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美山見学レポート 本科 岡田弥生

「人間だから失敗があります。でも、それが愛らしいし、面白い。」
藍染作家の新道弘之さんが、一枚の着物の前でおっしゃった言葉が、とても印象的に私の心に残りました。
4月に入学してからスクールでは、毎日が失敗の連続です。そんな私にとって、新道さんのこの言葉は、
自分を励ましてくれるような、そして、決して完璧ではない人間が作るものの暖かさや豊かさについて考えさせられる一言でした。

心配していた雨も、バスを降りる頃には太陽が顔を出すほどになり、
スクールを出発してから2時間ほどで私たちは京都府南丹市美山町に到着しました。
山々に囲まれた美しい村に、茅葺屋根がならぶ風景は、いつも私が生活している風景とはまるで違い、
何度も深呼吸をしたくなるような世界が広がっていました。

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ブルーアルケミーというDVDの中で紹介されていた新道さんの工房と美術館を訪ねるべく、
ゆっくりと村の中を歩いて行きました。
工房までの道のりは、昔ながらの郵便ポストや村ののどかな景色が続き、
緩やかな坂道を登ると、木でできたささやかな看板が見えてきました。
「ちいさな藍美術館」の中へお邪魔すると、早速、藍花の咲く甕が一つ目に入り、
DVDの中で見た藍の工房へ来たのだという実感が湧いてきました。

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美術館では、入ってすぐに展示されてあった素朴な丹波布が目に留まりました。
新道さんのお話によると、かつての農家の女性が家で織っていた着物だそうです。
民藝運動の提唱者でもある柳宗悦が北野天満宮の市でこういった着物を発見し、
のちに民藝として知られるようになったとのことでした。
富裕層が着るような豪華絢爛な着物ではなく、こうした素朴で、無駄がなく、
普通の人々の生活に沿ったものに光が当たり始めたのは、歴史の流れの中でも、興味深い事です。

工房では、新道さんが実際に藍染を見せてくださいました。
布を何度か藍甕に浸けた後、パタパタと空気中で酸化させると、緑がかっていた布が鮮やかな藍色に変わってゆき、
その姿はまさに不思議な魔法のようでした。
和室では、新道さんが世界各国の様々な布地を見せてくださいました。
中でも新道さんがこれまでに染められた布地で、新道さんのお母様がご自身の棺掛けを作られたというお話が最も印象的でした。

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今日では、街を歩けば数え切れないほどの機械で作られた製品が並び、
いわゆる「手仕事」で作られたものを見つけるのは、とても難しくなりました。
そのような時代だからこそ、人が手で作ったものの温かさや面白さ、
愛らしさについて考えながら、これからの制作に挑んでいきたいと思います。
美山で学んだ事は、きっと、今後何度も思い出され、
その度に美しい景色と新道さんの言葉が私の心に浮かんでくることでしょう。

川島テキスタイルスクール展

川島テキスタイルスクール展  5月18日(木)-23日(火)

LIXIL:GINZA 1階 レセプションスペースにて、
着物・タペストリー・ラグ・服地など学生作品数点を展示いたします。

なかには青く美しく澄んだ海に漂う人魚姫をテーマにしたきものや、
草原一面に咲いた花が風に揺れる様を表したラグなど、
季節の訪れを感じさせるテキスタイルもあります。
この機会に多くの方にご覧いただきたいと思っております。
LIXIL銀座2017パネル
会期:2017年5月18日(木)-23日(火) ※会期中無休
会場:LIXIL:GINZA 1階 レセプションスペース
住所:東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル
開館時間:10:00-18:00
入館料:無料

鶴屋吉信にて作品展示 専攻科 萩原千春

京都の老舗和菓子店の鶴屋吉信京都本店の一階店舗から二階茶屋•お休み処へと続く階段の踊り場に制作したタペストリーを展示して頂いています。
二階では職人さんが目の前で生菓子を作ってくれ、お抹茶と一緒に食べることが出来ます。
そんな素敵な空間に飾る為のタペストリーを作らせて頂くことになりとても嬉しく思いました。

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今回の作品のタイトルは「和敬清寂」で茶道にとても深い関わりのあることばです。
「和」…和合・調和・和楽
「敬」…お互いに敬い合う
「清」…清らかと言う意味ですが、目に見えるだけの清らかさだけでなく、
心の中も清らかであるということ。
「寂」…静寂・閑寂
というように一文字一文字に意味があります。

来店されたお客様に、職人さんが一つ一つ丁寧に心を込めて作ったお菓子を
落ち着いて召し上がって頂けるような空間にしたいという思いからこのテーマで制作をしました。

近くに寄られた際には、是非足を運んでみて下さい。
http://www.turuya.co.jp/tenpo/honten_top.html

組織がわかる5日間を受講して

6月開講のワークショップ「組織がわかる5日間」に参加しての声をA・Tさんからいただきました。

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「高機で織りをしてみたい!」興味とタイミングでワークショップに申し込みをしました。
期間中は、日々教室と寮の往復をしながら、講師の方、豊富な道具、全国から集まった参加者という
恵まれた環境でどっぷり糸と織りに向き合え、楽しく幸せな時間を過ごすことができました。
講座の時間外も道具を使わせてもらえたり、糸や道具の購入の相談や注文ができたりといった環境も魅力的でした。

組織の基礎では、組織図に頭が混乱し、手足もぎこちなく、踏み間違いもあり、行きつ戻りつでしたが、
織り進めていくうちに浮かびあがる模様にワクワクしました。先人の知恵と工夫はすごいと改めて実感!

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今回ワークショップに参加したことで、人や情報からも刺激を受け、
織りの前後の糸作りや染色、布を作品にすることにも興味が広がったように思います。
これから何をしていくか、何が残っていくか、まだ手探りですが、
ここでの経験や出会いが次にどう広がっていくか、自分にもワクワクしています。

次回の「組織がわかる5日間」は11月7日(月)からです。
ぜひご参加ください!

織実習「綴織」 本科 山本理恵

綴織の織実習では技法を学ぶサンプルを2枚織り、
3枚目にテーマ「花」で自由制作を制作しました。

綴織は絵を描くことに近いと思いました。
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原画

単純に、作業で下絵を画面に写すというよりは、
また新たに描いていくような感覚で糸の色を変えたりしながら、
緯糸を一越、一越、織り込み形を作っていきます。
しかしどんな方向にも滑らかに描ける絵とは違って、織物は経糸と緯糸の世界。
丸やカーブがとても難しくてなかなか自然な形になってくれません。
何度もやり直すのですが、一段だけでは答えがでずに、
間違いに気がつくのは沢山織った後だったりします。そうなるともう大変です。
でも、そうやって試行錯誤していって、気に入った形が出来た時の喜びはひとしおです。
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制作過程

画面の中で糸の太さを変えたり、飛び出すように糸を立体的に織り入れたり、
二つの違った色の糸を交互に織る事で、だんだんと色をぼかしていく事が出来たりします。
様々な技法を使い、細かく繊維にも。大胆に立体的にも。
表現が無限に広がっていくようでした。
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完成作品

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本科織実習「綴織」 担当講師:近藤裕八

織実習「布を織る」 本科 関杏里

入学して最初に行った基礎織の糸とは違い、いきなり細くなった糸と1200本という経糸本数に織れるのだろうかという気持ちでいっぱいでした。長さは8m!

好きな絵画を選択し、白+4色の経糸を自分で染め、考えた縞通りに整経(せいけい)し、共同作業で経(たて)巻きをし、機にかけ、緯糸の色を縞が生きる色で染めてという、織る前の準備期間が織る日数に比べて長かったです。
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グスタフ・クリムト「ひまわりの咲く農家の庭」より

その中の整経という作業で一定のリズムと力加減で必要な長さにはかり縞の順番に色糸を配していく作業がとても難しく、始める前に先生にしっかりやってくださいと言われた意味や作業の丁寧さを要求された理由を織っている最中にしみじみと体感しました。丁寧に、同じ力加減でしないと糸がたるんで機にかける作業がとても時間がかかる上に、織っている最中や織り上がりに影響が出てきます。

4月の中ごろから6月の頭までほぼ毎日放課後も使って暇を見つけては、
織りあげるのは正直に言ってしんどいこともたくさんで、次々にわいてくる問題になぜ?どうしたらいいの?
と頭を悩ませ、ああだこうだとやってみてもわからないことは先生に質問し織り進めました。
初めは、1日に30cm織れるか織れないか、調子のいい時は50cm織れたという繰り返しが、
ある日突然70cm織れた瞬間に同じような体験をしたクラスメートと喜びました。

耳がうまくいかない、糸の張り具合が合わない、織りむらに糸の目が飛んだり、経糸が切れたり、
緯密度が計画通りに行ってない、織り幅があってない。何度もやり直しては進めてを繰り返しました。
すべてがうまくいくというのはなかなか大変で、自分自身の気持ちやコンディションも重要でした。
まさに機と一体になるというのでしょうか。それを味わえたのは限られた瞬間でしたが、糸から布になる様が楽しかったです。そして、織れるぎりぎりまで織って機から外すために経糸を切って布を持ち上げた瞬間の感動はきっと忘れないと思います。
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作業風景

元々私は、色を選び、縞をデザインする最初の段階で躓きました。
本来は絵の全体の印象でとらえなければいけないところを、パーツでとらえてしまい、
縞で細かい柄や混色などで表現の幅がだせず、縞で何ができるのかがわかっていませんでした。
また、経糸の張りを強くして織っていたので機から外した瞬間の糸の縮みや湯通しで糸の緊張をとった後にもさらに縮み、手触りが固いままでした。仕上げの部分でも課題がたくさん出てきました。

最後の講評で、グループのみんなの絵と縞を見ての発表や先生からのコメントを次に生かしたいと思います。
そして出来上がったことの喜びと、また織りたいという思いでいっぱいです。
織り上げた布は、一部を風呂敷に仕立て縞を生きるように物を包んで、残りの布を2階から垂らして展示しました。
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本科織実習「布を織る」 担当講師:山本梢恵

2015年度川島テキスタイルスクール修了展のご案内

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川島テキスタイルスクール修了展
2016年3月2日(水)~6日(日) 京都市美術館 別館にて開催します。
本科(1年次)専攻科(2年次)創作科(3年次)技術研修科、留学生の作品他を展示致します。
ぜひお越し下さい。

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川島テキスタイルスクール修了展
2016年3月2日(水)-6日(日) 9:00-17:00
京都市美術館 別館(ロームシアター京都敷地内)
入場無料