川島テキスタイルスクール(KTS)の専門コース専攻科(2年次)では、希望者は(株)川島織物セルコンでインターンシップを経験することができます。2021年度は呉服開発グループで10日間のインターンシップ・プログラムを設け、専門家数人の指導を受けながら、企画開発から生産までの流れを学び、製作現場で帯をデザインして試作、プレゼンテーションまでを行いました。KTSは、(株)川島織物(現・川島織物セルコン)が1973年に設立した学校。手織りを教え、社会でその技術と表現力を活かせるように、独自の教育を続けて48年になります。そんな企業とのつながりがあるからこその充実した研修が実現できました。
参加を希望した学生たちには「一流ブランドの帯の生産現場に興味があり、この先自分が商品としてものづくりをする姿勢などを勉強したい」、「将来やりたいことを明確にしていきたい」という動機がありました。スクールでは作品制作を行い、個々の表現力を伸ばすのに軸を置いているのに対し、今回のインターンでは、用途や対象を設定し、ニーズに合わせた名古屋帯の商品作りを経験。実務を通して、その違いを体感できたのは大きかったようです。普段会社で開かれている図案研究会にも参加し、作り手や売り手が集って意見を出し合う場や、帯の企画の過程を間近で見て「商品として成り立つか客観的に捉える」「チームで一つの商品を作る」という視点を得られたと言います。
自ら考えたデザインを織物にしていくために、紋作成ソフトを使ってドット(点)で描画にする意匠図作りも経験。「たった1ドットで形が変わるので、より良い形になるように何度も熟考して試しました。そこで妥協せずに丁寧に取り組めたのは、細部にわたる指導と、一つひとつの工程に時間をいただけたから」。作品と商品の違いはあっても、妥協しない丁寧なものづくりはスクールの姿勢にも通じていて、学生はインターンシップを通じて、その意識を更に深めたようです。
学生からは「しっかりと自分の中に落とし込むことができて、有意義な10日間でした」、「社員の方は担当の業務を行いながら全体の流れを把握し、ものを作るだけではなく、営業の方々とも協力して商品がお客様に渡るまで、渡ってからどう使われるのかを視野に入れて取り組んでおられる。そんな一つの商品ができるプロセスがとても勉強になりました」という感想がありました。受け入れ側の社員の方からは、「生徒さんにどのように指導したら伝わるのか等、改めて自分たちの仕事を客観的に捉えることができました」という所感がありました。
スクールは織りに没頭して自分と向き合い、ものづくりを通して可能性を広げていける場。作品と商品、異なる趣旨のものづくりを学んだ学生たちが、この先、どのように自らの織りの道筋を立てていくのか楽しみです。
*オープンスクール開催!(8月28日、9月11日、10月2日、10月16日〈事前予約、いずれも土曜。8月分は10時・14時から、9月以降分は10時・13時・15時から〉。見学の際、実際に機織りを体験していただけます〈専門コース本科の入学希望者のみ〉、他の日をご希望の方はご相談ください。)