月別アーカイブ: 2024年7月

夏期休暇のお知らせ

誠に勝手ながら下記の期間におきまして夏期休暇とさせていただきます。

夏期休暇:8月9日(金)- 8月18日(日)
夏期休業前出荷分の受付最終日:8月2日(金)
夏期休暇前最終出荷日:8月7日(水)…ご入金確認後の出荷となります 

※在庫状況により、最終出荷日までに商品が発送できない場合があります。

夏期休暇中のご注文およびお問い合わせはメールでお願い致します。
期間中にいただきましたご注文、及びお問い合わせにつきましては、8月19日(月)以降に順次対応させていただきます。

ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

緊張感の中でも違和感を逃さない (株)川島織物セルコンで緞帳と綴帯のインターンシップ 

今年度も(株)川島織物セルコンでのインターンシップが実施され、専門コース専攻科の学生3名が参加しました。今回は「緞帳」と「綴帯」の製作現場での実習プログラム。どちらも「綴織」ですが、太いスフ糸(レーヨン)を撚り合わせて大機で織る緞帳と、細い絹糸を爪で搔き寄せて織る帯とではまったく異なる綴織の世界があります。参加した学生たちによる報告会の様子をリポートします。

「緞帳」のインターンシップでは例年同様、学生本人の出身地のホールに納める想定で緞帳のデザインを考え、織りたい部分を1メートル四方で決めて、織下絵作成から配色設計、大機を使った製織までを10日間で行いました。学生は昨年、本科で取り組んだ綴織グループ制作を機に緞帳に興味を持ち、「個人ではできない規模のモノづくりにはどのような姿勢やスキルが求められるのかを知りたい」と参加。そこで「他の人のペースに合わせつつ正確に織るスキルが求められていることを学んだ」といいます。実習は綴織職人さんとマンツーマンで行われ、プロの「織るスピード感」や「わずかな角度の違いを下絵から読み取り、織りに反映する認識力」を目の当たりにし、感覚の部分での気づきも得られたといいます。

原画

今回が初めてとなる「綴帯」のインターンシップには2名が参加しました。「水平線のある風景」をテーマに、縦25センチ×横11センチのサンプルを作るのに図案を考え、織下絵を作成、糸の配色と準備、製織、プレゼンテーションまでを10日間で行いました。学生はそれぞれ「一つの製品が出来上がるまでの一連の流れを経験したい。商品として織物を作る場合、どういう視点で取り組むのかを学びたい」、「普段あまり帯と関わりがなく、いい機会だと思った」と参加。実習では帯を織るのと同じ規格の綴機を使い、このインターンのために爪を伸ばして、初めての爪織りも経験しました。

ギザギザにした爪を櫛のように使って糸を搔きよせ、緯糸を織り込んでいく爪織り。学生は「両中指の爪の端に、やすりを使って1ミリ間隔で3つの切り込みを入れて」といった爪の準備から、「糸が細かい分、普通の爪では入りづらいので織りやすさが違った」「糸がきちんと入ってくれる感覚があった」と実感までを語り、なかなかできない経験に皆が興味津々に聞いていました。

細い絹糸を使って、細かな密度の綴織に取り組むのも初めての経験。参加した二人とも「妥協せず、やり直す」が徹底されていたようです。「商品一点が高額な分、求められるレベルが高い。職人さんがぱっと見て、私が気づかなかったミスを指摘され、自分でもルーペで確認してやり直すこともありました。高価な商品をつくる厳しい目があり、職人さんは大きな緊張感の中でやっておられると感じました」。そうして練習時に指摘を受けたことで、本番でミスがあった時に「何か違う気がする」と、今度は自分で気づいてやり直せたといいます。「違和感を逃さない」と、この実習でも感覚的な気づきがあったようです。

報告会では、同じ綴織でもまったく違う経験の発表に、双方とも興味深く聞き入っていました。製作現場でものづくりを経験できる、密度の濃いインターンシップ。仕事としての織りを学ぶと同時に、綴織の奥深さに触れた貴重な機会となりました。

昨年2023年のインターンシップのリポートはこちら

西陣絣加工師・葛西郁子さん工房訪問

このほど課外研修として、京都・西陣にある葛西絣加工所を訪れました。当日は西陣絣加工師の葛西郁子さんと、絣加工を手伝っている平林久美さんが迎えてくれました。参加したのは専門コース専攻科と技術研修コースの学生、そして留学生です。

専門コースでは全員が絣の基礎を学び、2年目の専攻科でも個人制作で絣が主体の作品や、絣を取り入れた作品制作に取り組んでいる学生がいます。留学生は絣基礎コースを修了したばかり。絣を学んだからこそ、絣加工という専門的な仕事内容が想像しやすく、活発に質問が飛び交った場となりました。

葛西さんからは、絣の経糸をつくる自身の仕事について、生地見本を見ながら西陣絣の魅力について、映像を見ながら西陣絣の成り立ちについてそれぞれ説明があり、さらに絣の括りと、西陣絣特有の「梯子(はしご)」という道具の実演がありました。身振り手振りを交えて西陣絣の魅力を全身で伝えようとする葛西さんのエネルギッシュな姿勢に引き込まれるように、身を入れて聞き入る学生たち。特に留学生はスクールの絣コースを受講するために来日していて、学ぶ姿勢も積極的。「なぜ緯糸は見えないのか」「経糸は全何メートル?」「筬が弓状の形なのはなぜ?」など次々に質問し、葛西さんも丁寧に、内容をふくらませて答えてくれました。

昨年に引き続き、今回も同席された平林さんは、じつは川島テキスタイルスクールの修了生で、今年(2024)から西陣絣加工業組合の一員になったそうです。葛西さんの絣加工の仕事を手伝いながら、自ら加工した絣糸を用いて、織る作業も行っていて、この日は機にかかった作業途中のビロードとお召を特別に見せてくれました。目を輝かせて、高貴なビロードの制作に見入る留学生。「日本での用途は?」「海外では?」と聞き合い、イタリアから来た学生がイタリアのビロード製作風景の写真を見せる場面も。こうして時間があっという間に過ぎ、盛りだくさんの内容に、最後は皆の充実感が笑顔になってあふれました。

近年恒例となっている葛西絣加工所への訪問。2024年の今回は、絣の熱意が交差する、清々しい場となりました。

2021年訪問時のリポート詳細はこちら

制作の先に:「思いを汲み取った作品に」 綴織タペストリー「未来へ」が鞍馬山保育園へ

専門コース本科のグループ制作として、昨年(2023年度)の本科生が制作した綴織タペストリー「未来へ」が、このほど鞍馬山保育園に納入されました。学生たちが昨夏に園を訪れ、飾る場所を見て、園の理念について話を聞き、要望を汲んだうえでデザインして織り上げた7カ月にわたる制作プロジェクト。納入の日は、喜びを分かち合えた日でもありました。

園内にタペストリーがかけられた瞬間、「この場所にぴったりだね」と理事長の信樂さん。園児さんたちが行き来する階段に、色とりどりのヤツデの葉が舞うイメージ。「ヤツデの葉の表現が、園の理念『みんなのいのち輝く保育園』にぴったり。グラデーションも美しく、子どもたち一人ひとりが個性的に輝いている姿と重なります。思いを形にするのは難しいと思いますが、私たちの園の思いを汲み取って、素敵な作品に仕上げてくださいました」。そうにこやかに話される様子に、納入に立ち合ったスクールの学生や先生たちにも温かな気持ちが広がりました。

川島テキスタイルスクールと鞍馬山保育園は、同じ叡山電車沿いにあります。ご近所のよしみもあって、タペストリーの制作過程で、園児さんと園長先生がスクールに見学に来られました。アトリエで学生と一緒に織った体験を大切に思って、園に帰ってから自分たちで小さなタペストリーを織るという学びにつなげ、園のブログでも都度紹介してくださいました。こうしたタペストリー制作を通した交流が、園児さんたちにとって織物との出会いのきっかけになり、そこから織物に興味を持ってくれたことは、スクールとしてもとても嬉しいことです。

みんなの思いが大切に織り込まれたタペストリー「未来へ」。いくつもの喜びを育みながら、園へと旅立ちました。