工程は、
ネットや文献から得た知識に頼った「自己流」のため、試行錯誤を繰り返してばかりでした。

昨年両親を看取った後、この先自分はいったい何をしたいのかと度々自問するようになりました。
介護の最中も両親を送った後の空虚感の中でも私を慰めてくれていたのは常に「糸」に触れること、
機の前に座ることでした。そうだ!織りを基礎から勉強しよう!勉強したい!と思うようになりました。
60歳を過ぎてから寮生活をするなんて、子育て中には考えられないことでしたが、
年々歳々体力も集中力も衰えてきているこの歳だからこそ思いは日を増すごとに強くなっていきました。
5月に「はじめての織り10日間」を受講したのち、さらに多くを学びたいとの思いからこの講座を申し込みました。

ところが、初日から整経を経て第一のサンプルの綜絖通しを終えて寮に帰るとぐったりと疲れる始末、
残りの4日間に不安を抱いてしまいました。それでも初めて触れる天秤機と、杉綾からスエディッシュレース、
サマー&ウィンター、数種のオーバーショッへと綜絖とタイアップを換えるだけで次々と生まれてくる
組織の織りに疲れより好奇心の方が勝り、気が付けばあっという間に迎えた最終日には、不思議なほどの
充実感に満たされていました。

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何もかも整えられて「学び」だけに費やされた5日間。
的確なご指導を下さった先生、夜遅くまでアトリエで織り続け励まし合えた仲間たち、
かけがえのない時間を一緒に過ごせたことに喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。
今私は、以前にも増して「布を生み出す」ことに夢中になっています。

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「組織がわかる5日間」は来年度も予定しております。