アトリエより:織りの響き──「綴帯」の音(後編)

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いま、スクールのアトリエには、力強く、かつ竹のしなやかな打ち込みの音が響いています。これは綴帯を織る音です。


綴織の中でも、綴帯は無地の部分を框で打ち込むのが特徴です。緞帳や祭礼幕は模様が全体に入ることから指先や櫛で織りますが、綴帯には無地があるため、模様と無地部分で使う道具が変わります。框(かまち)の動作も、他の織りでは緯糸を通してトントンと複数回打ち込むのに対し、綴帯は一回で決めるのが肝。一回打ちの理由は、経糸を見せずに、高い織り密度で均等に織るためです。下支えするのは、経糸の強さ。勢いよく力が加わってもぶれないように、しっかりとテンションを張ります。

じつは打ち込みは、その音を耳で感じるよりは、さほど力は入っていません。手首のスナップをきかせるのがコツで、学生は度重なる練習を経て、本番の制作に取り掛かっています。綴帯を織っているのは、専門コース3年目の于尚子さん。無地部分を織るのを「楽しい!」と声を弾ませます。黙々と織っている時、子どもの頃に家のなかで聞こえていた「音の記憶」がよみがえるのだそう。祖父母が帯を織る仕事をしていたことから、家では四六時中、機の音が響いて、今でも耳に残るそのリズムと重ね合わせるように、楽しく織れるといいます。

スクールで使っている機は、昔から西陣で使われてきた綴織専用の綴機です。また竹筬は、今は商品として新たに製造されておらず、竹筬を備えた、この西陣綴機を使うこと自体が貴重といえます。織りの音を響かせながら、制作は続きます。