在校生の声1 「得たいものがある時、ものの見方が変わる」園裕絵(2022年度・専門コース本科)

大学で建築デザインを専攻し、その後、和紙の照明制作などの仕事をしてきた園裕絵さんは、ずっと織りに興味を抱き続けていました。仕事を辞めたタイミングで「今だ」と決心し、2022年4月に専門コースに入学。園さんに大学時代のスクールとの出会い、なぜ今踏み出せたのか、入学して4カ月が経ち日々感じていることや、変化について語ってもらいました。

◆ もうやってもいいって自分に許しを出した

初めに川島テキスタイルスクール(KTS)を知ったのは大学1回生の時でした。当時、大学に建築家の内井昭蔵先生が学部長でいらして、授業の一環で先生が設計された校舎*を見学に来ました。詳しくは覚えていないのですが、「大らかで気持ちのいい」建物のイメージで、それはスクール自体の雰囲気もあったのかなと思います。

*KTSの校舎と宿舎は、1975年に第16回BCS賞受賞を受賞し、建築物としても貴重な施設。

この学校で織物を学んでみたい気持ちはありましたが、当時はテキスタイルを仕事にするイメージがわかなくて。それに織物をちゃんとやろうと思ったら道具など大がかりになると思って、気軽に始めようという気持ちにはなれませんでした。仕事は主にデスクワークでしたが性に合わず、和紙の照明器具を制作している会社に転職。そこで制作は自分に合うと感じました。その後、別の仕事をしていましたが、コロナ下で今までどおりの働き方や生き方でいいのかと考え直し、退職を機にスクールに入学しました。織りは未経験で飛び込みました。なぜ織りなのか理由はわからないけど、ずっと興味を持ち続けていることが織り以外になかったので、もうやってもいいって自分に許しを出したんです。面接でスクールに来た時も、気持ちのいい空間という印象は変わらなくて、ここで学べるんだ!と希望めいた気持ちになりました。

「満ちる」
デザイン演習「襞」(ひだ)より。「音」がテーマの課題制作。

◆デザインや色彩に苦手意識、そこから新しい何かを得る

授業は織りと染めの実習がメインで、この4カ月いろいろな技法に取り組んできました。織りによってまったく性格が違うので、その中でも自分の向き不向きがあるのを感じています。授業で細部まで丁寧に教わり、しっかりと実習するからこそ、織りとの相性まで知れるのだと思います。

デザイン演習や色彩演習もあって、それがいい刺激になっています。私はデザインと色彩に苦手意識があります。それで今はいろんなものを見るようにしていて、美術館や博物館にもよく行くようになりました。これまで単に好き嫌いで見ていたのを、今は織りを学んでいるので、参考になるものはないか、演習の課題に当てはめたらどうなるか、もし織物にしたらどうなるか、といった目線で、まずはすべてを見る。そうして日常でも今までにないものの見方ができるようになっています。得たいものがある時、ものの見方が変わると感じていて、それは本当によかったです。デザインや色彩は今も模索中ですが、ただ苦手と思うだけだともったいない。せっかくの学びの機会なので、そこから新しい何かを得られたら、少しでも人生が豊かになる方に持っていけたらいいなと思うので。

この先目指したいところはありますが、今は一旦置いておいて、あまり意識しないようにしています。自分にはこれしかないとか、こうしないといけないといった思い込みで狭めず、まっさらなところから見るようにしたいので。会社勤めをしている時は、そんな気持ちにはなれませんでしたが、今の環境でならそう思えます。