仕事としての織りを考える機会に (株)川島織物セルコンで緞帳のインターンシップ

専門コースでは2年目の専攻科に進むと、希望者は(株)川島織物セルコンでインターンシップを経験できます。2022年度は2つのプログラムが設けられ、それぞれ希望者が参加しました。一つは呉服開発グループで、帯のデザインと試作(昨年のリポートはこちら )、もう一つは美術工芸生産グループで、綴織の緞帳のデザインと試作です。今年新たに加わった緞帳インターンシップを紹介します。

綴織は、スクールを作った(株)川島織物(現・川島織物セルコン)が得意とする伝統的な織法。スクールでも1973年の開校当初から、綴織は柱の一つとしてずっと教え続けています。現在は専門コース1年目に、綴織の基礎をはじめ、織下絵の描き方や絵画的な織り表現を学ぶ授業、そしてタペストリーのグループ制作を行っています。学生はそうした土台をつくった上で、緞帳のインターンシップに臨みました。

◆ 早く、正確に仕上げるために

事前準備は原画作成。学生それぞれの出身地のホールに納める想定で、緞帳のデザインを考えます。想定サイズは14×8メートル、そのなかで織りたい部分を1メートル四方で選んで、その試織を10日間のインターンシップで行います。現場では専門家の指導の下、織下絵をつくり、使う糸を決めたり杢糸を配色したりと色糸を設計して製織へ。本来、会社では分業されているところを、このインターンシップでは、一連の流れで取り組むことができます。

スクールの報告会で、参加した二人の学生が口を揃えて言っていたのは「理論的に織る方が早く、正確に仕上げられると実感」したこと。「スピードと品質の両立」は、製品をつくる現場で欠かせないもの。積み上げる段数の数え方や注意点を学び、実際にやってみて、それが腑に落ちたようでした。たとえば、きれいな丸をどうやって織るか。学生の一人は「私は感覚で織りがちなのですが、何段織ったら違和感なく見えるかを最初に確認した方が、より早く織れて、完成形もよくなるとわかりました」と話しました。

◆ 高い集中力でやり切れた自信

製織では、どう織ったらデザインの意図が自然に伝わるか、専門家から技法の助言を受け、プロの目線や思考を学べたのも大きかったようです。「私の少しの間違いにもすぐに気づいて教えに来てくださって、判断力の早さに驚きました。長年の経験と、周囲をよく見る力を感じました」。具体的な技法から織りに向き合う姿勢まで、スポンジのように吸収してきた学生たち。スクールの報告会でも、それぞれに得たものや、見えてきた課題などについて、終始生き生きと語っていました。

「この経験をきっかけに、仕事としての織りをどう考えたか、織りとどう生きていきたいかを考えてみるのも大事」と、スクールの山本ディレクター。参加した学生はインターンシップを通して、スクールの制作とは違う企業の現場での織りを知り、作業の向き不向きに気づいたり、自身と織りとの関わりを見つめたりする機会になったようです。

当初10日間で仕上げるスケジュールは厳しいと感じていたものの、限られた時間で計画的に進め、高い集中力でやり切れたことは、学生の自信にもつながった様子。仕上がった実物を見て、報告を聞いた他の学生も刺激を受けていました。学びの勢いに乗って、今度はスクールで自身の制作に力を注いでいきます。