「自社製品に対する誇り」播州研修より 本科・Hさん

「日本のへそ」といわれる兵庫県西脇市を中心とした北播磨地域。そこは220年以上続く播州織の産地です。糸を染めて織る先染織物の国内有数の産地として、商品企画から染め、織り、加工までを一貫して行っています。専門コースでは産地研修として、西脇市郷土資料館を訪れて地域の風土や播州織の歴史を学び、植山織物株式会社と大城戸織布の工場を見学しました。


 去る 2023 年 9 ⽉ 15 ⽇、スクールからバスにゆられて約⼆時間半、播州織の主な産地である⻄脇市に到着しました。

 まずは⻄脇市郷⼟資料館にて、播州織の歴史について、学芸員の⽅に展⽰を⾒つつ講義いただきました。なかでも、⻄脇市を中⼼とする北播磨地域は江⼾時代、複数の藩の⾶地となっており、決まった領主がいなかったため統制がゆるく、地域に住む⼈々の⾃主性が保たれていたこと、またそれにより、明治になり幕藩体制が崩壊した後も、⾃⼰販路を持っていたため⼤きな影響を受けなかったことなどが、播州織という独⾃の⽂化産業が育まれた背景のひとつであるとのお話を聴き、とても興味深く感じました。
 また、展⽰を拝⾒した後には、播州織の古い⾒本帳が保管された⼀室にご案内いただきました。私が主に⾒せていただいた⾒本帳は昭和 33、34 年頃のもので、記された輸出先国の情報を⾒ると、ベネズエラなどのアフリカ諸国やオーストラリア、アメリカ、⾹港など世界各地へ輸出されていたことがうかがえる貴重な資料でした。輸出先の多様さに驚くと同時に、もしかして古い外国映画等で、知らず知らずのうちに播州織が使われた服を⽬にしていたのかも…と思うと感慨深かったです。

 次に植⼭織物株式会社にて、植⼭社⻑にレクチャーいただくとともに⼯場内を⾒学させていただきました。
 ⼯場では、シャトルによって緯⽷を⾶ばす有杼織機から、両側から緯⽷を受け渡すレピア式織機、空気で緯⽷を⾶ばすエアジェット織機まで⾒せていただきました。織るスピードは空気によるものが圧倒的に早いとのことでしたが、シャトルでゆっくり織る⽅が、布が柔らかく⾵合いが良くなるとご説明いただき、効率化が決して品質に結びつくわけではないものづくりの難しさを改めて感じました。
 さらに、綾織と平織の織り⽅や仕上げ時の加⼯の有無の差、また他国製との⽐較等による繊細な⾵合いの違いについて、布地を実際に触らせていただきながらうかがったお話からも、植⼭社⻑の品質への強いこだわりが伝わってきました。

 最後に訪問した⼤城⼾織布では、⼤城⼾社⻑が⾃⾝で改造されたジャガード織機の数々を、⾒せていただくのみならず、実際にスイッチを押して動かす等の経験もさせていただきました。
 また、先述の植⼭織物株式会社が、いわゆる播州織の特徴である分業制にてシャツ⽤の平織⽣地を主⼒としつつ、⼩ロット⽣産に移⾏しブランド化されている⼀⽅で、⼤城⼾織布ではさらに⼩さいロットで、駆け出しのファッションデザイナー等個⼈の細かい希望に応えて⽣産し直販されているため、⾒せていただいた⾒本地はどれも個性的で⾯⽩く、他にはない魅⼒を放っていました。
 ⼤城⼾社⻑や社員の⽅のお話には、現代では軽視されがちなものづくりの現場は決して楽ではないものの、⾯⽩いことをやっているという気概と熱量がこもっており、思わず引き込まれてしまいました。

 今回の⻄脇テキスタイル研修では、⽣産の体制や規模等が対照的な⼆社を訪問させていただき、⼤変勉強になりました。また、このように同じ播州織でも多様な⽣産の現場が今も発展し続けていることに、北播磨地域に根づく⾃主性という⾵⼟も垣間⾒たような気がしました。
 そして、どちらの会社も、時代の変化に対応しながら⾼い品質を保つという⼤変困難なことを継続されたうえで、⾃社製品に誇りをもって発信されていることが共通しており、とても感銘を受けました。私もものづくりの難しさにめげずに、⾃信のもてる作品を作りたいと気持ちが改まる思いです。