2026年スウェーデン留学記1 創作科 福田葉月

専門コース3年目の創作科では、希望者は選考を受けた上で、提携校であるスウェーデンのテキスタイルの伝統校 Handarbetets Vänner Skola(HV Skola)へ最長3ヶ月の交換留学をすることができます。

9月から留学中の福田葉月さんから初回の近況報告が届きました。福田さんは11月まで、ダマスク織りや刺繍などの授業に参加します。


等間隔のカモメ。とても北欧っぽい。

9月も終わりを迎え、到着時はまだまだ夏の気配が残っていたストックホルムもぐんと肌寒くなってきました。水辺は特に冷たい風が吹いて来ます。

HVへの登校初日、集合場所は学校正面の中庭でした。生徒たちが輪になり、担当の先生から順番に名前を呼ばれます。そこでクラスメイト5名と初めて対面しました。少人数のクラスだったため、すぐに全員の顔と名前を覚えることができました。

授業は昨年と同様ダマスク織から。ダマスク織の授業のみ、スクールのワークショップのような形で一般の3名が加わり、合計9名で授業を受けています。皆笑顔がとても可愛らしい、優しい人たちばかりです!

私は日常で使える物を作りたいと思い、ウールの糸を使って膝掛けを作ることにしました。2人で1台の機を使う為、経糸の色を決める必要があり、初めは無難な生成りやベージュを検討しましたが、ペアのクラスメイトが、それではつまらないからこっちの色は?と提案してくれた暖色の糸に決めました。自分では思いつかなかった選択肢をくれたお陰で、最終的にこの色から思いついたイメージを基にデザインを決めました。

糸がスムーズに出るようにボタンの穴を活用。手仕事の小さな知恵が素敵。

その糸で初めてスウェーデン式の整経をしました。話に聞いていた通り、回すタイプの道具でとても新鮮でした。機の準備の方法や部品等もスクールで使用してきたものとは所々違っていて、楽しんでいる間に終わってしまい残念なくらい。それも、わかりやすく説明してくれる先生やクラスメイトのお陰です。

織り始めてからも、後ろの綜絖に吊るした重りが筬打ちの度にシャラシャラとぶつかり合う音や、クラスメイトが口ずさむ歌(皆結構歌っている)に包まれているうちに、自然と肩の力も抜けていき、あっという間に時間が過ぎて行きました。

計画に沿ってハンドルを引き下げる時も音が鳴る。

織りに関することだけでなく、様々なことに触れさせてもらっています。中でも、2学年合同で行われている水彩画材を用いたペインティングの授業は毎回沢山の発見があります。

HVの周りを歩いて見つけた色をスケッチブックの上に再現してみたり、他学年の学生とペアになってお互いを描き合った時には、屋外や屋内、光や背景の違いで色の見え方が変化することを実感しました。他の学生の色彩感覚や着眼点からも学ぶことが多く、とても有意義な時間です。初回授業後の帰り道は、朝と同じ道なのに、行きには気が付いていなかった色が見つかり、この新鮮な感覚を忘れないようにしたいと思いました。

HVがあるユールゴーデン島に続く橋から。曇天だった1日の終わりに見られた色。

水の都と呼ばれるだけあって、街を取り囲む水上には驚くほど沢山の船が揺れています。以前留学した先輩のレポートにもありましたが、通勤や通学に船を利用する人も多くいます。先日は、テキスタイル史の授業で、公共フェリーに乗って学校の対岸にある近代美術館へ行ってきました。あまりにもスムーズに動き出したので、出発したことに気が付かないほどでした。

鑑賞したのは、アンナ・キャスパーソンというスウェーデンの刺繍作家の展示で、レースや貝殻、大ぶりのガラスなどがふんだんにあしらわれた、一つ一つの作品に膨大な時間を費やしただろうと思われる大作ばかり。しかも、それらの作品はどれも自宅で実際に使われていたそうで、自分の世界をとことん詰め込んだ作品に囲まれた暮らしは、彼女にとってどれほど満ち足りた物だったことだろうと想像しました。そして、きっと大豪邸だったに違いない、とも。

印象的な交通事情は陸上にも。大きな通りだと両側にそれぞれ歩道と自転車用道路があり、自動車用道路にトラムの線路まであって、どれもゆったりしています。絵本の様な石造りの街並みの中には、信号のない横断歩道も多いのですが、立ち止まると自動車は(今のところ)100%止まってくれるので、気持ちのゆとりもすごい。電動キックボードや自転車の数も多いけれど、道がしっかり分けられているので安心だし、自転車の人々は皆ちゃんと手信号を出してスマートに曲がっていきます。どれもこれも、現地の人にとっては当たり前なのですが、決まりを守る意識が高くて関心します。

バスとトラムは同じ道、馬は自動車の道を走る。

とても書ききれませんが、他にも驚いたことや焦ったこと、感激したことなど、とても感情が忙しい1ヶ月でした。英語が堪能ではないので、伝えたいことにぴったりの表現が出てこないこともしばしば。それでも根気よく聞いてくれる先生やクラスメイトには本当に感謝の気持ちしかありません。

自分の製作アプローチについてこれまでと比較して考えることも多いです。例えば、ダマスク織のデザインの時、先生から一つ目のアイデアを修正して完璧にしようと思うのではなく、いくつものアイデアを出していく過程で良いものを生み出せるよと助言をもらって、それまでの自分がつまずきがちな部分に気が付きました。正解のないことですが、この機会に色々な方法を模索してみようと思います。

ダマスク織が終わると、次はアートソーイングの作品製作が始まります。今はデザインと試作の段階。クラスメイトが色々と助言してくれるのも嬉しくありがたいです。
学生同士でお互いに意見を交換し合うことが当たり前で、相手の意見を尊重しつつも、どんな風に感じるかや知っている知識を自然に伝え合う光景がよく見られます。

残りの日々も、自分らしさを活かしつつ、柔軟な姿勢で取り組みたいです。