【新刊紹介!】『野田凉美作品集 HINTS FOR ART』(青幻舎)

 当スクールの野田凉美アドバイザーが作品集を刊行しました。1980年代より京都を拠点に制作活動をし、国内外で作品を発表し続けている野田さんの集大成の一冊です。

 内容はおもに、これまでの展示作品がコンセプトとともに紹介されていますが、時系列ではない流れの構成で、どこから開いても自由に読め、テーマや素材の独自性などいろんな視点から好奇心をかきたてられます。また、180度開いて見ることができる装丁の工夫や、紙の質感、色合い、巻末の作品写真付き年表「TIME TRAVEL 1973-2021」のデザインも魅力的です。

 本に収録された作品も言葉もすべて日々の営みとつながっていて、それはスクールでの野田さんの姿勢にも通じているように思います。当スクールで野田さんは2006年から11年間ディレクターを務め、現在はアドバイザーとして関わっています。織りだけではない多様な視点のテキスタイルの講義に、学生たちは刺激を受けています。スクール講師たちも野田さんの教え子が多く、日々も制作も生き方もひとつながりの野田さんのあり方や、素材に対する探究心を側で見て、ワクワクする気持ちや熱量の大切さを学んできました。

 野田さんは本のなかで「私が50年近く布や糸を素材にして美術に関わってきたのは、その都度、自身の生き方や立ち位置を確かめる行為であった」と書いています。その自身を「確かめる」感覚は、読む側もそうで、不確かな現代を生きる日々のなかで、扉を開けば作品と出会え、自分と向き合う時間が生まれる。ページを開くたびに、ときめく何かがあり、刺さる何かがあり、生きる力につながる何かが発見できる。そんなふうに胸に響く一冊です。

『野田凉美作品集 HINTS FOR ART』(青幻舎のページ) 

・作品集ができるまでのプロセスも、自身のウェブサイトで紹介されています。Suzumi Nodaホームページ