川島テキスタイルスクール(KTS)を紹介するシリーズの国際編。第4回からは4週にわたり、織りとの多彩な関係を持つ世界中にいる修了生にインタビューした内容を紹介しています。第6回のRosaさんには、KTSに学びに来た経緯や、スクールで影響を受けたこと、自身が考える織りとは?に加え、自主制作において通常は織り作品を制作するところ、ワークショップ「Everything I Know About Kasuri(私が知る絣のすべて)」を行った動機や、織りを空間として捉えるという、まったく異なるアプローチを実践した考えについて話を伺いました。
KTSのことは既に知っていました。知ったきっかけは覚えていないのですが、友人の Johanna が前年にKTSで学んでいるのを知り、私も行きたいと思ったのは確かです。KTSで学ぶのは、日本に行くことと同時に、絣の技術を実践で考察する絶好のチャンスだと思いました。私は既に絣に興味を抱いていて、2012年にフィンランドの Aalto University に交換留学した時、絣の研究プロジェクトを行っていました。フィンランドには、日本と同様に絣の伝統があり、それは Flammé (Flame) と呼ばれています。フィンランドの織り手は、とてもシンプルな絣のバリエーションを異なる民族衣装に用います。しかし私の知る限り、 Flammé はフィンランドで教えられていないです。KTSで学ぶことは、日本に長めに滞在し、テキスタイルの伝統の見識を得て、その分野の専門家を知ることができる機会だと思いました。
−−KTSで学んだことで、どのような影響を受けましたか?
京都にいて、KTSの環境に身を置くことは非常に刺激的で、私は今もその経験を生かしています。
KTSでは自分で作品を織る代わりに、文化交流と美的感受性に関わるプロジェクトを実施しました。但し、それは織ることから離れたものです。“Everything I know about Kasuri(私が知る絣のすべて)” というワークショップを実施し、主に京都の人たちを招きました。絣の技術を媒介にして文化交流するという着想です。このプロジェクトについて論じ、KTSの先生たちから信頼とサポートを受け、実際に京都で実施できた経験は、自分の考えに自信がついた点で確実に意味があり、以後、帰国してから行った多くのプロジェクトに影響を及ぼしました。
KTSに来た時、私はデンマークにある美術学校 Design School Kolding のテキスタイルデザインの修士課程を卒業したばかりでした。私の卒業プロジェクトは、目の見えない織り手の人たちと協力して、共にデザインすることでした。私はそのプロジェクトを通して、織りの空間が生産する場所であることに加え、織りに関わる人々にとって、他にどんな意味を持つようになるのか、例えばそれはデジタル化がさらに進む世界において、他者と関わる社会空間としてや、身体的、物理的なクリエイティブ空間となることに気がつきました。それ以来、プロジェクトから織り空間のさらなる意味を探るのが、私の関心になりました。
それらの印象から、ワークショップ “Everything I know about Kasuri” を着想したのが背景です。私は、文化的な出会いや情報交換の場を提供できるような都市空間で、織物のワークショップを作り出したかったのです。
−−外国人として他国の伝統を教える上で、文化的に気をつけた点はありますか?
もちろんあります。私は日本で3カ月しか過ごしていないデンマーク人として自覚的になり、日本の人たちに対して日本文化を教えるという主張をしないように、かなり慎重に取り組みました。ワークショップのタイトルを “Everything there is to know about Kasuri(絣について知るべきことすべて)” ではなく、 “Everything I know about Kasuri(私が知る絣のすべて)” と名づけたのは、そのためです。たった2カ月学んだだけで専門家のように振る舞いたくはなかったのです。ワークショップでは導入部分で、自分がよく知っていて、参加者が知らないであろう内容を加えながら、フィンランドの歴史を強調して伝えました。
ワークショップ Everything I Know About Kasuri 京都 2013年12月 写真:臼田浩平