スクールをつづる

スクールの窓から 2 「デザイン演習 I」

川島テキスタイルスクールの専門コースでは、様々な先生が教えています。専任講師をはじめ、外部からも作家や技術者などを講師に招き、風通しのいい環境を作っています。このコーナーでは、そんな専門コースの授業の一部をお届けします。今回は担当講師による紹介です。(不定期掲載)

5回目:デザイン

4月から5回にわたり、本科では「デザイン演習」の授業を行いました。授業ではデッサンをすることで果物や野菜などのモチーフとじっくり向き合い、5回目に織実習・綴の自由制作で織るタペストリーのデザインをしました。

普段の生活の中で、わかったつもりでいる物は意外と多くあります。果物や野菜もしっかり見る機会はあまりなく、食材として数秒間見て状態を確認するだけで終わりがちです。何時間もかけてじっくり見て、触れて、想像することで、新たな面を発見し、ものの見え方が変化する感覚を味わうことは制作において貴重な経験になると思います。そうした観察眼を磨くと、制作のインスピレーションをどこからでも拾えるようになり、モチーフとしっかり向き合った経験がデザインに表れます。なによりも、日常の中で見えるものが変わったりと、ワクワクすることが増えます。

綴のタペストリーのデザインではモチーフの面白いと思ったところからデザインをふくらませ、どういう場所に飾るかなどを想像してもらいました。6月には織実習で綴のサンプルを織り始めていたので、どういう糸や技法を使うかも考えてのデザインになりました。

学生にとって、この授業で得た新しい経験や見方が、今後の制作の下地になったら嬉しいです。

◆ 私にとって織りとは? 「レンズ」

制作をし、スクールで働くことによって身につけた織りの感覚がいつも自然と動いている気がします。日常生活の中で路面表示の矢のマークなどが絣の模様に見えたり、ものを測るのに織りの道具が基準になったりと、無意識のうちに織物のレンズを通して物事を見ていることに気づきました。同時に視野を広げて、織物の長い歴史の中での自分の役割は何だろう、と考えています。

(文・表 江麻)

〈表 江麻プロフィール〉
Instagram: @emma.omote

おもて・えま/京都精華大学芸術学部造形学科洋画科卒業後、川島テキスタイルスクール専攻科修了。着物を制作し、2009年より川島テキスタイルスクールで国内外の学生を教える。

スクールをつづる 8

創立47年の歩みをたぐり寄せながら、現在のスクールのことをご紹介する全8回シリーズ。

どんな先生たちがいるの?

本科織実習 綴

それぞれの技能や経験を生かして指導しています。
専任講師の中には、川島織物で藤ノ木古墳の復元織物などに関わった熟練の染色の専門家や、
スクールで40年近く、ホームスパン一筋で教えている講師も。

他に綴、着物、帯、組織、絣を専門とする専任講師がいます。
皆に共通しているのは、織物に出会って魅せられ、純粋に好きであること。
その伝統に敬意を持ち、美しい織物作りを大切にし、織りを通して
一人ひとりの暮らしが心豊かになるように願って、丁寧にサポートしています。

外部からもアーティスト、デザイナー、技術者などを講師に招き、刺激と安定感とのバランスで、
風通しのいい環境を作っています。


※「スクールをつづる」シリーズは以上です。次回シリーズは「在校生の声(専門コース本科)」です(8/18初回配信予定)。


スクールをつづる 1 学校のなりたちは?
スクールをつづる 2 どんな学校?
スクールをつづる 3 どこにあるの?
スクールをつづる 4 どんな環境?
スクールをつづる 5 どんなコースがあるの?
スクールをつづる 6 専門コースはどんな授業?
スクールをつづる 7 どんな人がどんな目的で学びに来るの?

スクールをつづる 7

創立47年の歩みをたぐり寄せながら、現在のスクールのことをご紹介する全8回シリーズ。

どんな人がどんな目的で学びに来るの?

修了生の水野友美さん。大学でファッションを学び、舞台衣装の制作に携わっていました。

専門コースには高校や大学を卒業後に、社会人のキャリアチェンジや、家業の継承、
ワークショップ受講がきっかけで専門コースに踏み出す人もいます。
全国各地から、そしてスクールで学ぶために日本語を勉強してから 入学する海外からの方もいます。

テキスタイルを専攻していた人だけでなく、インテリア、絵画、デザイン、繊維、建築など
布を通して多面的なバックグラウンドを持つ方が集まります。
それだけ織物は奥深い世界がいろんな方向に広がっているという表れなのかもしれません。
自分の進む道や、暮らしを見直したいという転換期に、一生できる仕事として、
暮らしの原点につながる手織りを学びたいという方も増えています。


スクールをつづる 1 学校のなりたちは?
スクールをつづる 2 どんな学校?
スクールをつづる 3 どこにあるの?
スクールをつづる 4 どんな環境?
スクールをつづる 5 どんなコースがあるの?
スクールをつづる 6 専門コースはどんな授業?

スクールをつづる 6

創立47年の歩みをたぐり寄せながら、現在のスクールのことをご紹介する全8回シリーズ。

専門コースはどんな授業?

本科グループ制作
スウェーデン、ストックホルムにある提携校 HV Skola
年間を通して織物に打ち込み、染織を総合的に習得できます。
1年目の本科は、糸染めから織の全工程を学び、密度の高い基礎授業を通して、
基本技法の習得と表現力を養います。

2年目の専攻科は、具体的な目的を持って作品を制作し、
希望する分野の企画制作からプレゼンテーションまでを学びます。

3年目の創作科は、スウェーデンの HV Skola への交換留学や国内外のコンペに参加し、
自立して創作を続けていくためのスキルを身につけます。


スクールをつづる 1 学校のなりたちは?
スクールをつづる 2 どんな学校?
スクールをつづる 3 どこにあるの?
スクールをつづる 4 どんな環境?
スクールをつづる 5 どんなコースがあるの?

スクールをつづる 5

創立47年の歩みをたぐり寄せながら、現在のスクールのことをご紹介する全8回シリーズ。

どんなコースがあるの?

専門コース本科修了制作(上山清香)
技術研修コース(駒田桃子)
スクールの基盤は「専門コース」。染織技術とデザインを基礎から学び、
将来自立して創作できることを目指し、1年ごとにスキルを深めていきます。
織経験者が対象の「技術研修コース」は、テーマと期間を決めて、組織や素材の研究から制作までを行います。

海外向けには、英語で授業を行う「留学生コース」(春・秋定期開催)と「海外ワークショップ」も。
海外の旅行グループ用に、体験から専門的な染織まで希望に合わせたワークショップにも対応しています。

「ワークショップ」は、短期間(1〜10日間)で一つの技法を習得します。
手織りの基本、組織・綴・手紡ぎ糸づくり・染色(天然・化学)などの技術を個々に習い、
作家・研究者から制作のヒントを得ることができます。


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スクールをつづる 2 どんな学校?
スクールをつづる 3 どこにあるの?
スクールをつづる 4 どんな環境?

スクールの窓から 1 「表現論」

川島テキスタイルスクールの専門コースでは、様々な先生が教えています。専任講師をはじめ、外部からも作家や技術者などを講師に招き、風通しのいい環境を作っています。このコーナーでは、そんな専門コースの授業の一部をご紹介します。(不定期掲載)

7月9日、「表現論」の授業で繊維造形作家の堤加奈恵さんを講師に招き、「わたしがみた フィンランドのこと、テキスタイルのこと」というテーマで、作品や資料を見ながら、海外留学の体験談をお話いただきました。堤さんの織りに向き合う真摯な姿勢に触れたひとときとなりました。

大学院を修了後の7年間、綴織のタペストリー制作に励んできた堤さん。2018年〜19年の9カ月間の海外滞在を機に作風が大きく変化しました。日本で生まれ育った自らのルーツに興味を抱き、座布団から着想を得るなど日本の染織工芸品を取り上げて、自身で織った布を造形作品として発表するように。レクチャーは、そんな影響を受けたフィンランド滞在について、助成金付き留学制度応募から、滞在計画の立て方、伝統工芸のRyijy(リュイユ/ルイユ)織りと収集家との交流、植物染色、個展開催など堤さんの経験をなぞるように進んでいきました。

学生に向けては「5年、10年後、こんな自分になれたら素敵だなと思える経験を今、 フットワーク軽くやってみるといいです」「見えない未来を想像して不安に思っても、明日、一週間後にぱっとひらめくことがあるかもしれない。その時が来るまで、今、目の前にあることを精一杯頑張ればいい」とまっすぐに語られました。

◆ 堤さんにとって織りとは? 「人生を楽しくしてくれたもの」

「私は元々、絵が好きで美大(京都精華大学)に入ったのですが、自分が描く線にコンプレックスが強かったんです。そこで綴織に出会い、線が忠実に再現されない面白さに触れ、作るのが楽しくなりました。綴れを織る時、爪で押し下げる布の重量感が好き。織りは私の人生を楽しくしてくれたものです。」


〈堤加奈恵さんプロフィール〉

Facebook: @lanlanae
Instagram: @tsutsumikanae1006

つつみ・かなえ/
繊維の蓄積により生み出されるディテールと、経と緯の組織の成り立ちから生じる一種の不自由さ、単純と複雑の両面を持ち合わせた織り機に面白みを感じ、「織る事」をベースにして作品制作をしている。京都精華大学大学院芸術研究科染織領域修了。2015年より同大学芸術学部造形学科テキスタイル専攻非常勤講師。

スクールをつづる 4

創立47年の歩みをたぐり寄せながら、現在のスクールのことをご紹介する全8回シリーズ。

どんな環境?

川島テキスタイルスクール建築模型
アトリエ 1970年代
鹿(アトリエから)

周辺はのどかな集落で、山あいの美しい自然に囲まれた環境です。
四季の移ろいを肌で感じ取れ、鳥のさえずりが辺りに響き、鹿の親子が姿を見せることもあります。

校舎・宿舎ともに建築家の内井昭蔵氏による設計。
1975年に第16回BCS賞(建築業協会による)を受賞し、建築物としても貴重な施設です。
内井氏はスクールの趣旨を汲み、土地の状況を考慮しながら、
この学校にふさわしい建物を設計するべく工夫を凝らしています。
一枚の布を織ることを通して、人とものとの関わり合いの原点を探るという視点でアトリエを考案。
通常、屋根に沿って水平に支える梁を、壁から一体となるアーチ状の構造にし、
空間全体に一定のリズムで架け渡しています。
山麓の傾斜に沿って建てられ、自然とのつながりも尊重。
天窓や大きなガラス窓から自然光を取り入れ、緑の景色が広がります。
このような自然と建物にあたたかく包まれた空間だからこそ、
創造的なものづくりに集中することができます。


スクールをつづる 1 学校のなりたちは?
スクールをつづる 2 どんな学校?
スクールをつづる 3 どこにあるの?