ワークショップ

スピニング講座を終えて

5月開講のワークショップ「スピニング」に参加しての声を福山さん(大津市)からいただきました。

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2001年に長期研修科を修了しました。当時は主婦になってから思い切っての通学でしたので、
それはそれは全てが刺激的でした。学校に通うこと、たくさんの糸や色に触れること、デザインに
悩むこと、仲間と語らうこと。楽しくて仕方ない毎日でした。あっという間に半年が過ぎていき、
しかし修了してからは試行錯誤の毎日でした。糸を染めて布を織っていく・・・そのことは出来ても
出来上がったものが溜まっていくばかりでは趣味として終わってしまう。この作品を通じて
人と繋がる術を持たなくては・・・悩んで悔しんで長いトンネル生活の時間を過ぎ現在に至ります。
今はフェルトで小さな作品展をしたりご注文をいただいて製作したりしています。
フェルトはジョリー・ジョンソンのフェルト講座を受講していました。

そして、駆け足で過ぎた8年。
ある時ふと思いました。羊毛を毎日触っているのに羊のことをちゃんと知らないのかも・・・。
と不安になりました。そしてフェルト以外の羊毛の技術を(紡ぐこと)勉強しなおそうと思い受講するに
至りました。

フェルトでは染色されたトップを使うことが多いですが、スピニングでは刈られた羊毛を洗うことから
始まりました。それでこそ生きた布ができるということもよく分かりました。
洗ってほぐしてカードをかけて、紡いで撚り止めして・・・そしてやっと機にかけられる。
やはりテキスタイルの仕事は工程が多い。
そして羊の仕事は奥が深くて、私がおばあちゃんになってもやり切ったということはきっとないだろうな・・・
と実感しました。フェルトと紡ぎでは工程に逆の仕事があり、羊に対する意識も少し違うような気がしました。
どちらも昔から伝わる伝統的な技術です。どちらもいい仕事です。そしてどちらも羊を愛しています。
学べる機会に恵まれたことは本当にありがたいことです。

何事も「ファスト」が流行になる昨今ですが、テキスタイルのことに触れると、ゆっくりと手間を
かけることの大切さ、日本人ならではの感性、そんなものこそ大事にして暮らしていきたいと感じます。

そして最後になりますが、市原の山々とともに、15年前から変わらずにいてくださった先生方に
再会できたことは本当に嬉しいことでした。ありがとうございました。

次回のスピニングは9月17日(土)からです。
ぜひご参加ください!

組織がわかる5日間を受講して

8月開講のワークショップ「組織がわかる5日間」に参加しての声を西田さん(倉敷市)からいただきました。

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私の住む倉敷は瀬戸内に面して干拓地が広がり、かつては稲作には不向きな土壌であったことから、
綿やイ草を植える農家が多くありました。

懐かしさ半分興味半分で8年前から自宅の畑で綿の栽培をしていますが、糸紡ぎから機織りまで一通りの工程は、
ネットや文献から得た知識に頼った「自己流」のため、試行錯誤を繰り返してばかりでした。

昨年両親を看取った後、この先自分はいったい何をしたいのかと度々自問するようになりました。
介護の最中も両親を送った後の空虚感の中でも私を慰めてくれていたのは常に「糸」に触れること、
機の前に座ることでした。そうだ!織りを基礎から勉強しよう!勉強したい!と思うようになりました。
60歳を過ぎてから寮生活をするなんて、子育て中には考えられないことでしたが、
年々歳々体力も集中力も衰えてきているこの歳だからこそ思いは日を増すごとに強くなっていきました。
5月に「はじめての織り10日間」を受講したのち、さらに多くを学びたいとの思いからこの講座を申し込みました。

ところが、初日から整経を経て第一のサンプルの綜絖通しを終えて寮に帰るとぐったりと疲れる始末、
残りの4日間に不安を抱いてしまいました。それでも初めて触れる天秤機と、杉綾からスエディッシュレース、
サマー&ウィンター、数種のオーバーショッへと綜絖とタイアップを換えるだけで次々と生まれてくる
組織の織りに疲れより好奇心の方が勝り、気が付けばあっという間に迎えた最終日には、不思議なほどの
充実感に満たされていました。

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何もかも整えられて「学び」だけに費やされた5日間。
的確なご指導を下さった先生、夜遅くまでアトリエで織り続け励まし合えた仲間たち、
かけがえのない時間を一緒に過ごせたことに喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。
今私は、以前にも増して「布を生み出す」ことに夢中になっています。

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「組織がわかる5日間」は来年度も予定しております。

美山町・北村を訪ねて 本科 龍山千里

5月27日、藍染めによる創作を行なう新道弘之さんの工房を見学するため、私達は美山町・北村をおとずれた。
立派な北山杉をバスから眺めながら、京都の山奥深いほうへ向かっているのを感じつつ、
着いたらそこは、時間の流れがまったくちがうように思えるほどに、しずかで緑ゆたかなところだった。
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美山・北村町

今回見学でお世話になった新道弘之さんは、学生の頃より藍染めに魅せられて、
長い間制作活動や研究を続けてこられた。そのなかで彼が、こつこつと収集してきたものを
展示した「ちいさな藍美術館」も工房に併設されており、わたしたちが伺ったときは、
日本の藍染め絞り、また全世界各地でつくられてきた藍染めのコレクションを見ることができた。
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日本の藍染め絞り
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中国の藍板締め絞り

まず、藍染めをするには藍の植物を染料化する必要があり、藍を染料として使用するには、
水と酸素を使って藍の色素そのものを抽出する方法、または葉から堆肥をつくる方法の
大きくわけて二種類がある。日本では古くから、蓼藍の葉を発酵させて堆肥をつくる方法で
藍染めが行なわれており、堆肥は「蒅(すくも)」と呼ばれる。石灰と木灰の灰汁を使い、
蒅を発酵させ、7〜10日かけて染液を作るとのこと。事前に観賞した「BLUE ALCHEMY」*でも
出てくるように、新道さんはこの工程のなかで、日本酒も藍甕のなかに入れて発酵させる。
職人一人ひとり、独自のレシピがあり、今ではようやく勘で染めることができるようになった
新道さんも、そこに辿り着くまでには長い時間が必要だったと話していた。

新道さんが考案した新しい絞り技法による藍染めの工程の一部もみせていただいた。
どのように手を動かせば、よりうつくしい模様ができるか研究を重ねて生まれた絞り模様には、
削ぎ落とされた美を感じた。
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工房のなかに並ぶ藍甕
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絞り染めが施された布を水洗する様子

今回、一番わたしが心を動かされたのは、新道さんの制作してきた布の切れ端を、
お母様が繋ぎ合わせて制作したという藍染めのパッチワークだった。
それはお母様がご自分の棺にかけるために制作された布で、最期を見送る際に使われたそうです。
染めた布地を隅々までいつくしむ、新道さんご夫妻・お母様のつくる姿勢に学ぶべきところがあった。
また、純粋にある人のことを想って、それだけの為につくられたものというのは深い愛情を感じられ、
ことばにしきれない感動があった。
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藍染め布のパッチワーク
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藍染め布のパッチワーク拡大図

新道さんはこれをわたしたちに見せながら、「きれいだろう。俺が作ったんじゃないもの。
自然が作り出した模様だから、きれいなんだ」ということをおっしゃっていた。
藍染めによって生まれる色にしろ、または絞りでできる模様にしろ、
人が作り出すものはどんなに完璧で整ったものを目指しても、
どうにもコントロールしきれない「ずれ」のようなものが自然と生まれる。
それはテキスタイルに関わらず、つくること全てにおいて言えることだと思うが、
実は、人はそこに美を見出しているんだということに気づいた。

長年藍を研究されてきた新道さんのお話を通して、それは簡単な事でないことも同時にわかり、
美しさを目指して人が何かを作り出すとき、自然のちからが関与できる隙のようなものをつくることが、
ひとつの「技術」なのかもしれないと思った。

*『Blue Alchemy -Stories of Indigo-/ブルーアルケミィ ―藍の物語―』 アメリカのドキュメンタリー監督、Mary Lanceさんが世界各地の藍の現場を訪ね、7年の歳月をかけて制作したドキュメンタリーです。新道さんのインタビューや工房の様子をはじめ、世界の藍製造の貴重な映像をみることができます。

綴織基礎を受講して

8月開講のワークショップに参加しての声をHARDY辻さん(フランス在住)からいただきました。

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年齢的なこともあるのか、このままでいいのかと迷う日々が続いていた時にこの夏期講習を見つけました。
アパレルに長く従事していても分野が異なるとなかなか原料の専門的知識を得る所まで入り込むことが出来ず、
生地のことを学んでみたいという気持ちをずいぶん長い間胸中に抱えたままにしてきた気がします。
川島テキスタイルスクールは、実はずっと前から行きたかった学校でしたが、さまざまな理由から
海外に暮らすことになり実現させることが難しく、やっとその機会を得ることができました。

生地を自分で作ることができるのなら、そして何かのきっかけになるのであればと、
前知識なく参加した講習でしたが、何もかもが新鮮で、すばらしい先生方とグループのメンバー、
勉強にどっぷりはまれる美しい自然環境に恵まれ、大変に充実した5日間を過ごすことができました。

アトリエの機材の充実さ、本科の学生さん達の真剣な学習態度に影響され、私達講習生も毎晩課題を続けました。
一本一本の横糸を自分の爪でひっかきながら一歩一歩柄を作っていくという、とてつもなく時間も手間もかかるのが
この綴れという技術だと分かり、講習後、生地を見る目が変わりました。あまりの奥の深さに眩暈がしそうですが、
生地というもの、生地を作るということに対する興味がますます沸いてきました。
何度も間違え、何度もやり直しする私を、暖かくサポートくださった先生とグループのメンバーに感謝しています。
またぜひ時間を作り、講習を受けたいと思っています。

>>>他のワークショップ参加者の声はこちら

バックストラップ基礎・応用編を受講して

8月開講のワークショップを受講しての声を藤長さん(神奈川県)からいただきました。

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受講動機は原始機を現在においても使用し「マヤ文明」の宇宙観や自然との調和が、
織られる布の色や紋様に込められていると感じ、私も織ってみたいと思ったからです。

まず機になる道具の二股ロープ作り、丸棒の両端をカッターナイフで削り出すところから始まりました。
基礎編の「バックストラップウィーブ」の整経は木綿糸を8の字に、綾を作りながら糸をかけます。
次に綜絖糸を作っていきます。これが大変重要な役割をしている事を知りました。
綜絖開口、中筒開口を繰り返し緯糸を入れて織っていきます。
木と人間の身体だけでテンションを掛けながら織っていくという
原始機の原理を発見した人類の知恵にとても感動しました。
更にのバックストラップウィーブの道具一式は、風呂敷に包んでどこにでも持ち運びが出来ます。
何と合理的なのでしょうか。

応用編の「イスミキュリパンの二重織」は2色以上の上経糸と下経糸でそれぞれ平織組織をつくります。
格子や花、動物などの紋様を織出す事が出来、表と裏の色は反転します。
皆で先生の実演を拝見させていただいた後個々にテキストを見ながら織り進めます。
修正したりして私は時間が掛かりましたが、京田先生の書かれたテキストは、
1つ1つの工程をわかりやすく解説されているので理解し織る事が出来ました。

また先生はグァテマラの貫頭衣等、沢山のサンプルを持って来てくださり、
手に取って見る事が出来ました。村々で織られた個性豊かな布に驚きました。
改めて日本産地の着物の文化と共に発展してきた染織の事も思い出さずにいられませんでした。

講座の期間中は気付きと発見の連続で、先生はもちろん出会った受講生の皆さんから多くの事を教えていただきとても感謝しております。

はじめての織り10日間を受講して

はじめての織り10日間

わたしは以前アパレルに勤務しておりました。
在籍中から、出来上がった生地ではなくオリジナルの生地を作りたい、
糸や織りにこだわりたいと考えておりました。
この度、自分でブランドを立ち上げようと決意し、まず始めに織りが知りたいと思い、
はじめての織り10日間に参加いたしました。

糸繰りや整経や粗筬通しなど、小さな工程を重ねていきます。
初心者のわたしには言葉も作業の意味合いも分からないのですが、
一つ一つの必要性を先生が丁寧に教えて下さり、
実際に織りに入るまでの過程の大切さを知りました。
知った上で、すべての工程に心を込めて丁寧に糸や機に向かい、
やっと本織りに入れた時は感動しました。
初めて経糸の間に緯糸を通し、框を打った感覚の楽しさは忘れられません。
手を動かす度に、柄があらわれてくるととても嬉しく、
組織を、経糸と緯糸の関係により、見て学べたことは大きな収穫でした。
この講座では実技はもちろんのこと、糸の種類や、織物設計の知識など知りたかった座学も学べました。
また、個々の興味のあることや経験に応じて、
講師の方がお勧めの本や独学では知りえない深みのある知識を教えて下さいました。
こういった柔軟な対応と、基本の織りをしっかり学べた講座は、とても充実した内容でした。

今回の経験で、より一層、一枚の生地が仕上がることの尊さを感じられるようになりました。
これから生地を見るときには、糸や組織から見ていける楽しさもあります。
本当にたくさんの学びをありがとうございました。

次回のはじめての織り10日間は7月8日(火)からです。
ぜひご参加ください!

はじめての織り 5日間  大阪府 おちのりこさん

織機を一度使ってみたいという気持ちとものづくりがしたいという気持ちの元、全くの初心者として参加しました。すぐに織れるものだと思っていたら大きな間違いで、糸の色選びに始まり、糸繰り・整経・粗筬通し・綜絖通しと聞き慣れない言葉と漢字ばかりでした。

先生に言われるがまま作業を進めるもすんなりといかない。それでもすこしずつ作業は進んで、4人の仲間と助け合いながら織る段階へ近づいて行きます。機に経糸を通す綜絖通しの工程にきてやっと機と向き合うも、まだ織るには至らず、筬通し・タイアップ・前付け・緯糸の準備、最後に捨て織りをしていざ本織りへ。
織り始めるも、その1つ1つが難しいこと。経糸と緯糸の組織織り、経糸と緯糸がどのような関係で組織になっているのか理解に苦しむ所もあるが、柄が出来上がっていくのが楽しくて、組織織りということをすっかり忘れていました。やっと掴みかけてきた織るという感覚、ぎこちないながらも織る音が心地よく、なんとなく様になりかけた頃に5日間は終わりました。

やさしくも厳しく的確な先生の指導のもと、個性あふれる仲間ととても楽しい時間が過ごせました。私は洋裁を続けてきて今までは出来上がった生地を形にしていましたが、その生地を作る側から始めるという新たなものづくりができてよかったです。これから織りの道に進むかわかりませんが、ものづくり、つくりだす世界に身を置きたいと改めて思いました。ありがとうございました。
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