冬期休暇のお知らせ

誠に勝手ながら下記の期間におきまして冬期休暇とさせていただきます。

冬期休暇:2020年12月26日(土)-2021年1月4日(月)

なお、商品の12月発送分締め切りは12月23日(水)受注分まで、
最終出荷は12月24日(木)とさせていただきます。
※在庫状況により、最終出荷日までに商品が発送できない場合があります。

期間中にいただきましたご注文、及びお問い合わせにつきましては、
2021年1月5日(火)以降に順次対応させていただきます。
なお、期間中はFAXまたはメールでのご注文をよろしくお願い致します。

お問い合わせフォームはこちら↓↓
https://www.kawashima-textile-school.jp/info/contact

………

ご迷惑お掛け致しますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
本年も大変お世話になりました。どうぞよい新年をお迎えください。

スクールをつづる:国際編7 修了生インタビュー「ビストロと織りをつなぐ空間でものづくり」Patricia Schoeneckさん

川島テキスタイルスクール(KTS)を紹介するシリーズの国際編。織りとの多彩な関係を持つ世界中にいる修了生にインタビューした内容を紹介しています。第7回のPatriciaさんには、スウェーデンの提携校から学びに来た経緯やスクールの印象、そして現在ビストロを経営していることから、生活の中の織り、手でものをつくる観点で織りに通じる点などについて伺った内容をお届けします。

Patricia Schoeneckさん(スウェーデン)
ビストロ経営者
スウェーデン在住
Handarbetets Vänner Skola(HV Skola、スウェーデン)からの交換留学生として
2012年5月-6月、絣基礎・絣応用I、2013年10月-11月、絣応用II, III*受講

*現在は絣応用IIの一部

−−KTSに学びに来た経緯を教えてください。

私が織りを学んでいたHV Skolaは、川島テキスタイルスクールの提携校であることから、この学校のことを知りました。スクールの概要を読み、染織分野の技術において伝統だけではなく現代的な手工芸を学び、探求していける素晴らしい場所だと感じました。

スクールには、ものづくり、工芸、テキスタイルに本気で取り組む雰囲気があり、それに感動したのと共に触発されました。そこには雑音がなく、先生に指導を受けて生徒たちが黙々と取り組んでいました。

−−Patriciaさんは2012年に受講し、1年半後に再びスクールに戻って来られました。その間、学んだ技法を組み合わせて独学で制作を進め、修了展に向けて大きな作品を仕上げました。一旦、場所と時間を置いて自分で行うことで、より明確に見えたことはありましたか? それが、今のビストロ経営と機織りとの距離感につながる部分はあるのでしょうか。

私はスクールとスウェーデンの両方で、創作に対する多くのアイデアと視野がありました。染めも織りもとても時間がかかることから、私の頭の中で広がる大きなアイデアの一つひとつを実現するのは不可能だと思いました。振り返って考えてみると、私は小さな作品やサンプルを作り始める前に、最初に大きな作品を仕上げなければいけませんでした。そのように制作を行うことで、私のイメージをより具体化して形にできると思っていました。しかし、今の私の生活スタイルでは、織りと制作において両方のやり方をしています。ビストロを経営していることで、日々の暮らしのほとんどの時間をその仕事に費やさなければならず、(合間を縫って)織り作品を仕上げるには、小さな・短いものを作る方が今の私には現実的です。しかし、時間ができた時に制作に戻れるような、何年もかかる大きな作品にも取りかかる必要があります。

−−KTSで学んだことで、どのような影響を受けましたか?

私が思い描く、織りと染め、人生におけるプロジェクト全体を成功させるための、忍耐力と自信がつきました。

−−その学んだスキルを、その後の仕事や暮らしにどう生かしていますか?

私は急がず、最終目標や将来の展望にそぐわない、リスクとなる不要な仕事や物事を減らすようにしています。

Elfviks Gård Bistro

−−Patriciaさんがビストロを経営するようになった経緯を教えてください。同じ建物内にアトリエを借りて、そこでどうしてオーナーとして働くことになったのでしょうか? 子育てしながらのライフスタイルに合っているのでしょうか。

アトリエもビストロも田舎の羊牧場にあります。私は自然や古い建物が好きで、ある夏の日、その場所を見つけ、そこで働きたいと思ったのです。しかし、織りで収入を得るのは厳しく、特に私とパートナーは子どもをすぐに望んでいたため、生計を立てるために他の手段を見つける必要がありました。前のビストロのオーナーがお店を手放したがっていると知り、私は自分が引き継げると伝えました。ほどなくして息子が生まれたのです。実際に経営すると、多くの仕事を抱えてとても大変ですが、この暮らしを気に入っているので、他の生活をしたいとは思いません。

−−手でものをつくるという観点では、料理と織りはつながる部分もあるように思いますが、いかがでしょうか?

私のビストロでの仕事と織りは幾通りもつながっていると思います。両方とも、多くの時間を費やす大変な仕事です。いざ始める時には、とにかく完成に向けてやるべきことをやるだけなのですが、その前にアイデアや思い、気持ちから始まる。そんな目に見えない時間も同様に、ものづくりを行う要素になっています。私は、たくさんのパンやケーキ、クッキーを焼きます。単に同じことの繰り返しであっても満足を感じます。時折または何度も、織りがもたらす感覚と同じものを感じます。たとえば、ビストロを経営するのは、手で作って働き、目の前に何かがあり、多くのルーティーンがあり、何度も繰り返し同じものを作ることです。ですが、織りと同様、瞬く星のように、心に直接響くような創造のインスピレーションが現れます。

−−Patriciaさんにとって織りとは?

現時点で、日常生活の中で織りが占める割合は小さいです。私は毎日ビストロを営業していて、日々仕事が舞い込んできます。私の織りのアトリエは、ちょうどビストロの上階にあり、週に1回ぐらいは、屋根裏部屋に上ってアトリエに入り、深呼吸します。近い将来、私はそこで再び織りを始めることがわかっています。それまでの間、繊維や機の素晴らしい香りを吸い込み、次のテキスタイルのプロジェクトの夢を描きます。


website: Elfviks Gård

instagram: @patriciaschoeneck @elfviksgardbistro

2013年に英語版ブログに掲載した Patriciaさんの “Student Voice” の記事です。KTS修了展で展示した作品も見ることができます。

スクールをつづる:国際編6 修了生インタビュー「文化の融合を見つめ、織り空間の可能性を探求」Rosa Tolnov Clausenさん

川島テキスタイルスクール(KTS)を紹介するシリーズの国際編。第4回からは4週にわたり、織りとの多彩な関係を持つ世界中にいる修了生にインタビューした内容を紹介しています。第6回のRosaさんには、KTSに学びに来た経緯や、スクールで影響を受けたこと、自身が考える織りとは?に加え、自主制作において通常は織り作品を制作するところ、ワークショップ「Everything I Know About Kasuri(私が知る絣のすべて)」を行った動機や、織りを空間として捉えるという、まったく異なるアプローチを実践した考えについて話を伺いました。

Weaving Kiosk
9つの、一時的な織りの空間のシリーズ。
デンマーク、スウェーデン、フィンランド、アイスランド 2017-2018
写真:Johannes Romppanen
Rosa Tolnov Clausenさん(デンマーク)
テキスタイルデザイナー・博士課程の学生
スウェーデンとフィンランドに居住
2013年秋、絣基礎・絣応用I, II, III*受講

*現在は絣応用IIの一部

−−KTSに学びに来た経緯を教えてください。

KTSのことは既に知っていました。知ったきっかけは覚えていないのですが、友人の Johanna が前年にKTSで学んでいるのを知り、私も行きたいと思ったのは確かです。KTSで学ぶのは、日本に行くことと同時に、絣の技術を実践で考察する絶好のチャンスだと思いました。私は既に絣に興味を抱いていて、2012年にフィンランドの Aalto University に交換留学した時、絣の研究プロジェクトを行っていました。フィンランドには、日本と同様に絣の伝統があり、それは Flammé (Flame) と呼ばれています。フィンランドの織り手は、とてもシンプルな絣のバリエーションを異なる民族衣装に用います。しかし私の知る限り、 Flammé はフィンランドで教えられていないです。KTSで学ぶことは、日本に長めに滞在し、テキスタイルの伝統の見識を得て、その分野の専門家を知ることができる機会だと思いました。

−−KTSで学んだことで、どのような影響を受けましたか?

京都にいて、KTSの環境に身を置くことは非常に刺激的で、私は今もその経験を生かしています。

KTSでは自分で作品を織る代わりに、文化交流と美的感受性に関わるプロジェクトを実施しました。但し、それは織ることから離れたものです。“Everything I know about Kasuri(私が知る絣のすべて)” というワークショップを実施し、主に京都の人たちを招きました。絣の技術を媒介にして文化交流するという着想です。このプロジェクトについて論じ、KTSの先生たちから信頼とサポートを受け、実際に京都で実施できた経験は、自分の考えに自信がついた点で確実に意味があり、以後、帰国してから行った多くのプロジェクトに影響を及ぼしました。

Flamméのサンプル
Dräktbyrån Brage(ヘルシンキ)所蔵
写真:Rosa Tolnov Clausen

−−自主制作でワークショップを開催するという決断は、Rosaさんのそれまでの空間作りや人に教えたり共有したりしてきた経験とつながっていますか? 背景にある考えを教えてください。

KTSに来た時、私はデンマークにある美術学校 Design School Kolding のテキスタイルデザインの修士課程を卒業したばかりでした。私の卒業プロジェクトは、目の見えない織り手の人たちと協力して、共にデザインすることでした。私はそのプロジェクトを通して、織りの空間が生産する場所であることに加え、織りに関わる人々にとって、他にどんな意味を持つようになるのか、例えばそれはデジタル化がさらに進む世界において、他者と関わる社会空間としてや、身体的、物理的なクリエイティブ空間となることに気がつきました。それ以来、プロジェクトから織り空間のさらなる意味を探るのが、私の関心になりました。

日本、特に京都に来た時、私は都市空間にある手工芸の存在にとても魅かれました。散策した時、非常に現代的でデジタル化された都市景観の中で、ごく自然な一部として熟練の職人さんが縫う、織る、ハンマーで叩くなどしている光景を見ました。それで手仕事とデジタルは共存できる気がしたのです。さらに私が訪れた他の都市にも織物ワークショップがあり、参加者はプリントしたり、編んだり、織ったりしていました。

こうして私は周囲の環境によって、美を見い出す感性を身体感覚として養っていきました。私自身は、日本の文化やファッションに触発されて影響を受け、同時に日本の人々やブランドが、北欧の文化に着想を得ていることがわかってきました。私たちは互いに解釈し、その結果、完全な北欧でも日本でもなく、融合した新しいものができている。

それらの印象から、ワークショップ “Everything I know about Kasuri” を着想したのが背景です。私は、文化的な出会いや情報交換の場を提供できるような都市空間で、織物のワークショップを作り出したかったのです。

−−外国人として他国の伝統を教える上で、文化的に気をつけた点はありますか?

もちろんあります。私は日本で3カ月しか過ごしていないデンマーク人として自覚的になり、日本の人たちに対して日本文化を教えるという主張をしないように、かなり慎重に取り組みました。ワークショップのタイトルを “Everything there is to know about Kasuri(絣について知るべきことすべて)” ではなく、 “Everything I know about Kasuri(私が知る絣のすべて)” と名づけたのは、そのためです。たった2カ月学んだだけで専門家のように振る舞いたくはなかったのです。ワークショップでは導入部分で、自分がよく知っていて、参加者が知らないであろう内容を加えながら、フィンランドの歴史を強調して伝えました。

ワークショップ Everything I Know About Kasuri
京都 2013年12月
写真:臼田浩平

−−ワークショップ実施の経験からどのように自信を得て、それは、その後のご自身にどんな影響を及ぼしましたか?

上記で述べた印象を基に、私はKTSの自主制作でワークショップを開催することは、正しい決断であるという強い直感がありました。しかし、通常は織り作品を制作するところ、まったく異なるアプローチであることや、不適切な方法で文化的な境界を越えてしまうリスクを考慮してか、私の考えについて初めから先生全員が完全に納得していたわけではありませんでした。そこで、このプロジェクトがどのように実現できるのか、作業時間の計画を立てるように指示を受けました。私はそれを行い、先生たちから了承を得ることができました。先生たちには、備品を見つける時や連絡時など計画段階でたくさん助けてもらいました。

当日は、KTSの先生や生徒たちも来てくれました。私は直感に従い、外国の視点をふまえたプロジェクトの実現のために全力を尽くし、成功を収めることができた。そのすべての経験を通して私は、自分の考えを信じること、できると信じて集中することの両方において多くの自信を得ました。

−−KTSでの経験は、その後のご自身の学術的・専門的な仕事において影響はありましたか? あった場合、どのような影響を及ぼしたか教えてください。

上記で主に述べた内容には、自信をつけるという意味合いがあります。さらに、初来日と初めてKTSに来たことで、私は多くのプライベートと仕事上の関係を築くことができました。出会いにとても助けられて日本に戻ってきやすくなり、2015年と2017年に再来日しました。私は、2017年に金沢21世紀美術館で開催された、日本・デンマーク外交関係樹立150周年記念展に一連のワークショップを開催するのに招かれました。その時、KTSの修了生である渡部加奈子さんと、東京拠点のカメラマンの臼田浩平さんがたくさんサポートしてくれました。

−−Rosaさんにとって織りとは?

私の織りとの関係は、絶えず変わっていきます。当初は、私にしっくりきたように感じました。織るのが楽しく、得意だと感じるようになり、時が経つにつれて、それは私の生き方となり、仕事の一部となりました。私は現在、自分が織るよりも、他の人々が織れる空間を作っています。ですが、このことさえも今後、数年で変わっていくだろうと想像しています。


ワークショップ Export/import
金沢21世紀美術館 2017年
写真:臼田浩平

website: Rosa Tolnov Clausen

スクールの窓から 5 「繭から絹糸作り体験」

川島テキスタイルスクールの専門コースの授業の一部をご紹介します。(不定期掲載)

繭から糸を引き出す本多さん

「表現論」の授業で、Honda Silk Worksの本多祐二さんを講師に招いて、絹糸作り体験が行われました。授業は、鍋にお湯を沸かすところからスタート。繭を煮た後、火を止めて数分待ち…と、まるで料理のようなテンポで進みます。煮繭から、糸を引き出す座繰り、綛を作るまでの一連の工程を学べる貴重な機会です。

授業では、始めに生糸作りを行いました。そこで「きびそ」という蚕が最初に吐き出す硬めの糸ができたのを見せてもらい、さらに「真綿」作りも行いました。体験したのは「角真綿」で、生糸を取って小さくなった繭を水に浸け、四隅を取って広げていきます。最初は恐る恐るしていた生徒の手つきが、「ぐっと広げても切れない」という本多さんの言葉に後押しされ、糸がスーッと伸びて四角に広がった瞬間、歓声が上がりました。本多さんは、それを20枚重ねた完成形を見せてくれ、生徒たちは「やわらかい」と言って感触を確かめました。

作業の合間に本多さんは、蚕の習性から桑栽培、生業としての仕事量など経験をもとに様々なお話をしてくれました。繭の中には蚕のさなぎが。目の当たりにしたことで、生徒たちからはお蚕さんをめぐる質問が飛び交います。本多さん自身、当初は絹糸と「虫」の存在が結びつかなかったそうで、蚕の飼育を行う繭作りの現場の光景に驚き「原点はここか!」と衝撃を受けたそう。その現場で自身は「虫を殺して糸を作ることに葛藤があった」と。向き合い続ける中で「肉や魚と同じで、衣を作るのに命をいただく」と考えるようになり、「虫と、虫が吐いた糸を大事にして衣にする、人が虫とつながる感覚を忘れてはいけない」と成り立ちを大切にしたものづくりをするようになったといいます。

授業の終わりには、糸を引いた分だけのさなぎが現れました。「これから絹を見たら、虫のことが浮かんできますね」と本多さん。生徒の一人は、「絹にいろんな表情があると初めて知りました。普段は糸でしか見る機会がないので」とコメント。原点に触れ、糸作りの過程を実感とともに学べた時間となりました。

◆ 本多さんにとって織りとは? 「絹糸の面白さを表現できるもの」

元々僕は洋服が好きで、農業に移り、養蚕に出会って糸作りから機織りまでをするように。原点からのものづくり、好きなことすべてができるのが今の仕事です。絹の、繭から様々な糸の表情が見える所や、染まりやすい性質、精練の仕方でも風合いが変わる所など可能性の広がりにワクワクし、糸作りにどっぷりはまっています。そんな絹糸の面白さを表現できるのが織物だと思います。

〈本多祐二さんプロフィール〉

ほんだ・ゆうじ/2009年、埼玉県の秩父で養蚕農家との出会いにより、夫婦で養蚕・機織りを始める。16年より京都に移住、冨田潤染色工房で2年間の織り修行を経て、18年に独立し、Honda Silk Worksとしてスタート。繭から糸を引き、天然染料で染めた糸や、真綿を強撚糸にした糸などで手織りのストール等を製作・販売している。

Instagram: @hondasilkworks

スクールをつづる:国際編5 修了生インタビュー「タイの藍工房からKTS、 土地と暮らしに合わせた、ものづくり」Zazima Asavesnaさん

川島テキスタイルスクール(KTS)を紹介するシリーズの国際編。前回に引き続き第5回も、織りとの多彩な関わりを持つ世界中にいる修了生に、KTSに学びに来た経緯や、スクールで影響を受けたこと、学んだスキルの生かし方、自身が考える織りとは?についてインタビューした内容をお届けします。

「以前使用していた、家族の藍染工房。サコンナコーンにある。そこで、私は初めて藍染めを学びました。インド藍(Indigofera tinctoria タイワンコマツナギ)はこの地域で育てられたもので、ここで植えられ、収穫され、ペースト状にされました。土製の小さな壺に藍が入っており、通常、一つの壺につき、一日に1、2回、小さな糸の綛を染めることができます。」

Zazima Asavesnaさん(タイ・ドイツ)
テキスタイルアーティスト・天然染色家・衣料のスモールビジネスのデザイナー/製作者
タイ在住
2013年春、ビギナーズ、絣基礎・絣応用I受講

−−KTSに学びに来た経緯を教えてください。

私は小動物の獣医師として働いていましたが、結婚を機に夫の故郷のサコンナコーン(タイ東北部)に転居。そこは夫の家族が20年以上、天然の藍を建てて藍染めを行っている場所でした。私はそこで藍や他の草木の天然染色を学ぶ機会があり、その経験が後に、織りへの興味につながりました。とても親切な地元の女性職人の方々が、自身の知識を喜んで私に分かち合ってくれたのが、初めての機織り経験でした。理論は全くなく、ただ見よう見真似で取り組みました。

その経験から多くの質問が浮かび、織りの可能性を知りたいと思うようになって、織りを学べる場所を探し始めました。この地球上のどこかに、そんな学校が本当に実在するのかも知らずに。インターネットでKTSを偶然見つけ、そこは私が探し求めていた場所だとすぐにわかりました。スクールは、私がこれまで訪れた中でお気に入りの街の一つに所在していました。加えて自然に近く、市街地からも離れておらず、日本の文化や現代アート、生活様式が見られる場所。さらに織りの原理や、日本の伝統的な織りを学べること、そして異なる背景や織りの伝統がある人たちと出会える留学生の小さなコミュニティに入るのがとても楽しみでした。

−−KTSで学んだことで、どのような影響を受けましたか?

様々な年齢のテキスタイルを愛する人たちに囲まれて過ごしたことで、良い刺激を受けました。私たちはエネルギーを交換し、過去や経歴に関係なく通じ合い、織りの世界に迎え入れられているように感じました。留学生コースのクラスメイトだけでなく、長期の専門コースに通う優れた日本の学生の皆さんとも友達になり、その方々が隣の教室や上階で取り組んでいる素晴らしい制作プロジェクトをひそかに観察していました。特に2階アトリエでのタペストリー制作が素晴らしいと感じました。下絵をもとにして織られたタペストリーを実際に目にしたのは、私にとって初めてのことでした。

独学のアーティストである私に、KTSは織ること、人生において新たな知識を求めて学び始めることの自信をつけてくれました。(2013年)春コース修了後、私は本格的に織りたいと思い、織りのプロジェクトを行って生計を立てられるように、時間を費やして将来計画を立てる決心しました。

個展 “Door” (2018)
「2018年にチェンマイのRanlao Bookshopで開催された初めての個展。コンセプトは、ソーシャルメディアの時代における感覚の自己探求について。 伝統的な機と、枠機で作られた、6枚の手織りのテキスタイルを展示しました。すべて私の一番好きな天然染料である、藍で染めたものです。 写真の作品では、米糊を使用した型染めの技法を使っています。」

−−その学んだスキルを、その後の仕事や暮らしなどにどう生かしていますか?

私は、綿や麻など地域にある自然素材や、そこで収穫された天然染料をよく使っています。初めは、防染の技術を使ったシンプルな平織りの服を作っていました。平織りはシンプルな織り方である分、織りの技量不足がたやすく表れるため、私にとってはとてもストレスになりました。

私は洋機(ジャッキ式または天秤機、ろくろ式)を持っておらず、持っている知識で大体は適応していきました。KTSで「織ることは誰でもできるが、美しく織ることは誰もができることではない」と素晴らしい先生が教えてくれた考えを念頭に置き、私は自分の機(イサーン〈タイ東北部〉伝統の織機)で、経糸の張りを均等にしたり、織り端をきれいに揃えたり、経糸の乱れをきれいに直したりして、洋機と同じ結果が出ることを目指しました。それは、いつでもできる時にスキル向上に励もうという気づきにもなりました。

私は、自ら織ってテキスタイルに注いだ努力とスキルは、その背景にある想像力や考えと同様に大切なことであると信じています。ここ数年、私は綴れ織りを習いたくて仕方がなかったのですが、その機会がありませんでした。2年前、油絵用の木枠を使って枠機を自分で作り、独学で学び始めました。1年経って、人物像(細部は刺繍を追加)の小さなタペストリーを織るのに楽しみを見い出し、以来ずっと続けています。綴れ織りは、KTSで得たスキルではありませんが、すべてはKTSから始まっているのです。

−−Zazimaさんにとって織りとは?

私自身を知っていく旅のようなものだと思います。機に座って動作を繰り返すことで、身体を使った旅の代わりに内面の旅をしている感覚です。物理的には、身体リズムのバランスを見つけるのを試み、様々な機会において、私の考えや感情、感覚を探求しています。私は時折、間違った方向に進みがちになるものと、格闘している気分になることがあります。どのような結果になろうとも、受け入れなければいけない。

イサーンの機
「この機は地元の大工さんが作った、古い伝統的なものです。 もともとはある高齢の女性のものでしたが、その方が亡くなり別の方の手に渡り、予備の機として使用されていました。使われなくなって私の手元へ。筬、綜絖、綜絖枠、踏み木は、紐と竹の棒で機に取り付けられています。 経糸を直接機に結びつけ、手動で解いて引っ張ることによりテンションをかけます。」

instagram: @zazieandherloom @wildstagram

2014年に英語版ブログに掲載した Zazimaさんの “Student Voice” の記事です。KTS修了展で展示した作品も見ることができます。