制作の先に:「場所」へのフィット感 綴織タペストリー「こえ」が(株)川島織物セルコン本社内に登場

学生が制作した綴織タペストリー「こえ」が、このほど(株)川島織物セルコン本社内に展示されました。初日には山口進会長、川島織物文化館(以下、文化館)の館長やスタッフ、制作した学生などが集い、作品を囲んで言葉を交わしました。その様子をリポートします。

スクールでは毎年、専門コース一年目の集大成として、綴織タペストリーのグループ制作を行っています。「場所」に合わせてテーマを決めるのが課題の肝で、2021年度制作分の展示場所の一つが、本社内の文化館から本館に入る休憩スペース。デザインを考案した近藤雪斗さんは、「こえ」のテーマについて「ここを『展示と人』から『人と人』の関係に戻る場所と捉えました。静けさから賑わいへと場面が切り替わるのに、こえがキーワードになると考えました」と紹介。

「こえの色 こえの光 こえの導」というコンセプトについては、「文化館での鑑賞は知らなかったことを学べる非日常のインプット。会話が始まるこの場所を、鑑賞の学びを生かす最初の場だと認識し、新しく進んでいくイメージと、人のこえで夜が明けて、人と人の世界に戻っていく朝のようなイメージを重ねてつくりました」と説明しました。

会長は「私はいろんな建築家と話をする機会が多いのですが、この場をどう考えるか、人がどうふるまい、どんな関係性を持つかというような考えをまとめながら設計すると皆さんおっしゃいます。建築に近い考え方だと思いました」とコメント。正面からじっと作品を見つめ、こんな質問も。「建築家は最後まで迷っている。完成してからも、まだ迷っている人も結構多いのは面白いと思っているんです。作品としては完成しましたが、まだ迷っていることはありませんか?」近藤さんが「この壁にはこのサイズでしたが、欲を言えば、さらに大きいものをつくってみたいです」と答えると、会長は「今朝の第一感で、この場所へのフィット感はあると思いました」と全体を眺めて話しました。

文化館の辻本憲志さんは、「(見学案内をする時)文化館では、芸術や文化活動の面から説明しますが、会場を出てこの空間に来ると一転、経済活動を表に出す場面になります。続けて案内するのに、このタペストリーの場面の切り替えを説明することによって、私もスムーズに行えます。着眼点が面白い」と語りました。

近藤さんは「今日はそれぞれの経験からの見方をふまえて感想をいただきました。これから、初めて見る人がどう見てくれるのかが楽しみです」と笑顔を見せました。文化館の見学や、(株)川島織物セルコン本社にお越しになる際は、ぜひご覧ください。

*ご参考
旅するタペストリー(「第5回学生選抜展」出品)
同年(2021年度)のグループ制作
綴織の授業紹介
グループ制作のプロセス紹介