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スクールをつづる:綴織編2 綴織担当・近藤講師インタビュー 「継ぐ−−ちょうどいい着地点を探って」

川島テキスタイルスクール(KTS)綴織編シリーズ第2回は、綴織が専門の近藤裕八講師のインタビューです。「継ぐ」を意識したKTSとの出会い、綴帯制作に邁進した学生時代、川島織物でのインターン、綴織を教える姿勢や織物に対する今の思いについて話を聞きました。

グループ制作のタペストリーを織り上げた学生と共に。
「機から下ろした瞬間、重さや柔らかさなど質感が手にズシッと感じられる。糸と向き合って積み上げてきたものが形になったという実感を得られて、『できたね』『終わったね』という喜びと安堵がこみ上げてきます。完成に向けての段取りを頭の中で考えながらも、学生たちには、とりあえず『おめでとう』という気持ちです」

◆講評会で綴帯の作品を見て「ビビッときた」

実家は呉服店。高校卒業を前に将来を考えた時、家業を継ぐ道が視野に入ったという近藤講師。愛知県で祖父の代から始めたお店。日常で着物を着る文化がない町で営み続けている家族の背中に、「できるなら続けてあげたい」という気持ちが自ずと湧いてきたそうです。着物を勉強しようと思い、雑誌『美しいキモノ』の掲載広告を見てKTSへ。2006年の専門コースは既に定員オーバーで、デッサン教室に通いながら1年待って入学しました。

綴織に魅かれたのは本科1年の講評会がきっかけ。先輩の綴帯の作品を見て「ビビッときた」。織実習でタペストリー制作はしたけれど、帯の綴織の細やかさや美しさに特別な魅力を感じたそう。そういえばKTSを作った川島織物も綴織が得意と聞いた。ここで綴織を学ぶ意義を見つけて専攻科2年に進み、綴帯の制作に方向を定めます。

◆手足の動かし方や打ち込むリズムが違う

専攻科では「難しい」と言われる無地織りや他の技法を練習し、細かな綴織を織る手の感覚をなじませて作品制作に取り組み、創作科3年次には川島織物セルコン制作部綴室でインターンを経験。「商品を作る現場では、質と併せて生産効率で動く。円を織る比率の緻密さや、無地と柄を織る時の手足の動かし方の違い、緯糸がきれいに入るコツなど、無駄のない『動き』を間近で見たことや、現場の職人さんからのアドバイスが勉強になりました」。正確に一定のリズムを刻んで織るテンポも製作現場ならでは。「織る音にも特徴があって、綴帯は緯糸を入れて打ち込むリズムが『シャ・タン、シャ・タン』とタンで一度打ちするので強く大きい音になるんです」。体で覚えた技術を、今度はスクールでの創作活動に組み込んでいきました。

創作科として更に1年学びを続け、再びインターンへ。今度は呉服開発グループで社内デザイナーから図案作成を学び、モチーフに合った滑らかな線を描けるよう訓練を受けました。並行してスクールの創作では、綴帯に自らデザインしたマーブル柄を織り込み、自分なりの表現を深めていきました。

marbling circle (2010)
「綴の名古屋帯は訪問着や色無地と合わせられる格ですが、逆にカジュアルな装いに合わせにくくなる分、配色などのバランスを考えてデザインしました」

◆織りを残していくために、ちょうどいい着地点を

綴織に邁進した4年間。修了の2011年当時、KTSでは若い世代への継承の時期を迎えていました。そこで綴織一筋に探究した技術と姿勢が見込まれ、専任講師として教えることに。専門コースをはじめ、定期開催ワークショップ、海外の団体向けなど綴織の授業全般を担当してきました。2012年には、豊臣秀吉が使ったと伝わる「鳥獣文様綴織陣羽織」(重要文化財)の修復に携わり、綴織の一種である「織成(しょくせい)」という技法を用いて土台部分の製織を担いました。

教える上で心がけているのは、「綴織は川島織物の伝統ある技術であり、KTSで開校時から教え続けられた蓄積がある。受け継がれてきた技術を伝えていく自覚と、その基本を正しく教える」こと。その上でこんな思いも。「講師として僕もまだ10年。織り手としても学びは一生終わらない。伝統の世界では一人前になるまで長い年数がかかると言われます。ただ、はじめの一歩を踏み出したい人にとっては、その年数の長さを強調すると気持ちのハードルを上げてしまい、間口を狭めかねず、それはもったいないと思う気持ちもあります。学生を見ていると、織りを深く知らないからこそ出てくる発想があって、固定観念に捉われがちなところを取っ払っていける新鮮な目を持っている。『これをやりたい』と言うものがあれば、僕の知識で手助けして挑戦を後押ししたいです。また、海外のグループは同じ綴の織り方でもフリースタイルが多く、織りを楽しむための綴織だと感じます。自由な感性が色合いやデザインに反映されて僕も刺激を受けます」

KTSで教える中で、「これからも織りを残していかないと、という思いが強まりました。実家もスクールも織物業界全体を大きく見て、そう思います」と近藤講師。「手間ひまをかけて作られる物の良さを伝えたいし、いろんな人に織物をやってほしい。そのために僕にできることは何か。講師としては伝統を尊重しながら、間口を広げて気軽に聞いたり始めたりできるきっかけになりたい。ちょうどいい着地点を日々探っています」


「マーブル模様を選んだのは、自然に生まれる線が美しかったから。実際に水に顔料を浮かべて紙に写し取ったものをいくつも作って、試染と試織を繰り返していきました」
◆  近藤講師にとって織りとは? 「襟を正す」

機に座る時、襟を正す気持ちになります。心が乱れていたら織りに向き合えないので、まずは整える。集中すると、何も考えない無の時間に浸れるのですが、それに近い感覚を僕は草抜きにも感じます。不思議ですが(笑)。どちらも淡々と手を動かして没頭できる時間が楽しい。現代の慌ただしい日常では、そんな時間が取りにくいのが実情。だからこそ、大切な時間です。

スクールをつづる:綴織編1「KTSの綴織とは?」

川島テキスタイルスクール(KTS)を紹介するシリーズの綴織(つづれおり)編です。このシリーズでは、スクールの綴織の基盤や、担当講師インタビュー、海外からの受講者の声、綴織職人として働く修了生インタビューを通して、スクールの綴織の今を紹介します。第1回は、KTSの綴織について。

綴織は、タペストリー・ウィービングとして、世界中で親しまれている織り方。日本では綴織と呼ばれ、京都の西陣を拠点に帯や和装小物、後年に緞帳などの制作で独自に発展してきました。綴織は、KTSを作った(株)川島織物(現・川島織物セルコン)が得意とする伝統的な織法で、スクールでも柱の一つとなっています。

その根底にあるのは、川島織物の綴織の歴史の厚み。さかのぼること19世紀、二代川島甚兵衞は渡欧し、フランスの国立ゴブラン製造所に数日間滞在します。そこでタペストリーに使われるゴブラン織の織り方が日本の綴織と同じと知り、細やかな日本の手仕事を生かせば大成できると触発されます。綴織の真価に気づいたことで、その後、製法や図案を改良、帯のほかにも室内装飾や緞帳などに展開し、独自のグラデーション法を考案したりして精緻で芸術性豊かな織物に発展させました。

その綴織の伝統技術は、スクールにも受け継がれています。KTS開校(1973年)から20余年、綴織を教えていた高向郁男講師は、川島織物の綴織職人。「技術の集積」「伝承の情報を公開」するのに作られたテキストは現在も授業で生かされています。そんな伝統技術に加えて、スクールでは一人ひとりの表現を大切にし、両方の視点で捉えて作品を作れるのがKTSの綴織です。


高向先生が授業用に作った織見本と織下絵(織る時のガイドとして使う、経糸の下にひく図)の説明図。一枚の中で順を追ってテクニックを学び、基本を網羅できることから、教材として大切に受け継がれ、40年以上経った今も授業で生かされている。

専門コースの綴織の授業では基礎技術をはじめ、自由制作を通して織下絵の描き方や絵画的な織り表現の習得、保育園や老人福祉施設に飾るためのタペストリーのグループ制作まで体系的に学べます。ワークショップは、枠機を作って小さなタペストリーを織る初心者向け、西陣綴機を使った基礎講座を定期開催し、英語通訳付きでレベルや経験に応じて設定する海外の団体向けもあります。スクールで教える手織りの内容は、時代に合わせて様々に変わってきましたが、その中で綴織の基本は途切れることなく教え続けています。機も西陣の職人さんが使う綴織専用の綴機を使い続けています。

また、会社の製品作りとは異なる、スクールの作品作りとは何か。それは挑戦できる場と時間を使って、自分の可能性を広げていける機会を得られること。確かな技術の土台の上で、表現力を養うからこそ自由度や奥深さが見えてきて、綴織は今もスクールの学生に根強い人気があります。また、京都にあるKTSで織りに没頭できる時間や空間、伝統的な西陣綴機で織る経験に価値を見い出し、インスピレーションを受けられると海外から継続的に来られる作家グループもいます。

伝統の厚みと、挑戦できる場。間口は広く、奥が深い。そんな綴織を実感できる確かな土台があるのが、スクールの綴織の特長です。

「大作を可能にした明治期の綴大機。ゴブラン織に触発された二代が改良考案したもの。」
『錬技抄 川島織物百四十五年史』116頁より

二代はフランスのリヨンの絹織物工場などを見学したり、パリの国立ゴブラン製造所に数日間滞在。そこでタペストリーに使われるゴブラン織を見て、経糸を隠すように緯糸を織り込んでいったり、下絵に沿って緯糸を織幅の途中で引き返して模様を織り出すなどの織り方が、日本の綴織と同じと知ります。

参考文献:
高向郁男「綴織あれこれ」、『SHUTTLE かよい杼染織技法の公開』カワシマ・シャトルクラブ発行、1987年、60-73頁
杉本正年『錬技抄 川島織物一四五年史』、株式会社川島織物発行、平成元(1989)年、103-104、116頁
TOPIC欄、「LETTER FROM KAWASHIMA TEXTILE SCHOOL」1993年7-8月号No.34、川島テキスタイルスクール発行

2021ワークショップ受付開始のお知らせ

2021年2月1日(月) 9:00-よりホームページ内ワークショップページにてスケジュールの公開・申し込み受付を開始しています。

年間を通して初心者の方から経験者の方を対象とした、織物と糸染めの基礎から応用までのワークショップを30講座ほど開催しています。さっそく4月開講講座(3月申込締切)もあります。皆様のお申し込みをお待ちしています。

なお、新たにワークショップ受講規約を設けました。お申し込みの際は同意が必要となりますので、必ずご確認ください。

スクールをつづる:国際編10 修了生インタビュー「織りの学びをものづくりの姿勢や生活で育む」Flora Waycottさん

KTSは開校当初から国際的に門戸を開き、京都で手織りの確かな技術が身につけられると受講者の口コミで評判が徐々に広まって現在に至ります。国際編シリーズ最終回は、前回紹介したPrangさんの先生であるFlora Waycottさんのインタビューです。Floraさんは、交換留学でKTSで学び、ロンドンでテキスタイル・デザイナー、ニュージーランドの大学でテキスタイルを教えるキャリアを経て、現在はオーストラリアを拠点にアーティスト・イラストレーターとして活躍している方です。

オーストラリアの自宅のアトリエにて
Flora Waycottさん(イギリス・日本)
アーティスト、イラストレーター
オーストラリア在住
2003年、テイラード・コース*受講

*留学生を対象に、個人の要望にあわせて実施していたコース。2009年終了。

−−KTSに学びに来た経緯を教えてください。

ウィンチェスター美術大学2年の3学期に交換留学として来ました。KTSの先生たちが、私の2、3カ月の滞在に合わせたスケジュールを組んでくれました。まずは堀先生による3日間の染色コースを受講して絹糸の化学染色と天然染色を学び、染めた糸で長さ6メートルの反物を織りました。それから絣の技術を学びたくて櫻井先生の指導の下、つばめたちが横全体に飛んでいるモチーフの長さ3メートルの布を制作しました。使用したのは絹糸で、茜の根を使って糸染めしました。(専門コース)1年次の中嶋先生によるスピニングのクラスにも参加し、羊毛から手紡ぎ糸も作りました。

−−ニュージーランドのマッセー大学ウェリントン校でテキスタイルを教えるようになってから、どうして教え子にKTSを薦められたのでしょうか?

私は、織りに強い関心を示した生徒であれば、KTSで新たな視点を得て、日本独自の技法の制作プロセスを楽しめるだろうという確信がありました。私のクラスの中でも常に注意深く、熱心で、優秀な生徒だったPrangは、大学卒業後も、熱心に織りの知見を広げていました。京都に行ってKTSで学ぶことは、彼女にとって織りの学びを深めるだけではなく、世界の中でも美しい場所に滞在して際限なくインスピレーションを受けられることにおいて、素晴らしい経験になるだろうと思いました。私は彼女の受講を聞いて嬉しくなり、私がそうだったようにKTSで素晴らしい思い出ができるように願いました。

2003年、KTSで機に向かうFloraさん。「絹の綛を茜の根で染めた後、櫻井先生に教わった絣の技法を使い、つばめが飛んでいる布を織りました。」

−−KTSでの学びで印象深かったことはありますか?

KTSで過ごした時間は、懐かしく思い出すことができる宝物のような経験で、深い感動が残っています。私は幼少期に日本で育ちましたが、京都に行ったことはありませんでした。京都に滞在し、このようなクリエイティブな環境に浸るのは夢でした。織りはゆっくりと目的を持って取り組む修練です。クラスメイトが細心の注意を払って、心を込めて取り組む姿勢を見るのはとても刺激になります。私たちは、自分で糸を染めました。まだ機に触れる前の段階で糸を紡ぐ機会も得られて、織りの全行程を初めから経験できたことで、仕上がった時の満足感が大きかったです。スクールは親密になれる環境でしたので、私たちは皆、互いのプロジェクトを知ることができました。週を追うごとに、それぞれが織り進んでいくのを見て楽しみながら、互いに励まし合っていました。滞在中に、かねてから興味を持っていた染め、織り、羊毛の手紡ぎ、絣といった様々な技術を試すことができたのは、とても幸運でした。

学びを楽しめたのと同様に、スクールの皆さんが温かく、友好的に接してくださったことを覚えています。ある日、私たちは学生グループで、有名な藍染作家の新道弘之さんの工房を訪ねて、彼の藍甕(あいがめ)を使わせてもらって1枚の布を染めました。そこで、スクールから参加した他の生徒たちと家族のように仲良くなれました。修了時に皆さんが、スクールで撮影した写真が入ったアルバムや折り紙で作った動物たち、手紙と小さな手作りの贈り物をくれました。思い出の品として、今もすべて持っています。

−−KTSで学んだことで、どのような影響を受けましたか?

テキスタイルの知見を広げ、創作活動の基盤を築くことができ、学生時代にKTSで学ぶ機会を得られたことをありがたく思っています。イギリスに帰国後の大学の最終年だけではなく、クリエイティブ業界で働きたいという目標に向かう方向性が見えました。KTSの先生も生徒も、作品の細部まで注意を払って大事に扱うことの恩恵と利点を教え込んでくれました。そのことを私は、アート作品や生活においても、できる限り実践しています。学び、成長し続けるために、できるだけ早くスクールに戻って他のコースを受講できる日を楽しみにしています。

−−Floraさんにとって織りとは?

織りは手をかけ、時間をかけるもの。焦って織る必要はなく、実際にそうはできません。織るには忍耐と献身、決意が必要で、それができれば、情熱を注げる最高の対象になります。織ることに専念して没頭する時や、織り進めるにつれて仕上がりが進化できる時、愛する何かに深く入り込んで静まり返った時間感覚すべてが、私には魅力的なのです。それは素晴らしい空間です。私は現在、アーティストでありイラストレーターですが、小さな機を持っているので、織りたいと思った時につながれる。織りの実践には、日々の暮らしに取り込める要素がたくさんあります。アート作品を制作する時でも、織りと同様に焦らず、大切に取り組むようにいつも心がけています。

「私にとって、絵を描くことと織りは本質的につながっています。細かなディテールと丹念に考えた構図は常に存在しています。」
website: Flora Waycott

instagram: @florawaycott

国際編シリーズをお読みいただき、ありがとうございました。2月16日からは「綴織(つづれおり)編」を予定しています。どうぞお楽しみに!

2021年ワークショップパンフレットが完成しました!

2021年2月1日(月) 9:00-

上記日時よりホームページ内ワークショップページにてスケジュールの公開・申し込み受付を開始いたします。開始前のお申し込みは受付できませんのでご了承ください。

年間を通して初心者の方から経験者の方を対象とした、織物と糸染めの基礎から応用までのワークショップを30講座ほど開催しています。さっそく4月開講講座(3月申込締切)もあります。皆様のお申し込みをお待ちしています。

なお、新たにワークショップ受講規約を設けました。お申し込みの際は同意が必要となりますので、必ずご確認ください。

スクールをつづる:国際編9 修了生インタビュー「絣の作品を見せてくれた先生の足あとをたどって」Aroonprapai Rojanachotikulさん

川島テキスタイルスクール(KTS)を紹介するシリーズの国際編。手織りの世界において国際的な知名度があるKTSは、かつてスクールで学んだ方が修了後にテキスタイルを教えて、今度はその生徒の方が学びに来るという独自の繋がりが育まれています。第9回と10回は、そんな先生と生徒のインタビューをお届けします。まずは生徒のAroonprapai Rojanachotikulさんに先生から聞いてKTSを知った経緯、印象深かった学び、自身が考える織りとは、などについて話を伺いました。

クラスの準備としてサンプルの整理するAroonprapaiさん
Aroonprapai Rojanachotikul(Prang)さん(タイ)
テキスタイル・アーティスト、天然染料・顔料の専門家
タイ在住
2013年、天然染色ワークショップ
2014−15年、ビギナーズ・絣基礎・絣応用I,II,III*受講

*現在は絣応用IIの一部

−−KTSに学びに来た経緯を教えてください。かつてKTSで学んだ先生に、どのような経緯でこのスクールを勧められたのでしょうか?

私は、ニュージーランドのマッセー大学ウェリントン校のテキスタイルデザイン学科を卒業して、2012年にタイに帰国。ハリプンチャイにある手織りの研究所(Hariphunchai Institute of Handwoven Textiles)で訓練を受け、ブロケード織りのアーティストとして働いていました。1年が経ち、もっと他の織り技法を探求したいと思った時、マッセー大学の2年次に、私の先生だったFlora Waycottさんが自ら織った絣織りを見せてくれたことをふいに思い出したのです。日本の京都にあるKTSで絣を学んだと話していたことも。

そこで私はインターネットで検索して、KTSを見つけることができました。その時期に募集していた留学生向けプログラムを調べ、コースや施設、環境を調査する手始めに、2013年の天然染色ワークショップに申し込みました。その時、スクールで素晴らしい時間を過ごせたので、今度は絣コースを受講しようと決めました。2014年に再びKTSに戻り、より長く滞在できることで私は嬉しくなってFloraに連絡し、彼女の足あとをたどっていることを伝えました。Floraは、私がKTSで良い時間を過ごせるように願ってくれました。

−−KTSでの学びで印象深かったことはありますか?

スタッフも生徒も皆さんがとても親切に接してくれ、できるだけ手助けしようとしてくれたことです。クラスメイトは既にテキスタイルに携わっている人や、興味があってこれから学びたいと思っている人の集まりで、様々な分野の素晴らしい人々との出会いがありました。一緒に京都中の旅を楽しんで、生活や文化も共に学びました。授業では、染色で思うように色が染まらなかった時、多くの色をどうにか染め直すのに堀先生が手伝ってくださったのを今でも鮮明に覚えています。雪が降ってとても寒くて暗い日、経絣の経巻きをする時に、多くの日本の学生が手伝ってくれて仲良くなれました。冬休みが差し迫り、休み前に何とか織りあげようとして機から離れずにいた時も、彼女たちは私がきちんと食べているかを確かめに来てくれました。体調が優れなかった時も、皆さんが気遣ってくれた。多くの思い出ができたKTSを第二の故郷のように思っています。

「私自身の作品と、教えているワークショップのサンプル。椰子の葉の写本を作る伝統的な技法で、寺院への供物として作られています。へら状の竹と糸を織り合わせて作られています。織りとかぎ針編みの組み合わせです。この技法は、チェンマイのメーチェム地区でのみ見られ、今日では、この技法を実践している人はごくわずかです。」

−−KTSで学んだことで、どのような影響を受けましたか?

私は今、教える仕事もしていることから、教え方も影響を受けたと思います。KTSの授業は、すべての過程において綿密かつ正確で注意深い。それは学習、教わる上でとてもいい方法だと思いました。KTSで教わったように、私も生徒をうまく導けるように心がけて教えています。そうすることで私自身も、体系的に細やかに教えるための修練になっています。

−−Aroonprapai (Prang) さんにとって織りとは?

時が経つにつれ、その意味合いが大きく変わりました。かつて、私にとっての織りは、自己表現のために作り出し、気持ちと手技をつなぎ合わせる方法でした。時折、ストレスを和らげることもできました。今、織りと私の繋がりは深まっています。私の体は機と一つになり、手が杼、頭の中ですべての糸を通して綜絖枠を上げ下げしているような感覚です。長い年月をかけて確実に、より意味のあるものになっています。織りと私を繋ぐものは、もはや機と織物の背景に留まらずに、私の人生哲学に影響を与えて視野を広げています。織っている時にミスが起こり、そこに学びがある。ほとんどのミスは修正可能。だからミスを恐れずにやってみようという教える上の指針となるのです。

instagram: @prang_aroon

2020年度 川島テキスタイルスクール修了展

会期:2021年3月10日(水)~14日(日)
会場:京都市美術館別館 1階
時間:10:00-17:00 入場無料

タペストリー・インテリアファブリック・ファッション・留学生絣作品 他
専門コース、留学生作品他を展示します。皆様のお越しをお待ちしています。

下記本展における新型コロナウィルス感染拡大防止対策をご確認の上ご来場ください。今後の状況によっては開催日時を変更する可能性があります。その際は速やかにスクールHPにてお知らせいたします。


本展における新型コロナウイルス感染拡大防止対策

【本展における新型コロナウイルス感染拡大防止対策】
新型コロナウイルスの感染予防・拡散防止のため、以下の対応で開催いたします。
ご理解・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

【ご来場の際のお願い】
・館内ではマスクの着用が必要です。
・来館時にサーモグラフィー等による体温チェックを実施します。体温が37.5度以上ある場合は入館いただけません。(京都市実施)
・ご来場の際に、氏名・住所・連絡先のご記入をお願いします。*2 ご記入いただけない場合は入場をお断りいたします。(京都市より要請、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策) ←今回は実施しません。(2021.3.3更新)←改めて実施する事としました。(2021.3.10更新)
・手洗い、手指消毒にご協力お願いします。
・以下の症状をお感じの方はご来館をお控えください。
 ‐風邪の症状がある
 ‐倦怠感(強いだるさ)がある
 ‐呼吸が困難である(息苦しい)
 ‐過去 2週間以内に感染が引き続き拡大している国・地域への訪問歴がある
・人と人との間隔の確保をお願いします。(2m目安)
・作品にはお手を触れないようお願いします。
・大きな声での会話はお控えください。

【対策】
・スタッフの検温とマスク着用
・手指消毒の設置
・手すりやコインロッカー等の随時消毒
・混雑した際には入場規制をかける場合があります。

*2 こちらの入館簿を印刷し、事前に記入した物を来館時にお持ちいただく事も可能です。
入館簿ダウンロード (1人につき1枚です真ん中の線で切り取ってお使いください。) ←今回は実施しません。(2021.3.3更新) ←改めて実施する事としました。(2021.3.10更新)


Beatrice Thompsonさん(オーストラリア)インタビュー

展覧会のイメージで使用しているタペストリーを制作したビアトリスさんに、KTS修了後の制作や生活についてインタビューをしました。ビアトリスさんは2019年秋の絣基礎、絣応用I-IIIのコースを受講しました。

 –日本で絣を学んだことで、作品制作の幅が広がりましたか? どのように広がったのか教えてください。

KTS修了時、目の前に全く新しい世界が開けた感じがしました。私は以前から絣に魅かれ、基本的な織り方を理論上は理解していましたが、絣のもようを織る全段階において、全ての糸が揃った状態をどう保つことができるのか、にまで考えが及んでいませんでした。受講は、制作過程を実用的なレベルで段階を追って学べた素晴らしい機会となり、これから歩む上で優れた基礎を身につけることができました。

私は以前、織りに先立ち、経糸に写真の画像をシルクスクリーンでプリントした、とても写実的な作品の制作を試みたことがあります。KTSでは幾何学や抽象的な模様に焦点をあてることが楽しく、さらにそれを進めていこうと思っています。糸染めに関しても、それまではさほど経験がなかったのですが、KTSで学んでスキルに自信が持てるようになり、この先、染めに取り組んでいくのも楽しみです。

今回のKTSの受講が初来日となり、私は間違いなくこの経験が好きになりました。とても刺激的だったので。近い将来、日本そしてKTSに戻って、再び織りに没頭し、絣の技術を学ぶ時間が持てることを望んでいます。皆さん同じ思いだと思いますが、コロナが早く収束することを願っています。

–KTSで学んでから、これまでどのような制作に取り組みましたか?

私はフルタイムで働いているため、織りや制作の時間を十分に取れないのですが、2019年12月にKTSを修了して以降、何とか時間をやりくりしていくつかのプロジェクトに取り組んでいます。スクールの最終週に、私はオーストラリアに戻ってから織るタペストリーための、絣の経糸を準備しました。KTSの教室やアトリエ、染色室は、設備が整っていて素晴らしかったです。帰国してからは、主にサンプル制作と、自宅の限られたスペースで持っている道具を使って、自分で絣の技術を学び続けていく方法を見つけ出そうとしています。2020年にはタペストリーと、布に絞りを施した椅子張り生地、の絣ではないコミッションワークを仕上げました。今年は、もっと壁掛けを制作したいと思っています。

instagram: @beatrice_t_thompson