専攻科

紗と絽 専攻科 小郷晴子

小田芽羅先生による「竹糸で織る紗のストールと絽のランチョンマット」4日間のワークショップに参加しました。
口頭だけでは、どの様に織られているのか、理解する事が難しい仕組みでした。
ワークショップでは、機掛けから織りまで丁寧に教えて頂き、基本的な紗と絽の織りを理解する事が出来ました。
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出来上がった紗のストール

紗と絽を織る際にポイントとなるのが、綜絖と筬の間に仕掛ける、経糸を捩(もじ)る仕組みの半綜絖です。
半綜絖用のふるえは、経糸総本数の半本数、糸を輪っか状にはた結びし作りました。結ぶ際に、輪の大きさを揃えなければ、開口の揃い方にも影響するのですが、はた結びが苦手なので難しく、器用さが必要だと思いました。
今回、ふるえ用に使用したのは、綿100%のカタン糸で丈夫な糸だそうです。

紗のストールに使用した竹糸は、シルクの様なコットンの様な・・・、不思議な肌触りです。
竹の繊維を撚った単糸を6〜8本撚り合わせてある竹糸を使用したので、カタン糸に負けない強度があり、切れる心配が無く、整経も織りも進めやすい糸でした。

半綜絖は、開口があまり良くない為、開口のより良い天秤機を使用しました。けれども、半綜絖の開口は良くは無いので、注意してシャトルを通さなければならず、織り上がってから見直してみると、経糸の浮いてしまった箇所が有り残念に思います。捩り部分には隙間が出来、進められるスピードが速いので、気持ち良く織ることができます。
隙間が多く、紗や絽にしか無い、独特な風合いと、軽やかな仕上がりになりました。
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左:紗 右:絽

今回のワークショップは、5人の織り経験のある方々と一緒に教えて頂きました。
織りの基本は同じだけれど、少しずつ違った方法を、お互いに見聞きしました。
ワークショップに参加する度に、より良い方法を見出す事が出来、学べる事が多いです。

鶴屋吉信にて作品展示 専攻科 萩原千春

京都の老舗和菓子店の鶴屋吉信京都本店の一階店舗から二階茶屋•お休み処へと続く階段の踊り場に制作したタペストリーを展示して頂いています。
二階では職人さんが目の前で生菓子を作ってくれ、お抹茶と一緒に食べることが出来ます。
そんな素敵な空間に飾る為のタペストリーを作らせて頂くことになりとても嬉しく思いました。

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今回の作品のタイトルは「和敬清寂」で茶道にとても深い関わりのあることばです。
「和」…和合・調和・和楽
「敬」…お互いに敬い合う
「清」…清らかと言う意味ですが、目に見えるだけの清らかさだけでなく、
心の中も清らかであるということ。
「寂」…静寂・閑寂
というように一文字一文字に意味があります。

来店されたお客様に、職人さんが一つ一つ丁寧に心を込めて作ったお菓子を
落ち着いて召し上がって頂けるような空間にしたいという思いからこのテーマで制作をしました。

近くに寄られた際には、是非足を運んでみて下さい。
http://www.turuya.co.jp/tenpo/honten_top.html

2012 Miniartextil Como 専攻科 佐藤淳


今回、イタリアのコモで開催されている「2012 Miniartextil Como」に入選したので、展覧会を見に行ってきました。

会場はイタリア・ミラノの北部のコモという町にある「ヴィラ・オルモ」という18世紀末に建てられた貴族の邸宅で、そこの館の一階の各部屋を使っての展示でした。

今回は初めての応募、それも海外への応募だったので、入選が決まった後に作品を送ったときには壊れずに届くのだろうかと心配しましたが、ディスプレイされている自分の作品を見たときには、自分の作品とは思えないほど変わっていて、ディスプレイの重要性と、コンセプトや作品のサイズの重要性を再認識できました。

また自分自身、今回の展覧会の規模や格式などがあまり分かってなかったので実際に会場に行って見てみて、レベルの高さに驚いてしまいました。今回の展覧会には自分のほかにも何人かの日本人の方たちも入選され、その中のお一人は大賞を取っており、非常に刺激になる作品でした。

今回はイタリアに6日間の滞在予定でそのうちの1日をコモへ展覧会を見に行き、残りの5日間はミラノの観光バス(日本の鳩バスみたいなもの)を使ってミラノ市内を観光しました。「最後の晩餐」のある教会や、町の中心部にある大聖堂等の歴史のある建物が非常に多く、教会の装飾などが興味深かったです。

インターンシップ(後編) 専攻科 小林七海子


イメージボード

<<前編(1週目)

二週目は工場での研修と、制作したイメージボードを元に織物デザイン・設計を行いました。工場で今まで見てきた作業が具体的にどのような役割があるのか、機械がどのように動いているかを間近で学ぶことができました。ワインダーの工程では紡績の機械で意匠糸を作って頂き、テンションのかけ方を少し変えるだけで全く異なる表情になる様子はとても興味深いものでした。完成度の高い商品を作るために、すべての工程で人の手や経験が欠かせないのだと感じました。

織物作成実習ではジャカード機を使用して実際に自分が企画した布を織らせて頂きました。糸や組織を選ぶ作業はわからないことが多く、社員の方に頼らなければいけませんでした。織り出してからも、硬い組織があって機械がうまく動かないなど問題もあり、机上では理解できない難しさを感じました。

最終日の講評には今までの研修で指導していただいた社員の方々にプレゼンを行いました。組織や糸の入れ方、織物として魅力的に見えるデザインなど具体的な指導をして頂きました。プレゼンは商品を引き立たせる重要な部分なので、もっと魅せる工夫を考えた方が良いと言われました。単にものを作るだけでなく商品として売り出すことを常に考えていけないのだと改めて理解できたように思います。

とても充実した経験が出来た二週間でした。現場の社員さんたちからは普段聞けないような仕事や機械のお話など、学校では触れられないようなことを学べました。この経験を忘れずに、魅せるものづくりをするための制作や勉強をしていきたいと思います。

インターンシップ(前編) 専攻科 山本李江

イメージボード

5月28日〜6月8日までの2週間、川島織物セルコンでインターンシッププログラムを受けました。自分が企画デザインし、織物設計したものを工場で織ってもらいました。そのテキスタイルを最終日にプレゼンテーションしました。

1週目は各専門の社員の方々からインテリアや機能・加工技術、織物、編物についての講義を受けました。これらはインテリアテキスタイルを企画する上で大切な知識です。また、イメージボードを作成しました。イメージボードは、空間やそれに付随する小物、デザインイメージ写真などを1枚の紙にまとめたものです。これは、その企画に関わる人の考えを統一化し、目標を定めるために欠かせないアイテムです。イメージ通りの写真を選び出し、1枚の紙にわかるやすく貼ることは予想以上に難しい作業でした。

学校での制作とは違い、会社ではブランドや販売価格によって使用できる素材や技術などの制限があります。また、守らなければならないルールもあります。その制限内で、お客様が「欲しい」「買いたい」と思える製品を企画提案していくことが大切なのだと学びました。

インターンを終えて、テキスタイルの知識だけでなく、経験を積まないと魅力的な製品は作れないのだと気づきました。これからは様々な素材や技法にチャレンジすることを目標に制作に取り組んでいきたいと思います。

>>後編(2週目)へ続きます

成人式 専攻科 廣瀬文乃

振袖と帯を織り、今年の成人式で着ました。

デザインに時間がかかってしまい、成人式までに出来上がるかとても心配でしたが
無事に織り終える事ができました。

成人式の日には、自分で着付けをしました。
織りの着物を着るのは初めてでした。着心地が良く、とても着やすかったです。
自分が織った物を着るのはちょっと恥ずかしかったのですが、家族には、似合ってるね、色が綺麗、などと言ってもらえ、久しぶりに会う友達に自分で織った事を話すと、とても驚かれました。

今回、振袖を織ったこと、それを自分で着る事ができたことは一生の思い出になりました。

大丸京都店 椅子張り生地&壁面装飾が出来るまで 専攻科 須田奏

大丸京都店の高倉通側出入り口付近にあるエレベーターホールの椅子張り生地と壁面装飾を提案させていただきました。設置も完了し、5月19日からは実際に使われています。実際に使ってもらうためのテキスタイルを作るのは初めてだったので、完成するのに思ったより時間がかかってしまいましたが、とても良い勉強になりました。

最初、このプロジェクトは修了制作の課題の一つとして取り組んでいて、
次のような事を考えていました:
・岐阜のY’s Textileにお願いして初めてジャガード織の生地を作った直後だったので、その経験を通して学んだ「立体的な布を作ること」と「様々な組織を隣合わせに織れること」の面白さを取り入れたい。
・ジュエリーや化粧品などの華やかな女性の雰囲気が香り立つ売り場と同じフロアのエレベーターホールなので、フェミニンな柔らかさと上品さも表現したい
-既定の木椅子の座面と背面で違う生地を使い、背面には実用性よりも装飾性を重視した生地を使っても良いのではないか。
・椅子の背面生地と壁面装飾に同じ生地、もしくはパターンを取り入れて部屋全体の統一感を出したらどうか。

これらの考えを基に、水玉で構成されたバニラのような生地を作りました。収縮糸を使って立体感を出しつつ、強い組織で織る事で、椅子張り生地として使える強度を保っています。椅子の背面と壁面装飾にはオーガンジーや和紙で織ったものなど、柔らかい生地を使うことを考えていました。今年の3月に行われた修了展ではこの時点での案を展示しました。

個人的にこの白い生地はとても気に入っているのですが、今振り返ってみると、これは単に自分が作りたいものを作った結果である気がします。十分に「大丸京都店のための生地」ということを意識しないで作ったということが大きな反省点です。


最初の提案の図。背面に和紙を織り込んだ生地を使っている。

この案を大丸の担当者の方にお見せしたら、案の定「京都にある大丸であることを強調して欲しい」ということ、「背面用にもっと強度のある生地を提案して欲しい」とのフィードバックをいただきました。これを受けて、改めてコンセプトを見直そうと決めました。そして「京都」と「大丸」の共通点について考え、双方が「芯を持ちつつ変化を続けている」という考えに至り、「変化」と「芯」の2つのキーワードを念頭に、「peacock」の柄を作りました。

大丸のロゴであるクジャクのイメージを用いて、デフォルメしたdaimaruの「d」が少しずつ変化しながら絡み合っています。色彩でも孔雀を意識しています。

バリエーションを付けるために色換えも作りました。
その際には次の事について特に考えました:
・エレベーターホールの空間の広さを考え、圧迫感のない色合わせにすること。
・空間と視覚的に繋がっている店舗との兼ね合いを考慮し、モダンな色彩にすること。

ここまでの成果を再度、大丸の担当者の方にお見せしたところ、
実用性に関するご指摘をいただきました:汚れやすい・汚れが目立つような薄い色の生地では困るということ、それと同時に暗い色ではない方が良いということ、そして隣接する靴売り場に置かれているシャンパンカラーの重機に合う色を考えてみてはどうかという内容でした。

デザインに関しては野田先生に相談に乗っていただき、椅子の座面と背面の両方に「peacock」とその色違いを使い、これらを好きに組み合わせられるようにする事を決めました。このことを意識して、新たに「peace」、「grape cider」、「hakka」の3つの色違いパターンを作りました。どれも薄すぎす、濃すぎない色を目指し、どの色同士を組み合わせても良いようにしました。


peace


grape cider


hakka

この4色分全てのサンプルをY’s Textileで織って頂き、汚れに強いポリエステル糸を使うこと、そして広い面積ではなるべく強い組織を使うことなどを教えて頂きました。そしてサンプル織りを全て大丸の方に見て頂き、壁面用の装飾と椅子の座面生地は「peacock」、背面生地は「peace」に決定しました。

壁面装飾については、立体的に作りたいと思っていましたが、具体的な作り方やデザインは採用される生地が全て決まってから考え始めました。
コンセプトは、椅子張り生地と同じ「変化」と「芯」で、これを違う方法で表現しようと決めました。そのためには、波打つ水面のような動きが良いと考え、様々な形の「波」を使ってサンプル作製をしました。


仕掛けが分かりにくい三角柱の波と、大きく動く円柱の波との間で迷いましたが、変化が大きく分かりやすい円柱を使うことに決定しました。そして、装飾の小口部分の扱いや、具体的に使う素材や寸法のことなどを大丸の方と相談させて頂いてから制作にとりかかりました。

作り方について野田先生にいろいろと教えていただいたのですが、やっぱり綺麗に作るのは難しいなと改めて痛感しました。

今回の制作を通じて、実際の使用に堪えるものを作ることの大変さを学べました。特に、自分が感覚的に良いと思うものと実用性を考慮した場合に取り入れなければいけない要素との兼ね合いは難しいことだと感じました。そして、自分が納得のいくものを作れるようにきちんと情報収集をしたり、周囲の人に助けをお願いしたり、相談にのってもらうことも自分の仕事の内だと学習しました。とにかく初めて体験することがほとんどだったので、戸惑う事が多かったのですが、最終的にはいろんな方に「良かったね」と言っていただけました。学校では、自分のやりたいことや目的に向かって制作をしていますが、この制作を通して、私の自己表現のためではなくて、人に喜んでもらえるものを作ることの楽しみも少しだけ味わうことが出来たと思っています。