本科

美山町・北村を訪ねて 本科 龍山千里

5月27日、藍染めによる創作を行なう新道弘之さんの工房を見学するため、私達は美山町・北村をおとずれた。
立派な北山杉をバスから眺めながら、京都の山奥深いほうへ向かっているのを感じつつ、
着いたらそこは、時間の流れがまったくちがうように思えるほどに、しずかで緑ゆたかなところだった。
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美山・北村町

今回見学でお世話になった新道弘之さんは、学生の頃より藍染めに魅せられて、
長い間制作活動や研究を続けてこられた。そのなかで彼が、こつこつと収集してきたものを
展示した「ちいさな藍美術館」も工房に併設されており、わたしたちが伺ったときは、
日本の藍染め絞り、また全世界各地でつくられてきた藍染めのコレクションを見ることができた。
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日本の藍染め絞り
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中国の藍板締め絞り

まず、藍染めをするには藍の植物を染料化する必要があり、藍を染料として使用するには、
水と酸素を使って藍の色素そのものを抽出する方法、または葉から堆肥をつくる方法の
大きくわけて二種類がある。日本では古くから、蓼藍の葉を発酵させて堆肥をつくる方法で
藍染めが行なわれており、堆肥は「蒅(すくも)」と呼ばれる。石灰と木灰の灰汁を使い、
蒅を発酵させ、7〜10日かけて染液を作るとのこと。事前に観賞した「BLUE ALCHEMY」*でも
出てくるように、新道さんはこの工程のなかで、日本酒も藍甕のなかに入れて発酵させる。
職人一人ひとり、独自のレシピがあり、今ではようやく勘で染めることができるようになった
新道さんも、そこに辿り着くまでには長い時間が必要だったと話していた。

新道さんが考案した新しい絞り技法による藍染めの工程の一部もみせていただいた。
どのように手を動かせば、よりうつくしい模様ができるか研究を重ねて生まれた絞り模様には、
削ぎ落とされた美を感じた。
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工房のなかに並ぶ藍甕
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絞り染めが施された布を水洗する様子

今回、一番わたしが心を動かされたのは、新道さんの制作してきた布の切れ端を、
お母様が繋ぎ合わせて制作したという藍染めのパッチワークだった。
それはお母様がご自分の棺にかけるために制作された布で、最期を見送る際に使われたそうです。
染めた布地を隅々までいつくしむ、新道さんご夫妻・お母様のつくる姿勢に学ぶべきところがあった。
また、純粋にある人のことを想って、それだけの為につくられたものというのは深い愛情を感じられ、
ことばにしきれない感動があった。
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藍染め布のパッチワーク
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藍染め布のパッチワーク拡大図

新道さんはこれをわたしたちに見せながら、「きれいだろう。俺が作ったんじゃないもの。
自然が作り出した模様だから、きれいなんだ」ということをおっしゃっていた。
藍染めによって生まれる色にしろ、または絞りでできる模様にしろ、
人が作り出すものはどんなに完璧で整ったものを目指しても、
どうにもコントロールしきれない「ずれ」のようなものが自然と生まれる。
それはテキスタイルに関わらず、つくること全てにおいて言えることだと思うが、
実は、人はそこに美を見出しているんだということに気づいた。

長年藍を研究されてきた新道さんのお話を通して、それは簡単な事でないことも同時にわかり、
美しさを目指して人が何かを作り出すとき、自然のちからが関与できる隙のようなものをつくることが、
ひとつの「技術」なのかもしれないと思った。

*『Blue Alchemy -Stories of Indigo-/ブルーアルケミィ ―藍の物語―』 アメリカのドキュメンタリー監督、Mary Lanceさんが世界各地の藍の現場を訪ね、7年の歳月をかけて制作したドキュメンタリーです。新道さんのインタビューや工房の様子をはじめ、世界の藍製造の貴重な映像をみることができます。

ホームスパン 本科 渡井あかり

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2015年の初めての授業が、このホームスパンになりました。

昨年の夏にスピニングの授業で洗った原毛を染色し、糸を紡いでチェックのマフラーを織ります。
私は今回、クリスマスやバレンタインの時期によく見かけるお菓子の箱をイメージして
マフラーの色を決めました。

羊毛はフェルト化しやすい性質を持っているので、染める際に非常に気を使いました。
温度の上げ下げをなるべく緩やかに、染色中に必要以上に触らないなど、
仕上がりが斑になってもいいからとにかくフェルト化させないよう注意して染色しました。
欲しい色がサンプルになく、勘染めのように少しずつ染料を混ぜて染めたので、
染料を染液に混ぜつつ原毛に刺激を与えない、という作業がとても難しかったです。
仕上がりは、やはり色に迷った原毛ほど固くフェルト化しかけていたので、
毛をほぐす段階で少し苦労しました。

今回は染めた原毛を使うということで、昨年とは違い混色が出来るようになりました。
ほぐした原毛を二色、同時に梳かすことで中間の色をつくります。
私は濃く染めたピンクと白い原毛を混ぜ、薄いピンク色の原毛をつくりました。

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およそ半年ぶりに紡毛機の前に座り、本科のほぼ全員が緊張していたと思います。
私もスピニングの授業中さえ思うように紡げず悪戦苦闘していた記憶があったので、
そのうえ感覚まで忘れていたらどうしよう、という思いでいっぱいでした。
しかし、糸紡ぎをはじめてあまり経たないうちに、
ふとしたきっかけからコツを得たように、するすると紡げるようになりました。
糸紡ぎは自転車と同じで一度感覚を覚えれば忘れない、という
先生の言葉は本当だったのだと少し感動しました。
ただ糸が滑らかに細く紡げるようになったかわりに毛が手の中から出ていく量が上手く調整できず、
細さが均一でないファンシーヤーンのような糸ができあがってしまいました。

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糸が紡ぎ終わると、ついにマフラーを織り出します。
天秤機を使った組織織で、私はまだ経験のなかったななこ織という組織を選びました。
途中、経糸の細く紡ぎすぎた部分が切れたり、引っかかって伸びたり、
そのせいで筬を変えることになったりと、反省点は様々ありましたが、
織り上がったマフラーは柔らかで触り心地もよく、ほかとは違う達成感を得ることができました。
この達成感は、一から糸を紡いで織るというホームスパンならではのものだと思いました。

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10月7日(水)-15日(木)にワークショップ「ホームスパン」を予定しています。
糸を紡ぐところからマフラーを作ってみませんか?ぜひご参加ください。
詳しくはこちらをご覧ください。

天秤機実習 本科 渡瀬あゆみ

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9月に入り、天秤機を使った授業があり、マフラーと8種類の組織のサンプルを織りました。
天秤機はいろいろな模様を織ることができますが、
タイアップが複雑で織り出す前の準備が大変でした。
一番驚いたのは、踏み木の高さの調整の細かさです。
機の下に潜り込んでの作業も想像以上につらく、肩や腰が痛くなりました。
早く終わらせたい一心で、いつもより集中できた気がします。

織り出してからの苦労は、緯糸の密度でした。
かなりゆるく織らないと柔らかく仕上がらないと先生から言われていたのですが、
かまちを途中で止める動きは神経を使い、慣れるまで大変でした。
しかしその分どんどん織り進められるので、織り上がりは思ったよりも早かったです。

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○織途中

飛んだ目の修正と、房の始末が終わったら、次は縮絨です。
今回は洗濯機で縮絨を行いました。2〜3分ごとに洗濯機を止め、
様子を見るたびに縮んでいくマフラーを見るのはとても不思議でおもしろかったです。
タオルドライし、乾かすと完成です。ふわりと仕上がったと思います。
寒くなり、このマフラーを巻いて出かけるのが待ち遠しいです。

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○縮絨後

織実習「綴織」 本科 深町彩子

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6月の21日から約1ヶ月間、綴織の授業を受けました。
私は、「綴織」と言う名前自体を入学してから初めて知り、
はじめはどんな織り技法を使うのか見当もつきませんでした。
綴織は主にタペストリー等を織る織り方で、古くから世界各地にその織り技法が残っています。
日本には10世紀前後に大陸から伝わってきたそうです。
平組織で織られ、爪で掻き寄せながら緯糸を入れていきます。
糸を入れ、櫛で緯糸を詰めることも他の織物にはない技法だと思います。

始めの2週間は基礎を学ぶ為に裏織り、表織りのサンプルを作りました。
裏織りは、糸の始末が容易なこと、織物が汚れないことが強みですが糸が飛んでないか、
きちんと織れているか、経糸の下から毎回確認をしながら織るのが大変でした。
反対に表織りは、織られている面を見ながら織ることが出来ますが、
裏で始末した糸がどのようになっているかを確認することができません。
慣れるまでは何度か糸を解き、やり直しながら2枚のサンプルを完成させました。

そして、残りの2週間でそれらの技法を駆使しながら、
それぞれ「花」を題材に自由制作で縦45cm×横45cmのタペストリーを作りました。
私は7月の制作だったこともあり、早朝の涼しい時間を思い朝顔の花に決めました。
初めにデザインを決め、起こした原画から色の配色や配分を細かく描き込んだ下絵を作ります。
この正確に描き移した下絵を経糸の下に敷き、綴れを織っていきます。

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原画                   織下絵

私は朝顔の涼しげなイメージを織りで表現したいと思い、あえて色見を少なく背景も無地にしました。
試織をして色自体はすぐ決まりましたが、実際に織り始めると、花部分の箇所が細かく、
また織り易さを考えデザインを90度横にし、格子側から織り出したので、いざ花の部分に当たると
同時進行で様々な箇所を織らなければならず、1日かけてもなかなか前に進まない日が多かったです。
綴織はいままで学んだ他の織物と違い、下絵を元に徐々に絵が織り造られていく、
出来上がっていくのが目に見えてわかるのが醍醐味の一つだと思いました。
自分の作品が一つの形として完成した時は、とても嬉しかったです。

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これから、この綴織の織り実習で学んだことを活かし、
縦2m×横3mの大きな綴織の作品を、グループで制作していきます。
今まで学んだことを活かし、皆で一つのものを作り上げて行くのが今からとても楽しみです。

スピニング -羊毛を紡いで- 本科 鍋田晃子

スピニングの授業では、羊の毛を洗い、糸を紡ぐことを学びました。

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写真は、羊から刈り取られたままの状態の毛です。
汚毛と言います。とっても動物の感じが伝わってくるもので、
この大量の汚毛を初めて見たときはびっくりしたのと同時に
これで作るのだと思うとワクワクしました。
まず、汚毛を洗うことからはじめました。
洗毛は毛質や汚れの程度で洗う方法を調整して少しずつ丁寧に
フェルトの様に固まらないように気をつけて洗っていきました。

原毛2

出来上がった羊毛(原毛)を見て感動!真っ白でふわふわの原毛が出来上がりました。
さらに、ここから糸を紡ぎやすい様にいくつかの行程を経て原毛を整えていきます。

そして初めての糸紡ぎ、ウキウキしながらはじめたものの見るのとするのじゃ大違い。
細く均一に作ろうと思うほどに難しく、なんだかいびつなものがどんどん紡がれていきました。
しかし、先生の手や足の使い方をじっと見て、何度も回数を重ねていくうちにだんだんと
なんとか出来るようになりました。紡毛機で糸を紡いでいるときの
カタカタコトコトという音が心地よく教室中に広がっていました。

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次はこの原毛を使い、冬にマフラーを織る予定です。どんなものが出来上がるのか次回の授業も楽しみです!!

美山のちいさな藍美術館を訪ねて 本科 金子かおる

6月12日、藍染め作家の新道弘之さんの工房を訪ね、京都府南丹市美山町に行きました。

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美山に向かうバスの中で見た映画『ブルーアルケミィ ―藍の物語―』*はとても興味深く、
特にインドでのプールの中で藍の染料を出す作業が印象に残りました。
緑色の液体が徐々に藍色になっていく様子には驚きました。

初めての美山。だんだん山奥に向かうにつれて期待感が高まります。
バスを降りると日本昔話の世界が広がっていました。
茅葺き屋根の景色もさることながら、空気がとても澄んでいてとても清々しい気分になりました。
小さな藍美術館まで景色を楽しみながら向かいました。
新道さんの工房は茅葺きの家の中でも大きいそうで、独特のゆったりとした空気が流れていました。

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2階の美術館は新聞の記事で見たよりも広く、全面に大きな布が広がっていて圧巻でした。
今回は日本の藍染めの展示は無く、ヨーロッパの藍染めの展示でした。
ヨーロッパの染色に藍染めがあった事にとても驚きました。
ヨーロッパでは藍染めを「インディゴ」ではなく「ブループリント」と呼んでいて、その響きが可愛く感じました。

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インドから伝わった木版染めも模様はアジア風のものは少なく、
ヨーロッパらしい麦の穂のモチーフがデザインされているものや花柄など、
現代のプリントデザインとしてスカート等に使えそうなものが多く、見ていて楽しかったです。
布に添えられていた写真が当時使われていた様子をイメージし易くとても参考になりました。

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午後からは工房で絞り染めのお話や、藍染めの実演をしていただきました。
実際に絞った布を藍甕に浸け、取り出した布が酸化し深緑から藍色に変わっていく様子を初めて見て感動しました。
その後に拝見したドキュメンタリービデオは他の作家の方の作品も見る事が出来、
いろんなアプローチの仕方を学ぶ事が出来ました。

*『Blue Alchemy -Stories of Indigo-/ブルーアルケミィ ―藍の物語―』 アメリカのドキュメンタリー監督、Mary Lanceさんが世界各地の藍の現場を訪ね、7年の歳月をかけて制作したドキュメンタリーです。新道さんのインタビューや工房の様子をはじめ、世界の藍製造の貴重な映像をみることができます。

ちいさな藍美術館10周年記念企画展「西方の藍染」の会期が7月30日(水)まで延長されることになりました。

織実習「布を織る」 本科 大宮 恵

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4月に入学してから2ヶ月、3回目の織実習で、「絵画から読み取るストライプ」をデザインし、
幅40cm、長さ8mの布を織りました。白糸+色糸4色の計5色を使ったストライプです。
デザインに沿って自分の欲しい色を染色しました。
と、ここまでは、これからどんなことをして、どんなものが出来上がるのだろう??
とワクワクウキウキしながら準備をしていたのですが、
作業が進むにつれ、雲行きが怪しくなっていきました。

今回使用する糸は、とても細く、長いので、すぐに絡み、扱いづらく、
うまくいかないことが多くて、平常心を保つことがとても難しかったです。
織りの作業に入ってからも、きれいに織り進めることが出来なくて、
織っては戻りを繰り返し、進まないし、きれいでもないし、
どうしよう、とため息をつく時もありました。

それでも8mの長さを織っていると、問題点に対して色々と試すことが出来て、
発見につながることもあり、だんだんと調子よく織れるようになりました。

織り上げ後、学校玄関の吹き抜けの2階から布を垂らして飾ったところを見ると、
終わってほっとした気持ちと、またやりたい!という気持ちが湧き、
これからの私の課題である「ひとつひとつの工程を丁寧にする」ことを踏まえ、
いつかリベンジしたいと思っています。

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本科9名の織った布を飾ったところです。
風呂敷を作り、ストライプの柄がうまく出せるように中身と包み方を工夫しました。

励まし合ったみんなで、出来上がりを一緒に喜んだ達成感は、忘れられないと思います。